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久々の2人旅 2

次の日、昨日の吹雪が嘘の様に晴れ渡っていた。

「ん~、晴天だ。」

カーテンを開けて外を見るホムラ。窓の外では、従業員が雪掻きをしている。

「運搬魔法を使えばいいのに」

スコップで人力でやって効率が悪い。

「どうした?ホムラ。外に何か有るのか?」

「ああ、ジル。おはようございます。外で効率の悪い雪掻きをしているのを見まして、運搬魔法を使えばいいのにって思っていたんです」

ジルもホムラの隣で窓の外を見て

「本当だな」

頭をタオルで拭きながら言った。

魔石ドライヤーで頭を乾かしポニテにする。ホムラも三つ編みにして、鍵を持って部屋を後にした。


受付カンウターでまた戻る事を行って外に出た。

「お疲れ様です」

「はい。ありがとうございます。足元に気を付けてお出かけ下さい。」

ジルとホムラは、雪掻きをしている人に言って装備服で外に出た。


コートを頼んだ店に向かって歩く。飛行魔法を使えば簡単だが、あえて雪を踏み締めて歩く。

ザクザクと雪を踏み締めて歩く。

途中、露店で熱々のコーヒーを買ったりしてジルとホムラは話ながら歩く。


「ごめん下さい。」

ホムラとジルは150年の歴史をもつ老舗の店に入った。外見はボロいけど………

「はい~。」

出て来た変態。………ゴホン失礼。美人だが少々難有りの女性が出て来てジルとホムラを見て花が咲いた様に笑い棚において有った風呂敷を手に取りテーブルの上に置いた。

「ばぁちゃんオオクロクマとオオシロクマのお客さん達来たよ」

どうやら出した毛皮で呼ばれるみたいだが………あっ、名前教えていなかった。

「今、行くよ~」

部屋の奥から杖を着きながら出てくる老婆はジルとホムラをみて笑顔で向かえた。

「いらっしゃい」

「お客さん達が頼んだコートです。試着してみてください。大きさや長さはその場で修正するよ」

ジルはオオシロクマの毛皮だ作られたコート。ホムラはオオクロクマの毛皮で作られたコートを手に取り袖を通す。

サイズも裾の長さはピッタリ。

「ピッタリですね。これなら迷宮で動いても大丈夫ですね。」

「でも良く分かりましたね。サイズ?」

「長年培ったスキルさ。」

「へ~そうだな。寒さを感じない。ありがとう。代金はいくらになる?」

「お代は要りません。最後にいい仕事ができました。ありがとうございます。」

「こんなにいいコートを作ってぐださったのに料金がいらないなんて、こちらも申し訳ないので払います。」

「そうですか?。では、金貨12枚づつでお願いします。」

ジルとホムラはお金を払い店を出て路地裏に歩いて行った。

あんなに晴れていたのに今は、曇天だ。

「こりゃ、また雪が降るな。」

と毛糸の帽子を被った初老の夫婦が話をしている。

「また吹雪ですかね?」

「分からん。が、この地で生きている人達が言っているから雪が降るんだよ?きっと」

曇天の空を見上げ、ススキノの冒険者ギルドに向かって足を伸ばした。


ススキノの冒険者ギルドの扉を開き中に入る。

受付まで行くと受付嬢が、「こんにちは」と笑顔で言うが、視線は品定めをしている様だった。

「(品定めか?)」

「(そうみたいですね)」

「(何で俺達が行くところはこんな屑ばかりの受付嬢に当たるんだ?)」

「(そうですね。僕達に何か問題が有るのでしょうか?)」

念話で話ながら受付嬢に声をかける。

「地図を一部貰えるか?」

「銀貨1枚です。」

地図をもらって、手頃のテーブルに行き、椅子に座るとススキノの迷宮の地図を広げる。

「ここは、海鮮の迷宮で有名なんだよね?」

「二条迷宮と呼ばれてるよ。ダンジョンのドロップ品が全て海鮮なんだよね」

「ほお」

「で、ここで取れた海鮮は店屋が欲しがる程の逸品だって、ホテルのウエイトレスが言っていた。」

「そうなんだ」

「(じゃ、近々二条迷宮なの行ってみるか?)」

「(ええ、そうですね。)」

席を立って、扉に向かって歩くと酒で顔を赤くした冒険者がジル達が通る動線に足を投げ出し止めた。

「小綺麗な格好の冒険者か?貴族様か?」

「「………」」

「怖くて声も出ないのか?」

ゲラゲラ笑う冒険者にジルとホムラは分からない様に深いため息をついた。

「(どうする?)」

「(どうしましょう?)」

「おお、これはオオシロクマとオオクロクマの毛皮のコートじゃないか?それを差し出すならこの道を通っていいだよ。ああ、受付嬢のサタリアに言っても無駄だぜ。サタリアも此方(こちら)側の人間だぜ。」

