表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
129/133

思わぬ副業と思わぬ再開

俺の名は、ヒジカタ。


何処で生まれたのか定かでは無いが地方のトウキョウと言う処で生まれたと聞いている。

そのトウキョウと言う処は、当たりは森に覆われて小さい集落が有ったが、時代と共に消滅してしまった。俺が王都の西町にいるのは、剣のセンスが有ったからだ。雇われ用心棒としてそれなりに小銭を稼いでいた。


今日は、冒険者に会った。

ジルとホムラと名乗る冒険者だ。西町にいる俺に何の嫌悪感もなく話をしてくれた。東町の人間は、西町と聞くだけで殴って来る者もいる。

そんな事をしなくても何もしないのに何を恐がっているのか、分からない。


「ジルとホムラか、あいつらの言っていた冒険者について良く聞いてみよう。あの噴水の処に行けば会えるかな?」

ヒジカタは静かに眠りに入った。

冒険者。

荒くれ者がいっぱいいる処。

たが、王都の冒険者ギルドは一味違う。ジルとホムラ本人達は、Bランクの冒険者だと思って自分達意外にも強い人はいると思っている。

龍やドラゴンを単体で倒せる奴がそんなにホイホイいたら怖いって!


翌日俺は、昨日会った噴水の処に来た。目的は、ジルとホムラに合い冒険者の事を色々聞く為だ。

「いない…なぁ」

白銀髪と銀灰の瞳のジルと黒髪に紫の瞳のホムラ。

物腰柔らかい人達。

辺りをキョロキョロしながら噴水の周りを見渡す。

「いない…」

昨日の内にここで待ってるって言えば良かったのに、何で俺は言わなかっただろうと思った。


その頃ジルとホムラは、薬の迷宮に行っていた。

取れる物は薬草やキノコ。

「ジル、キュア草が有りました。」

「こっちはキュアマッシュルームが有る。」

麻袋にキュアマッシュルームを入れて、キュア草は10本で1束にしていた。

「まさか薬屋のギルドからキュア草とキュアマッシュルームの採取の依頼が有ると思いませんでした。しかも両方見つければ金貨10枚だもんね」

「在庫が切れたのかね?」

「つい最近から薬の迷宮に潜って良かったです。キュア草もキュアマッシュルームも生えてる処を覚えてて、良かったです。」

「そうだな。処でキュアマッシュルームは10個。キュア草は3束で依頼分は取れたな?」

「ええ、依頼分は取れました。今日はこれで帰りますか?」

「そうだね。今日は何か疲れた。帰ろう」

ジルとホムラは草を掻き分けて魔方陣の処まで歩く。魔方陣に乗り魔力を流して1階に戻る。


冒険者ギルドに戻り受付に依頼分のキュア草とキュアマッシュルームを提出して依頼金を受け取る。

「ジル」

「ん」

金貨5枚づつ分けてマジックバッグに入れ、冒険者ギルドを出た。

東町に冒険者ギルドが有る。

その近くに果物100%を使ったジュースの店が有る。ミキサーに水を少しと氷と果物だけで作るジュースだ。ジルとホムラは、その店に寄りパインジュースとキュウイジュースを頼む。

