記憶の迷宮3
記憶の迷宮3
不愉快丸出しなジルとホムラはススムを連れて次のエリアに行った。
「あの~…」
「「何?」」
ハモるジルとホムラの声。
「い、いえ。何でもないです…。」
ススムの声が小さく萎んでいく。
「「言いたい事が有るなら言え」」
迷宮内をサクサク歩くジルとホムラを見ながらススムは、はっきりと言う。
「家は貧乏何ですか?」
足が止まる2人に慌てて謝るススム。
「すみません!」
ジルとホムラはススムを見ると語りだす。
「「家は貧乏じゃないんだよ。迷宮でモンスターを狩ったりや家畜の牛を買って拳大の大きさにきったりして一年をとうして食べるんだ。」」
「では、何で今回は?」
「「ちょっとね………」」
言葉を濁す2人に追求するのを辞めたススム。
長生きできるタイプだ。
「次の扉が出て来ました。」
「何か貼り紙が有りますね」
「“今度こそあっと驚く記憶を提供してあげます”だって。」
「次はススムの記憶かな?」
「僕、ジル、と来てススムですよね~、では扉を開けます」
ギィィィと音を立てて扉が開く。
「立て付けが悪いのか?」
「迷宮も大変ですね。維持費とかが必要なんでしょうか?世知辛い世の中です。」
「そうなんですね」
迷宮に維持費何て物は無い。だけどジル、ホムラはディスる。
映し出されるススムの記憶。
無表情のススムに笑いかける女性。
「アユ姉さん!」
刃物を持った操り人形がケタケタ笑いながらジル、ホムラ、ススムに向かってくる。
「………やっぱり綺麗だ」
「やだわ。ススムったらいつまでも姉離れが出来てなくって」
「アユ!」
「はい、何でしょうか?ホムラ様」
「もっと主張しないと分からない!」
ジル、ホムラ、ススム、アユは剣で人形を無力化していく。
飛び散る人形の破片が床に吸収して新たな人形を生み出す。
エンドレス。
ショートソードを器用に使いススムとアユは、操り人形を切り捨てて行く。
「では、主張して私達だけで戦いまぁ………ヘルプ!!」
助けを求めるの早すぎない?
5分も持ちこたえて無いよ。
ナイフを持った人形がアユに向かって斬りかかる。
「姉さん!!」
慌てるススムに対して、
「(ジル)」
「(分かってる)」
ジルとホムラが念話で話してアユに1番近いジルの蹴りが炸裂して人形があらぬ方向に飛ぶ。
「「「「!?」」」」
「今、何か見えなかったか?」
ジルが人形を切り捨てながらホムラ、ススム、アユに聞く。
「暗くて良く分かりませんが大きな手が見えた様な気がします。」
アユがすぐさま答える。
「何でしょうかね?」
ホムラがススムを見る。
「分かりませんが、あの大きな手が、この人形を操る主では無いでしょうか?」
ススムがホムラが“説明して”と顔をするのを読み取って答える。
「では、どうやって引き下ろすかだな」
ススムの回答がいいのかジルは微笑を浮かべて言葉を発した。
「雷魔法」
ホムラが雷を上に向けて放つ。
魔法で天井が明るく見える。
天井は無く、白い手袋をした大きな手の指先から無数の透明な糸が垂れている。
「蜘蛛の糸見たいですね。ジル、黒剣であの糸を切ることは出来ますか?」
「あの高さまでは無理だな。それよか、人形をまとめて引っ張るのはどうだろうか?」
「でも、倒しちゃうと消えてしまい糸を引っ張る事は出来ません」
ススムが、迷宮の特徴を言う。
人形を倒せば、糸もろとも消えてしまう。
「では、手足と首を切り落とせば消える事など出来ない事は有りませんか?」
アユがジル、ホムラ、ススムに伝える。
だが、ただ倒せばいいのと、無力化は意味が違う。
やり方が違うのだ。
「面倒くさ~」
ホムラが嫌の顔をして人形の手足と首をはねる。
口では文句を言うが、出来ない訳では無い。しかも人形に雷魔法をやっても痺れて立ち止まる事は無いので、魔力の無駄使いになってしまう。
人形の首を切り落としたら消えてしまった。
「手足だけ切り落としですね」
「うわ。面倒くさ」
「自分達も努力致します」
「処でお聞きしますが、誰が糸をまとめて引っ張るのですか?」
アユの声にジルは、ホムラを見てホムラは、ススムを見てススムは、アユを見てアユは、ジルを見た。
「「「「………どうする?」」」」
「ここはリーダーのジルにやってもらうはどうですか?」
「何を言う。副リーダーのホムラだよ。」
「では、2人同時に遣るのはどうですか?」
「「………」」
“それは無いな”と顔をするジルとホムラ。
最終的には、ホムラが引っ張る事になった。
ジルは黒剣を空中に展開。
無力化した操り人形の糸をまとめて思いっきり引っ張るが糸は伸びるだけだった。
「何だ?この糸?引っ張っても伸びるだけ。やりづらい!」
