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慈善活動では有りません。

「久しぶりだな元親」

「お久しぶりです元親、ナンパですか?」

「嫌、ナンパじゃない。逆ナンの立ち待ちんぼくん」

つまりナンパ待ちなんだと。

苦い笑いをするジルとホムラ。

「どうして王都に?」

「前に俺は沖田総司の子孫って言ったじゃん、あれは、話しちゃいけない事だったらしくてな、しかも直系だと思っていたけど、どうやら分家でな。直系の人がいたらしく、俺は合ったこと無いんだけど、話しちゃいけない事を言いふらしたって事で俺は里から追い出されて行く宛もなくフラフラしていてさ王都に流れ着いて、今に至る」

身の上話を何とも言えない顔で聞いてるジルとホムラ。


「で、ジルとホムラはどうして王都にいるんだ?」

「「アジフライを食べに来たんだ」」

「それだけ?」

「それだけだけど?………ジル、僕は変な事言いましたか?」

「イヤ。俺達にとっては当たり前の事だけど?」

「ですよね」


元親は軽く笑いジルとホムラの間に座った。

「今、俺金欠病でな、うまい話はないか?何処かバイトでも募集してる処有るか? 候補としては金貸屋に就職したい」

元親は真面目に言うが、ジルとホムラは

((無理だろ…))

と心で思った。

今の元親は、どう見てもチャラ男にしか見えない。首には金メッキのネックレスに派手なワイシャツに真っ赤なブレザーを着て髪もピンク色に染めている。ジルとホムラの金貸屋は黒スーツに黒の髪の毛で統一している。断じて元親の格好がいいとは言えない。


「冒険者も悪くないんだがEランクだしな。俺見たいな力がある奴は高ランクがいいでしよ。でもよ冒険者ギルドの受付が「貴方はEランクです。」とか、言うんだぜ。ジルとホムラの冒険者のランクは?」

「俺達は万年Bだぞ」

「B?上を目指さないのか?」

「目指しませんね。めんどくさいですし(貴族とかが)」

「せっかくBまで行ったのに勿体ない。上を目指せよ。」

「Bより上に行くつもりもありません」

「そっか。処でジル、ホムラ。」

猫なで声で元親が声をかける。

「何?」

「何ですか?」

「俺を買わない?」

「「は?」」

「マジで困ってんだよ。冒険者ギルドに行っても高ランクの仕事は出来ないし、迷宮は設備投資が必要だし、ランクEだし、今借りてる部屋も家賃が払えないから出て行かないと行けないし、逆ナンの立ち待ちんぼくは成果がないし、今日食べる物も無くてな八方塞がりなんだ。」

大の大人がエグエグ泣いているが、助けようとは思わないジルとホムラ。

そもそも真面目にやっていればランクもCやBに行けたかも知れない。

「真面目に稼いだらどうですか?」

「そんな事言うなよ~ホムラ~。話変わるけどお前達が着ているコートはオオクロクマとオオシロクマであっているか?」

(目利きは良いみたいですね)

「あってるよ。迷宮品だけどね」

「端切れとかないか?」

「端切れ?有りませんね」

ホムラがピシャリと言いきったが、本当は端切れが有る。だけど元親には渡したく無い。どうせ金に変えるのが目に見えてるのだからだ。

「無いのか。売れば高値がつくのに勿体ない」

「冒険者ギルドでEランクで薬草探しが有ったよ。報酬は金貨1枚どうよ?」

「薬草採取~?俺の出番では無い」

((選ぶんだ。お金無いのに))

「ジルとホムラはどんな依頼書をやるんだ?」

「基本薬草採取だよ。討伐も受けるけど基本は採取だよ」

「つまんねぇ」

(薬草採取も意外と大変なんですよ。萎れたら価値が半減しますし)

「つまんなくないよ。薬草採取は薬草の見分け方も分かるから一石二鳥だよ」

「きらびやかじゃない」

「…元親。つまらない事をお聞きしますが、仕事選んでる暇は有るんですか?」

最もらしい事を聞くホムラ。

「だからさ~ホムラとジルに頼みたい事が有るんだ。」

「何ですか?」

「無理な事は言わないでよ?」

「大丈夫だ。簡単な事だ。」

「「?」」

「金を貸してくれ!倍にして返すから」

金を借りる人の台詞である。


「貸すお金はないよ」

ジルがやんわりと断る。

「すみません僕も貸すお金は有りません」

ホムラもやんわりと断る。

「何でだよ!Bランクなら金有るだろ?頼むよ。俺今本当に金欠病何だってば!」

「ネックレスとか売ればお金になるんじゃないの?(金メッキぽいだけど)」

「やったさ。18金だと思って買ったのに金メッキだったんだ!」

((やっぱり騙されたんだ))

「だから金欠病なんだよ~」

「話変わるけど髪を染めたんですね」

「派手なピンク色だな」

「女の子にモテるって聞いてこの色にしたんだが、女の子が寄って来ない」

((うん。来ないでしょう。こんな派手でチャラ男しか見えない男に。寄ってくるのは同じ匂いの人か、只のバカか、不倫の相手を探してる金持ちかだね。))

「元親は何でそんなにも必死なんだ?」

「金貸屋に借りればいいじゃない?」

「借りに行ったさ。門前払いを受けたんだ。チャラ男すぎるって言われて!!」

((返す見込みがなさそうだしね。厄介な匂いがするし))