「パインジュースとキュウイジュースだね」

「お願いします」

銀貨1枚を払い、帽子を被った若い男性はミキサーでジュースを作る。ストローと蓋は自分達で蓋を着けたりストローを指したりする。

「ほい、お待ちどう様」

「ありがとう」

ホムラはカップに蓋とストローを着けてジルの元に戻る。

「はい、ジルのパインジュースです。」

「ありがとう」

ジルの隣に座りストローで一口飲む。程よい酸味にフルーツの甘さが加わり美味しい。

「ふぅ」

「今日は、ジル元気が有りませんね。どうしたんですか?」

「嫌な、アユの事を考えていたんだが、ちょっと疲れてね…」

「薬を渡しても飲みませんものね。困ったものです。でも、ススムに全てまかして有りますので僕達が悩む事では無いのかも知れませんよ。」

「でもな…」

「悩むだけ無駄です。」

「ススムはどうするのだろうか?」

「ススム次第ですね。先に進むのも立ち止まるのも」

ジュースを飲み干してゴミ箱にカップを捨てて、屋台で焼き串を買って食べ歩いた。


「焼餃子の匂いがします。寄りませんか?ジル」

「そうだね。寄ろう。」

匂いを頼りにふらふらと足を動かす。出て来たのは、小さい店だった。看板がそのまま“餃子”と書いてある。

「そのままですね」

「そのままだな。入って見るか?」

「入って見ましょう」

ジルとホムラは店に入る。

立ち上がる湯気に牛乳瓶の底の様な眼鏡をかけてる女性が、

「いらっしゃい!!」

と元気に声をかける。

「2名様ですね。ここは初めて?」

頷くジルとホムラ

「ここは、餃子のみの店です。ご飯も無ければスープも有りません。あるのは焼き餃子のみです。2人前で宜しいですか?」

頷くジルとホムラ


「お待ちどう様。餃子2人前です。お箸は箸立からお使い下さい!」

「ありがとう」

「頂きましょうかジル?」

「「頂きます」」

一口食べる。

「「!!」」

「「美味しい!!」」

「味がしっかり付いてるから餃子のたれ無しでもいける!」

店主の女性は、隠れてガッツポーズをする。

ジルとホムラは次々に餃子を食べて行く。

「追加の餃子です。どうぞ」

テーブルの上にお皿に乗った餃子を置いて女性は厨房に戻る。

カラカラと引き戸を開けて入ってくる屈強な男達。

「いらっしゃい…ませ…」

「おうおう、今日も閑古鳥が鳴いてるな。餃子よりも金を返せよ」

「それとも何だ、返す気が無いのか?」

「そんな事は有りません。お借りしたお金は、ちゃんとお返し致します。」

「そんな事言って夜逃げでもするんじゃないのか?」

「そんな事は有りません」

店主の女性と屈強な男達の話を聞きながらジルとホムラは、餃子を食べ続ける。

「店主。」

ジルが声をかけた。

「あっ、はい。」

「餃子の注文をお願いします。2人前お願いします。」

ホムラが注文をする

「今ですか?」

ここでのやり取りを聞いて普通の人なら食事をやめて出て行ってしまうのが、ジルとホムラは違う。自分達の気持ちに正直なだけ。沢山の餃子を食べたいだけである。

「今ですよ」

何を当たり前の事を聞いているんだ?と顔をするホムラ。テーブルには積み上がった餃子の皿がある。

「おいおい兄さん達、俺達のやり取り見てなかったのか?俺とこの店主は恋仲でな今、大事な話をしているんだ」

「ふーん。でも僕達には関係有りません。餃子の追加まだですか?」

ピキピキと頭の血管が浮き出る男に対して我関知せずで最後の餃子を口に放り込む。

「味が濃くてやっぱり美味しいな」

「ですよね。処で餃子まだですか?無いなら僕達は帰ります。お勘定を」

「銀貨2枚とになります。」

店主が、答えるとジルとホムラは銀貨1枚づつ出し合い合計銀貨2枚を払い、店主に「美味しかった」と伝え店を出る。


「問題だらけの店ですが、餃子は美味しかったですね」

「本当に、だな。でも存続は出来ないだろうね」

達の悪い金貸屋に金を借りて首が回らないのだろう。

「金貸屋のタガキって有名ですからね」

「そうだな。でも金貸屋でカギヤも有名だろ?」

金貸屋のタガキとカギヤは王都で有名な金貸屋。無理な取り立てはしないが、誠意を持って返さないのは、死よりも恐ろしい事が起こると有名な話だ。

「「あれは何処の組員だ?」」

「「?」」

ジルとホムラは顔を見合わせる。

「ジルまさかお金を借りてるって事は有りませんよね?」

「そういうホムラこそお金借りて無いよな?」

微妙な空気が流れたけどジルもホムラもお金を借りてなくてほっとした。

東町の中央の処に金貸屋のタガキとカギヤがある。