「(あの受付嬢はサタリアと言う名前か)」

「(きっと弱味を握られているんですよ)」

「サタリアなら喜んで足を開くぞ?」

「女なら間に合ってる。」

「退いてもらえんか?」

「だから言っただろうそのオオクロクマとオオシロクマの毛皮のコートを置いていけ。座すれば命を取らない。出来ないなら土下座してもらえればな?」

迷宮内に響く笑い声。

ジルとホムラは顔を見てアイコンタクトを取る。


それからは早かった。

ジルもホムラも体術で、制圧をする。

圧倒的な力の差。

冒険者ギルド内に広がる静けさに弱いと思っていた冒険者に一瞬で制圧される恐怖。

「弱い」

「で、僕達のコートが何でしたっけ?」

「ひっ!!」

ヒョロヒョロに見えて無駄の無い筋肉がついてる2人に怯える冒険者達。ジルが伸びている冒険者の懐から写真が数枚出ていた。

「何だこれ?」

手に取り見るとサタリアの恥ずかしい写真ばかりだ。

これで弱味を握られていたのか?

軽くため息をして、ガタガタ震えている少年に写真を渡し、もっていたカメラのフィルムを取り出して光に当てた。

「ネガの替わりにこれをやる」

写真と懐にしまってあったネガを渡す。

「これは、あの受付嬢の恥ずかしい写真………全ての冒険者ギルドにばらまこう。(ポツリ)」

第2のクソが生まれた瞬間だった。


ギルドを出ようとしていたジルとホムラに駆け寄りサタリアが言う。

「何で写真を返して下さらなかったのですか?」

「「………?。だってお前(サタリア)は人を値踏みしていただろう?そんな奴に何で?」」

「そんな上等な毛皮を来ているんだから少しは私に還元しなさいよ!」

「何で?」

ホムラがぶっきらぼうに言う。

(圧が凄い。「何で僕達がしないと行けないんですか?。たかが、受付嬢ごときに」って思っているんだろうな)

金切り声で騒ぐ受付嬢の声を聞き付けて奥から2人の受付嬢が出て来る。

「サタリア。」

ポンっと肩を叩いて振り返ったサタリアに眩しい程の笑顔を送る受付嬢。

「モナ!」

「また冒険者を値踏みしたんでしょ。悪い癖が出てるよ。それに…」

「…冒険者ギルドのギルドマスターに報告されるよ」

「リザ!」

モナとリザは双子の受付嬢だ。

性格良し、冒険者からの人気者。

いつもの2人で仕事をしている。出来ない処はお互いで補う。

だからか、2人を呼ぶ時はモナリザと呼んでいる。

サタリアの1つ上の先輩で、サタリアの悪い癖を注意をしていさめている。唯一の存在だ。

「だって、彼らが私の写真を達の悪い人に渡すんだからそれで………」

「仕方がないんじゃない?何時までも悪い癖を改めない貴女も悪いわよ。」

「それに彼らも悪気は無いと思うわよ。…多分」

((多分なんだ。))

「もういい?」

それだけ言うと、ホムラはジルの手を握って冒険者ギルドを出て行った。


「はぁ~。サタリア。もう冒険者を値踏みするのは止しなさい。」

「そうよ。サタリア。モナの言うとおりよ。」

「「私達、あの2人には言葉で勝てないわ。」」

「それに三つ編みの人、ポニテの人より怖いわ。」

「絶対に相手にしたくない」

「そうですか?」

「そうよ。ポニテの人は、何を考えてるか分からないけど………三つ編みの人を見たら全身が身震いしたわ。」

「「あの目は、ここで乱闘が起こり死人が出でも眉1つも動かさないだろうって思ったわ。」」

「値踏みなんてするものじゃないわ」

「写真と命どちらを取るのサタリアは?」

「でも…写真が…」

「どんな写真を撮られたの?」

「………勝負下着じゃない下着の姿。」

「「諦めなさい」」

「う"~」

唸るサタリアの元に先程写真を貰った少年がやって来て写真を返す。

どうやら少年はサタリアの事が好きの様で彼の良心が勝ったようだ。

「いいの?」

頷く少年

「写真を撮ってもいい?」

と消えそうな声で聞いてきた。

「勿論よ。」

新しいフィルムを入れてサタリアを撮る少年。

彼には裏の顔が有った。

勝負下着じゃない下着姿の盗撮依頼を受けて撮ったもこの少年だ。

サタリアは知らない少年がネガを持っていることを。


冒険者ギルドを出て喫茶店に入るジルとホムラ。

ここまで歩いてきて寒さを全く感じさせないコートを凄いと誉める。

喫茶店でホットコーヒー頼んだら山切パン(食パン)とサラダとゆで卵も一緒に出て来た。

店員に頼んでないと伝えると今の時間帯がモーニングサービスが付いている時間だったらしく分厚い山切パン(食パン)を焼いてバターを塗ったのとサラダとゆで卵が付いてきた。

