記憶の迷宮1
記憶の迷宮。
「ここが“記憶の迷宮”ですか………。普通ですね。」
とホムラが言う。
「普通だね。」
とジルが言う。
「これが………迷宮ですか………」
とススムがポカーンと口を開けたまま言う。
「では、行きましょう」
とホムラが声がルンルンな気分で言う。
迷宮の扉を押し開ける。
中は何処の迷宮と同じで暗かった。
「えーと何何? “これから見れる過去の闇に葬りたい記憶を仲間と笑いあい、貶しまくって友情を省くもう”………だってさ」
「私は葬りたい記憶は有りませんが、………奴隷だったし」
「………とりあえず進もうか?」
ジル、ホムラ、ススムは、迷宮の中を突き進む。
道中は、“魔法が使えるか?”や“剣術はどれぐらいの腕なのか”話していた。
女性の話は全く出なかった。
「第一ステージですね。 さて、誰の記憶かな?」
ホムラがワクワクして言う。
出て来たのはホムラの過去の記憶だ。
女性が出て来てやたらと胸を強調している。
「あー、誰だったかな? 確か修道院の女だった…はず。」
「お二人は女性に興味が無いのですか?」
「「弱い女は好きになれない。足手まといだし、うざい。」」
「「きゃー、爪が折れたわ」なんて何でもない事を大げさに言うんですもの、何度殺してやろうかと思いましたよ」
「で、この記憶の人物は?」
「今でも修道院にいますよ。」
「珍しい始末しないなんて。」
「そんな、僕が、何でもすぐに始末をするとお思いですか?」
にっこり笑うホムラにジルとススムは「そうなんだ」と思いこれ以上何も言わなかった。
映像は続く。
それに伴ってコウモリが集まり人の姿になる。
誰1人として気付かない。
『我はドラキュラ………』
「寄付金でもしたのか?」
「しませんよ。その時はまだ他人を助ける余裕なんて有りませんから」
「今はしているのですか?」
「しないよ。隠居だものお金は大事に使わないと。他人を助ける程の余裕は、無いよ」
誰1人として気付かない。
『我の話を聞けーー!!』
「「「ん?」」」
声がした方がに振り返りジル、ホムラ、ススムは、ドラキュラを見て「何かいる」と顔をしている3人。
『我はドラキュラ…恐れ入ったか?我を……!?』
言葉も途中でホムラは剣で斬りかかる。
しかも雷付きの剣技だ。
「おおっ!凄いなー。俺も使えない雷の魔法だ」
「そうなんですか?」
「使えても、静電気ぐらいだし、俺は。あんなに凄い雷魔法は始めてだ!」
斬った処からコウモリが羽ばたき違う処に集り人の姿になるが、先程より身長が短くなっている。
「小さいな」
「小さいですね」
「コウモリが人になった。」
『我を見ても驚くのは1人だけか?』
「「わー。凄いなー」」
棒読みで驚きもしない顔でジルとホムラは言う。
『我に情けをかけるな!』
「「「………」」」
『何か言えよ!』
ドラキュラが顔を真っ赤にして言う。
白けた顔をしながらジル、ホムラ、ススムは視線を絡めて言葉を発した。
「どうする?」
「どうしましょ?」
「一匹づつ倒すのはどうでしょうか?。それとも水魔法をお使いになられるなら水の中に顔だけ出して、面白く無い事を言ったら構わず水没して溺死してしまえばいいのでは?」
ススム、意外とえげつない。
ジルとホムラは瞬きをしてドラキュラを見て“ニタァァァ”と笑ってから逃げ惑うドラキュラに水魔法で水球を向ける。
『ちょっ、ちょっと待て!』
「意外と逃げ足が早いですね。軽く雷魔法で感電してから水魔法で閉じ込めるのはどうでしょうか?」
手を翳して壁に稲光が走る。
『待てー!!我を殺す気か?』
「「倒さないと次のエリアに行けないじゃないか?」」
「そうなんですね」
ドラキュラを倒さないと次のエリアに行けない。
迷宮では当たり前の事だが、この迷宮は言葉で揺さぶり冒険者を陥れる。
だが、相手が悪かった。
ジル、ホムラは、迷宮に対して迷宮だからと割りきっている。
しかも迷宮が始めてのススムに対して「迷宮だから」で割りきってと言う始末だ。
「迷宮のボスが命乞いですか?」
ススムがポツリと呟く。
『誰が命乞いだー!』
人から無数のコウモリの姿に変身してススムの方に向かうが、ホムラの雷魔法で感電させてジルの水魔法で溺死させる。
『待って、待って、待って。お願いだから待って!まっ、ガボッガボッゴボッ』
(喋ってるのに水没して溺死なんて容赦無いな。)
とススムは遠い目をしながらドラキュラの末路を見ていた。
ドラキュラが消えるとホムラの過去の記憶も途中で終わりになる。ただ、悪い顔をして大鍋で油をグツグツと煮えていた処で終わった。