タガキが古参でカギヤが新参だが、どちらもトップが変わって前よりも高い金利で金を貸している。10日で3割。かなり悪どい。


「ここがタガキとカギヤか」

「外見は普通ですね」


見上げながらジルとホムラは言っていると遠くの方で声が聞こえる。


「金が返すまではうちのやり方で返してもらおう」

連れて歩いてるのは先程の餃子の店主だった。

「離して下さい。…貴方達は…助けて下さい!」

「「ヤダ。」」

問答無用に切り捨てた。

「何だ?何だ?兄ちゃん達金を借りに来たのか?だったらうちのカギヤに持ってこいだ!」

「何を言う!タガキが一番だ」

店の真ん前で大きな声で話をする屈強な男にジルもホムラも餃子の店主も置いてきぼりだ。


「「お前達、またやっているのか!?」」

「「!!」」

一瞬で黙る屈強な男にタガキとカギヤから優男が出てくる。


「すまなんだ。金の事なら我ら古参のタガキにどうぞ」

物腰柔らかそうに言うタガキの重役はにっこり笑いジルとホムラに声をかけた。

「何を言う。カギヤが1番だ」

はっきり言うカギヤの重役はジルとホムラをほっといてバチバチとタガキの重役の人と火花を散らす。


「「またお前達か!」」

タガキとカギヤのナンバーツーの人が出て来てジルとホムラを見るなりビックリした顔で言った。

「旦那!」

「若!」


そうなのだ。古参のタガキのトップはジルで、タガキのナンバーツーからは「旦那」と呼ばれてる。

ちなみに新参のカギヤのトップはホムラで、カギヤのナンバーツーからは「若」と呼ばれてる。


「「「「「え、え~~~~~~!!」」」」」


1番早く現実に戻ってきたのは餃子の店主だ。

「あ、あの~、直接トップの人に言うのはどうかと思いますが、どうかタガキ屋とカギヤ屋から借りたお金をチャラにしてください。」


ジルとホムラの足元で土下座をする餃子の店主にジルとホムラはキッパリと断言をする。

「「イヤ。こちらも慈善活動じゃないので借りた金は返そう。そうだ、近くに住み込みで働ける処を紹介しよう。」」

「血も涙も無いのですか?」

「「無いね。じゃ、中を売ろうか?」」

「中?」

「だいたい衣食住が保証されて働いた分の何%が支払いに回るだけなのに、君は中がいいんだよね?」

ため息を付きながらジルが言った。

「中、中って何ですか?」

餃子の店主は顔を真っ赤にして唾を吐きながら言うとホムラが店主の服の上から腹を指を指して「中」と言った。


中。腹の中。つまり内臓の事だ。


その事に気付いた幹部や重役やナンバーツーはゴクリと唾を飲みこんだ。


「衣食住の方が特なのにね」

「本人にちゃんと確認して再利用出来る様にしとかないとね」

ジルとホムラが言い2人共、パチパチと手を叩いて「連れていけ」と言った。

「旦那はどうします?」

「若はどうします?」

「「両方で金を借りてるから双方で協議して決めればいいんじゃない?」」

「でも新参のカギヤですよ」

「古参のタガキですよ」

タガキとカギヤの重役はブツブツ言う。

「手を取り合える処は取り合ってやれば?」

案を出すが乗り気どは無い重役は首を縦に降らない。

「ジル」

「なんだい?ホムラ」

「「連れていけ」って言ったけどどちらの金貸屋に連れて行くの?」

「じゃ、ホムラの処でいいかい?」

「勿論だ」

ジルとホムラは新参のカギヤの店に入る。

通される部屋は先代が好きだった金ピカの部屋でホムラは好きではない。

ジルも「もうちょっと落ち着いた部屋は無いの?」と聞くぐらいだ。


「では、餃子の店主は、結局どちらを頼んだの?中?衣食住?どっち」

「時間はたっぷり有るからゆっくり決めよう。ただしいつ中になってもいいように遺伝子レベルで隅々まで調べて」

「そうですね。いつ中になってもいいように徹底的に調べましょう」

古参のタガキと新参のカギヤのトップが話をしている。ナンバーツー以下からしてはビックリな展開だ。

「カギヤは中の方が得意だよね?」

「はい。タガキは衣食住の方が得意ですよね?」

「「手を組む」」

「それも有りだと思います。」

「じゃ、これは共同作業ってことで中の値段に何割か上乗せして販売しよう」

餃子の店主の中の話し合いは続く。黒字になるように金額を決める。話し合いが終わってジルとホムラは金ピカの部屋から出る。


「あの部屋へ趣味悪いぞ」

「やっぱりそう思いますか?」

ジルとホムラが通る通路には、黒スーツを着た屈強の男達が頭を下げてお見送りをしている。

右側には古参のタガキ、左側には新参のカギヤが頭を下げる。

「旦那、どうしますか?」