「頂こうか」

ジルの言葉にホムラは頷き手を合わせて「頂きます」と言って、ホムラは山切パンをガブリと食べて咀嚼する。

「美味しい。ジル」

ジルもコーヒーを一口飲んで

「美味しい。久々に旨いコーヒーに当たったぞ」

そう言ってジルは分厚い山切パンをガブリと食べて咀嚼する。

「この店は当たりだったですね」

「ああ、当たりだ」

パンを食べながら二条迷宮の地図を出すジル

「そんなに深い処は潜れないからね。食事も考えないといけないし水は………(魔法で何とかしよう)」

何処にも目や耳が有るか分からないから大っぴらに話せない。今後の予定はホテルに帰ってからにしようと話を切り上げて地図をポケットにしまった。

それからはたわいもない話。ロートとネロはうまくやれているかの話をしていた。

山切パンを食べ終えてサラダを食べる。最後に残ったゆで卵を塩を降って食べた。

「意外とボリュームがあったね。お会計はいくらかな?」テーブルの伝票を取り値段を見る。

「銀貨1枚と銅貨4だね。ある?」

「銅貨は無いが銀貨は有るよ。銀貨2枚出し銅貨6枚を貰い各3枚づつだね」

「了解。」

お金を払いジルとホムラは喫茶店の外に出て空を見上げた。

相変わらずの曇天。

もう雪が降りだしてくる感じだ。

「ホテルに戻るか?」

「その前に寄りたい処がある。」

「何処ですか?」

「本屋」

ジルは読書が大好き。はまった奴なら1日で読みきってしまう。

先日買った本はつまらなく嫌々で読んでいたので半年は読み終わるまでかかった。「内容は?」って聞いても「覚えてない」と言ってすぐに売っていたのは2ヶ月前の事

「当たりがあればいいですね」

「中々ないよ」

「今日は本屋に寄るのやめて後日改めて行きませんか本屋?朝から」

「そうだね。そうするか。雪が降る前にホテルに帰って二条迷宮の攻略の話でもするか?幸い攻略本も有ることだし」

どこで手に入るたのか分からないが、有るのに越したことがない。

ともあれ、二条迷宮はすでに他の冒険者の手によって攻略済みで、ラスボスを倒して最後に宝箱から出て来たのは大量の金貨と攻略本だった。

ここまで必死に攻略をしてきて最後のボスに勝てて、出て来たのは攻略本。

さぞかし叩き付けたかったに違いない。

だって攻略して、出て来たのは攻略本だもの。もっと早くでてくれればと心底思っただろう。

迷宮で出た物は高値で売れるが、たまに価値も知らず、買い叩かれる事もしばしばある。今回はたまたまジルの行き付けの本屋の店主が裏ルートで手に入れた二条迷宮の攻略本をたまたまジルが買った。

金貨10枚で。

迷宮の品では意外と安いの値段だろう。


ジルとホムラは足早にホテルに戻った。

「お帰りなさい」

「「ただいま戻りました。」」

受付で鍵をもらい部屋に向かう。

外で後を付けている人がいたのでもし、受付で取材やコートの事で話を聞きたいと来ても断って欲しいと伝えて奥に消えて行った。

カメラを持ち帽子を被った少年が、ホテルの受付のボーイに声をかけた。

「あの、今の毛皮のコートを着た冒険者に取材をしたいのですが、出来ますか?」

ボーイは笑顔のまま少年に答えた。

「申し訳ございません。お客様より“ 誰も通すな ” と言われておりまして、」

「そこを何とか出来ませんか?」

「申し訳ございません。」

どんなに言っても返ってくる言葉は「ノー」だった。

「オオクロクマとオオシロクマの毛皮をどこで入手したか知りたかったのに………」

嘘だ。少年は嘘を付いた。本当は知っている。オオクロクマとオオシロクマの毛皮は迷宮小鳥遊の処から出た事を。

彼は、浅い処まで冒険者の荷物運びをする運び屋。

そして迷宮の記事を書いてる記者でもある。

目を付けた冒険者に悟れない様に息を殺して記事を書く。

まるで別の意味でストーカーである。

記事に書かれたくない事は、交渉してお金をもらって削除すると話を付けるが、お金だけもらって記事にしてトンズラする。嫌われものの記者なのだ。

だからホテル側も相手にしない。お客様からの依頼は()()に守る事をポリシーにしている。地道な事だが、評判のいいホテルとなれば、お客様もさらに来て下さる。待遇が良ければ、リピーターが増える。

そうして“ ホテル・ハマナス ”は安心して泊まることの出来るホテルとなった。


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