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転生したら没落貴族だったので、【呪言】を極めて家族を救います  作者: メソポ・たみあ
第2章 フォレストエンド領の危機

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第18話 呪い


「――ありがとうございました、本当になんとお礼を言ったらいいか……」


 アントンは僕とクーデルカに深々と頭を下げ、お礼を言う。


「まさかリッド坊ちゃまにあんな力があったとは。貴方様はやはりフォレストエンドの希望です」


「い、いやぁ、それほどでも……」


「それにしても、一体なにがあったんですか? フォレストエンド領で〝呪詛〟を受けるなんて……」


 どうも腑に落ちない様子のクーデルカ。


 それは僕もかなり気になるな。


「〝呪詛〟は死霊系モンスターが使う毒術の一種です。でもこの辺りにゴーストやアンデッドは出没しないはず……」


「わ、わかりません。妻たちは黒い影のようなモノを見たら、すぐに具合が悪くなったと言って……」


 ……黒い影?

 うーん、ざっくりとした情報だな。


 よもや熊や猪じゃあるまいし、それだけだと流石に特定できないぞ……。


 クーデルカも悩ましそうにしつつ、


「もしなにか思い出したことがあったら、私かゲオルク殿にご報告ください。どうも放っておけませんから」


 そう言い残し、僕と共にアントンの下を去る。


 そして帰り道の最中、


「……ねえクーちゃん先生、〝呪詛〟って〝呪言〟と響きが似てるけど、なにか関係あるの?」


 ふと彼女に尋ねた。


 さっきからずっと気になってたんだよな。


 もし〝呪言〟が関係してたら気まずいし。


「え? ああ、直接の関係はありませんよ。どちらも(いにしえ)の言葉を元にしているだけです」


「古の言葉?」


「魔法・魔術・呪言・呪詛――。今より何千年も昔、古来の人々はこれらをひとまとめにして〝呪い(まじない)〟と呼んでいたそうです」


「〝呪い(まじない)〟……」


「でも魔力の研究が進んで差別化が図られるようになると、〝呪い(まじない)〟を色々な種類に区分するようになった。〝呪詛〟もその一つですよ」


「へぇ……知らなかった」


「〝呪〟という単語には特別な意味があるんです。覚えておくといいですね」


 なるほど、そんな歴史があったのか。


 でも無関係ってことがわかってよかった。


 それに豆知識としては面白いし、頭の片隅にでも入れておくか。


「それより……さっき私の許可なく〝呪言〟を使いましたね?」


 ――ギクリ。


 その一言に、僕の表情が引き攣る。


「きょ、今日の夜ご飯はなんだろ~♪ 父様が鹿を狩ってきてくれないかな~♪」


「誤魔化し方が下手過ぎますよ」


「うぅ……」


「安心してください、別に怒ってるワケじゃありません」


「え?」


「貴方は正しいことをした。カッコよかったですよ、リッド」


 クーデルカはそう言って、僕に対し朗らかに微笑んで見せた。


 その笑顔はとても――とても可愛らしかった。


「そ、そうかな……えへへ」


 妙に照れ臭くなってしまい、クーデルカから顔を逸らす僕。


 なんだろう……こういう褒められ方って、あんまり慣れてないかも?


「あ~、顔が赤くなってますよ~?」


「し、知らない!」


 からかってくる彼女に対し、改めてプイっと顔を背ける。


 すると――その時だった。


「――おーい! リッド! クーデルカ殿!」


 遠くから父の声がした。


 振り向くと、そこには馬を駆けてこっちに向かってくる父ゲオルクの姿が。


「父様! 狩りに行ってたんじゃ?」


 彼は僕たちのすぐ傍で馬を止め、


「ああ、大変なことになってな……。ロザベラから薬屋に向かったと聞いて、慌てて迎えに来たんだ」


 なにやら焦った様子の父。


 そんな彼を見て、クーデルカの表情が曇った。


「ゲオルク殿……なにが起こったのかお聞かせ頂いても?」


「うむ、だが詳細は後だ。今は結論だけ話す」


 父はなんとも歯痒そうな顔をする。


 それを見て、僕はとてつもなく嫌な予感がした。


 彼は深刻そうに口を開き、



「……このフォレストエンド領に封印されていた【呪霊】が、何者かに解き放たれた」



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