「若、どうします?」

ナンバーツーが今後どうするか聞いて来た。

「ホムラの」

「様だ。ホムラ様だ!」

「そう。ホムラ様?」

「辞めて下さい。ジル」

「様だ。ジル様だ!」

どちらも同じ事を言うので、ジルとホムラは「今まで様を着けて無い。今まで通りにする」と言い話を続けた。

「カギヤの方が臓器売買の方が顔広いよね?」

「提供です。臓器提供。」

「で、今回の餃子の店主は双方にお金を貸している。双方共に黒字になるように臓器提供をする。」

ジルが方針を話す。

タガキ屋もカギヤ屋も耳を傾ける。話の内容は素晴らしく皆が感心を寄せてる。

「と、言う事で遺伝子レベルで調べれば合う人がいるだろう?」

方針は決まったら後は、動き始めるだけだ。

「「「「ありがとうございますー!」」」」

タガキ屋とカギヤ屋は従業員総出でお礼を言う。

ジルとホムラはその声を聞きながら南東の噴水広場に向かって歩いた。


噴水広場はカップルが目立つ。わざとらしく寒い格好をして彼氏のコートの中に入れてもらう。ジルとホムラは、暖かいココアを飲みながら移り行く風景を見ていた。


「お兄さん達1人なの?」

「?。二人ですが」

「そう言う意味ではなくて1人どうしでココアを飲んでいるの?」

「(ココアが欲しいのか?)」

「(どうでしょうか?)」

「ココアならあそこの店で売っているよ。」

「…」

女性はそれから何も言わずにジルとホムラの側から離れた。


「ククク。兄ちゃん達、せっかくの花が来たのに勿体ないな」

「「?」」

「花を売って無かったよ」

「ええ、花を持って無かったです」

「あの女が花なんだよ。一夜の楽しい夜を楽しみたいじゃないのか?ん?」

「女とは相性が悪くてな、心引かれる女に合ったこと無いんだ。」

「だがよ、男だから立つ物は有るんだろ?」

「そう言う卑猥の事は話したくない」

「行こうか?ホムラ」

「はい」


王都の噴水広場は9つ有る。

北、北東、東、南東、南、南西、西、北西と中央の9ヶ所。

全てデザインが違って北は玄武、北東は地の女神、東は青龍、南東は水の女神、南は朱雀、南西は火の女神、西は白虎、北西は風の女神と中央は8人の男女の像が立ち並んでいる。


ジルとホムラは、南に向かって歩く。

「花買いなんて創造しなかったな。南の方に行くとさらに多いかもな?」

「“花いちもんめ”見たいな感じなんでしょうか?」

「さぁ、分からん」

ジルとホムラが話ながら冷たい風が頬を掠める。

「う~、寒いな。コートでも出すか?」

「そうですね。ココアで暖まったけど今日は風がありますから直ぐに冷えます。風邪なんて引きたくないのでコートを着ましょう」

マジックバッグからジルは白のコート、ホムラは黒のコートを出して来た。

「ウハハハ、あったけぇ」

「本当ですね。装備服でもある程度は暖かいですが、やっぱりコートですね。あったけぇです。」


朱雀の噴水広場に着いた。

やっぱり南って事も有り、カップルやナンパが多い。

ジルとホムラが、屋台で抹茶ラテを買い一口飲む。

「ほろ苦くて美味しいな」

「本当ですね。この飲み物を作ったのは“ジェラルド”と言う人です。」

「おっ、お客さん良く知っているな~。この飲み物は“ジェラルド様”が作ったんだ。大好きな人の為に痺れるぜ!」

「(始姐だね。大好きな人ってのは)」

「(始姐ですか)」

「見たことはないが、レシピは伝わり俺んとこが元祖だぜ?」

「嘘つくな!お前の処が元祖なわけ有るはずが無い! お客さん、“ジェラルド様”が大切な人の為に作ったココアはどうだ?」

ジルとホムラをそっちのけで屋台の店主が睨み合っているのをほっといてジルとホムラはそそくさとその場を離れた。


「(これが元祖?)」

「(あまり美味しく有りませんね)」

「(今度例の本に抹茶ラテが載ってるから今度作ろう)」

「(はいっ!)」


抹茶ラテを飲みきり紙コップをゴミ箱に捨てて行き交う人の波を見る。カップルやナンパしている人を何となく見ていると知り合いに似ている人がいた。

「(ホムラ。ホムラ。あれ、あそこのナンパしている人元親じゃない?)」

「(えっ?…本当だ、元親ですね。あっフラれた)」

「「((あっ気付いた。))」」

「こっちに来るな」

「こっちに来ますね」

ベンチに座っているジルとホムラに向かってくる男性。

「久々だな、ジル、ホムラ」

ニカって笑っている元親になんかやり場の無いジルとホムラだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