「ホムラその糸をとうして雷魔法で電気を通す事は出来ないか?」
「やってみる!」
ぐっと握った手から雷魔法で電気を通す。
大きな白い手袋の魔物は静電気見たいにパチッとしたのか手を振る。
「…左手…」
「え?」
「ホムラ様、もう一度雷魔法で両手を痺れさせてもらいませんか?もしかしたら右手はダミーで左手がモンスターかも知れません!!」
一部始終見ていたアユがホムラに言ってくる。
ホムラは頷き、もう一度雷魔法を使った。
でも今回、手を振るったのは、右手だった。
「…違う…」
愕然とするアユにススムが“もう一度雷魔法を使って下さい”とお願いする。
魔力だって無限に有るわけでほ無い。無駄使いは避けたい。
「(ジル?)」
「(もう一度打ってくれないか?)」
「(何か動きが有るのですか?)」
「(分からん。でも、もう一発で動きが有るかも?)」
「(分かりました。)」
「分かりました。ススムの案に乗ります。ただしもう一度だけですよ」
ホムラが言うと雷魔法を撃ち込む。
今度は、両手を振りジル、ホムラ、ススム、アユの頭上まで降りてくる。
尽かさずジルの展開した黒剣と振り下ろした剣で串刺しや斬り着けるが、手応えが無い。
まるでマシュマロの様な弾力差が有る。
白い手袋の甲にススムとアユが同時に串刺しにすると手の甲から赤いシミが浮き出て来た。
「こいつもしかしたら同時攻撃にしないと倒せないかも?」
「可能性は有りますね」
「寸分違わない様に攻撃かぁ、ここはススムとアユにおまかせだな」
「はい! 姉さん行きますよ!」
「分かりました。」
ススムとアユの同時攻撃が始まった。
左右対称に傷をおい白い手袋が赤く染まっていく。
その間に無力化していく操り人形達にススムとアユは流れる様に剣を振るうジルとホムラを目の端にとどめながら剣を振るう。
「姉さん!!」
「ススム!!」
貫通するように手の平に剣を突き刺した。
ギィヤァァァ!!
手の甲からまるで何かが割って出て来て姿を現す。
それは、大きな2匹の蜘蛛………
「ギャアアア!!!!!!」
大きな声で悲鳴を上げたのは、ホムラでは無く、ススムでも無く、アユでも無かった。
そう。悲鳴を上げたのはジルだった。
ジルは蜘蛛のシルエットだけでも嫌がる大の蜘蛛嫌いなのだ。
「殺るんだ!塵も残さず!」
「気合い入ってるね!」
「俺は人形を相手にするから………こっち来た!!!!!!」
逃げるジルに追う蜘蛛。
蜘蛛はジルが1番弱いと判断した。
ジルは火魔法で火球を造り蜘蛛に放つが同時攻撃では無いので倒れない。
「ホムラ!!!!!!」
「はぁい」
緩い返事をしてススムに“頭を狙い撃ち。同時攻撃する”と伝えて剣を持って振りかざす。
8つの目で危険を回避する蜘蛛
「あれ、番だ」
ゼーゼー言いながらジルはホムラとススムに伝える。
「早く倒して!!!!!!」
まともに動かないジル。
ジルにとっては恐怖の対象なんだ。
「番だろうが知りませんが!ジル様が嫌がる事はしないでもらいます!」
アユがショートソードでススムと同時攻撃をするが蜘蛛の糸に簡単に捕まり身動きが出来なくなった。
「使えね!」
とジルが言う。
“嫌。一番使えないのはジルじゃないのか?”とホムラ、ススム、アユは言いたい言葉をぐっと押し込んだ。
「ここにロートやネロがいれば何とかなったのに。クスン」
泣き声になってるジルにホムラが、
「無い物ねだりは行けませんよ、ジル。あれは僕達で倒さないと行けないのですから」
アハハと笑うホムラにようやく重い腰を上げたジル。
(これは虫。これは虫。目が8つある虫………気持ち悪い。吐きそう。)
ジルは剣を鞘に戻して黒剣を展開した。
(全く同じ処を攻撃すればいいのだから黒剣で2匹同時に串刺しに)
蜘蛛が動くのと同時に空中に待機してあった黒剣が動き出す。
蜘蛛の腹部に一振の剣が貫通して身動き出来ないように床に縫い止める。
足、目を同時に潰して行く。
死闘?からジルは、何とか立っていた。
「この迷宮もう二度と来ない!!!!!!」
宣言するジルに苦笑いするホムラ、ススム、アユだった。
しかもススムとアユの記憶なのに誰1人して見てなかった。
「そんなもんですよ。」
とホムラは笑ってススムとアユに言っていた。
ちなみにジルはごっそりと精神的に削られ今は壁に背中を預けていた。
「ジル~。次の階層に行きますよ~。」
「ああ。分かった。今、そっちに行くよ」
ガタガタ震える足に渇を入れて歩きだしたジル。
ホムラはそんなジルの姿を見てのほほんとしている。
ススムとアユに着いていた蜘蛛の糸も消えて、ジル、ホムラ、ススム、アユは、次の階層に行った。