「………悪い。用事を思い出した。また今度な!」

突然早口で言うと何処かに向かって走って行った。と言うよりも逃げ出した方が正しい。

「なんだ、あれ?」

「さあ?何でしょうか?」

元親が逃げ出した方を見てジルとホムラは言うと上から声がかかる。

「お前達は、元親の()()か?」

声がした方を見ると筋肉が服の上からでもはっきりと分かるから大男がいた。

「違います。知り合い程度です。」

「そうです。少し顔を知っている()()の人です。」

キッパリと言うジルとホムラ。

思わぬ解答に大男は「そ、そうか」としか言えなかった。

「処でここは、お茶出来る処あるか?」

普通自分より背の高く見上げてジルは言う。


大男から聞いて南に有るカフェ・うさぎに来た。

大男を連れて…

「何で俺までここにいるんだ?」

大男が言うが、ジルもホムラもメニュー表に夢中で聞いていない。

「何が人気なんだ?」

「分かんない。来たことないし」

「じゃ、ホットココアで、マドレーヌ付きのセットを3つ注文しましょう」

「任せる」

「俺は一体何してるんだ?」

ぼそりと呟く大男にジルもホムラメニュー表を広げて話をしている為か大男の呟きを聞いていない。


「お待ちどうさまホットココアにマドレーヌ付きのセットをお持ち致しました」

テーブルの上に置いたホットココアにマドレーヌが5つのったお皿を置いていくウエトレス。

「ごゆるいとどうぞ」

そう言ってウエトレスは店の奥に戻っていく。

カフェ・うさぎ。可愛いうさぎの形の看板に店名が入ってる。

店内は回りを見る限り女性だらけ、男性はジルとホムラと大男だけで、その大男も身を地締めているが、意味がない。しかもジルとホムラは堂々としているから余計に目立つのだ。

「この店入って見たかったのですよね」

「甘いものが好きなホムラにとっては理想の店じゃないか?」

黙る大男を他所にジルとホムラの話は続く。


「処で元親の事を聞きたいんだよね?」

「あ、あぁ」

「俺達が合ったのは本当に偶然だ。本人は金欠病って言って俺達に金を借りに来たぐらいだ。“倍にして返す”と言う借りる奴の上等文句付きでな」

「真面目にやっていれば冒険者ランクもCやBに行けたかも知れないです。」

「ランクがCやBとなると何が違うのだ?」

「受けれる依頼が違う。報酬も違ってくる」

マドレーヌを食べながら言うジルとホムラ。

「そう言えば、ジル甘いものが食べれる様になったのですね。」

「知らない間に食べれる様になった」

「それで元親はいくら借りているんですか? あぁ、大体でいいですよ。それと僕達は払いませんよ。知り合い程度の人の為に関わりたく有りませんから。」

大男がじゃんけんで言うパーを出す。

それを見たジルとホムラはチョキを出して

「じゃんけんですか?」

「パーだな、こっちはチョキ。俺達の勝ちだな」

的外れの解答をするホムラとジル。

「違う5だ!。5!。」

「金貨5枚なら払えばいいのに」

「金貨5枚も無いのでは?」

「違う、500だ。奴が借りとる金額は金貨500枚だ」

「金貨500枚なら冒険者ランクBで依頼を20回受ければお釣りが来る金額だな」

「なら指名依頼してみればどうでしょうか?」

「指名依頼?」

ココアを飲みながら聞いてくる大男。

「そのまんまの意味ですが、冒険者ギルドに元親宛の依頼を出すんです。勿論報酬も付いて。お金が無い元親も飛び付くと思いますよ。多分。」

「成る程、指名依頼かぁ…いいかも知れないな」

「ただし、元親は、安い金額にのって来ないと思います。相場を聞いて1割高めに設定しておくのも吉だと思います。」

必死にメモを取る大男にジルは最後のマドレーヌを食べた。

ココアを飲み干して、ジルが店員を呼び追加でホットコーヒーを3つ頼んだ。

「何で、手を貸してくれるんだ?」

「金貸屋は慈善活動じゃ有りません。借りたものはちゃんと返さないと行けません。普通でしょう?」

「それにな、他の金貸屋からお金を借りてるみたいだ。君が俺達に接触しなかったら違う奴らが来て、この案は違う金貸屋にいっていたと思うよ?。」

ホットコーヒーがテーブルに置かれミルクを入れてスプーンでかき混ぜる。

ホムラもミルクと角砂糖をガラスの容器から2個取り出してコーヒーの中に入れてスプーンでかき混ぜる。

大男はブラックだ。


コーヒーを飲んでお会計の為伝票を取るジルに大男が、「ここは俺に払わせてくれ」と言って伝票をジルの手から抜き取る。


「銀貨2枚。手頃の金額だな。」

そんな事を言って大男の胸のポケットから財布を取り出し開けて見る。

中はすっからかん。

「………」

覗き込むジルとホムラはすっからかんの財布を見て何も言わず銀貨2枚を出した。

「銀貨2枚ちょうどお預かり致します。」

「ごちそうさまです。」


カフェ・うさぎから出て来た大男とジルとホムラは別々の方向に向かって歩いた。


「次は何処に行きますか?雅に戻りますか?」

「雅に戻ろう。ススムも心配だし」

ジルとホムラはホテル雅に向かって歩き出す。


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