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この世界には築城士という職業は無かった  作者: 並矢 美樹


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リーダーにはならなかったけど

今回、地の文ばかり多くて、ちょっと長めです。

色々とシスターに相談して、その結果がどうなったかの話です。

 僕は結局リーダーにはならなかった。

 シスターが、やはり村の外の林に行く孤児院のメンバーの中で、一番歳下の1人である僕がリーダーとなるのは良くないと言い、リーダーは自分も怪我をしていたのに自分の治療は後回しにして他の怪我人の治療を優先した歳上の子になった。

 ジャンと一緒に僕を助けに来てくれて、怪我もしたけどスライムを1匹倒してレベルが上がった子と、この2人が一番の歳上だったから妥当な選出だと思う。

 ちなみにリーダーになったのがウォルフという名前で、助けに来てくれたのがウィリーという名前で、ちょっとだけ名前が似ている。


 「俺がリーダーに決まったけど、俺はナリート、お前を推薦したように、お前がリーダーをした方が良いと思っている。

  だから、お前の言うことは一番優先して聞くから、なんでも言ってくれ。

  ウィリーもお前のことを認めているから、俺がお前の言うことを聞いても文句なんて言わないぞ」


 という訳で、別に僕はリーダーにはならなかったけど、やっぱり単独行動はそのまま許してもらえることにはならず、みんなと同じに集団で行動することになった。


 集団で行動することになると、今まではみんなに内緒でしていた、スライムや魚の罠のこと、それに魚を焼いて食べていたことも、ルーミエを連れて行っていたことも今までと同じように続けることが出来なくて、どうしようか困るなぁと考えていたのだが、こちらもあまり困ることはなかった。


 ルーミエを連れて林に入っていたことは、みんなに気付かれていたし、川のところで何かしていることも、みんなは知っていた。

 ただ、あの前のリーダーが僕のことを気に入らず無視していたので、近付いたり何をしているのか問われなかっただけだった。


 罠は、僕が単独で行動しなくなってすぐに、全員で作ることになってしまった。

 というのは、何日か雨が続いた時があって、そうしたら川が増水し、魚の罠は流されてどこかに行ってしまったし、スライムの罠と獲った魚を放しておく池も掘った所が埋まってしまい、作り直さねばならなくなってしまったからだ。


 最初僕はルーミエと2人で作り直そうと考えたのだけど、僕のすることに興味津々だったジャンが、僕とルーミエの動きに気がついて、自分も加わると言ってきて、それが呼び水になって話が大きくなってしまったのだ。


 ルーミエと相談していたのをジャンに気づかれたのが、そもそもなので、ルーミエと2人じゃなくて、僕1人でやればよかったかなと思ったのだけど、そうしたらルーミエが怒るのは目に見ていたから仕方ないと思う。

 ジャンに他の人には絶対に秘密と強く口止めしておかなかったのは失敗だったと思うけど。


 罠はスライムの罠は4つ作った。

 僕とルーミエで1つ作り、みんなも手分けして3つ作った。

 僕とルーミエは慣れているから、というか僕は自分の能力で穴を掘ったりは簡単に出来るから、2人で1つ作ったのだけど、みんなは慣れていないし、だいたい1箇所を5人がかりで作ったのだけど、僕は自分とルーミエの分を作りながらも、みんなが作るのを指導しながらだったのだけど、僕とルーミエの罠の方がずっと早く出来上がった。


 簡単にみんなとスライムの罠を作ったと思うなら、それは大きな間違いだ。

 スライムの罠を作るにも、みんながスライムに襲われないように、まず先に灰を撒いて、絶対ではないけどスライムが近寄らないようにしなければならない。 その撒く灰を集めなければならない。

 それで最初は作るのが簡単な魚の罠から始めることになった。

 魚の罠もたくさん仕掛け過ぎて、川から魚がいなくなってしまっては困るけど、スライムを怖れて冒険者なんかを除くと、村の人は川には基本近付かないから、魚を獲る人もまずいないから大丈夫だろうと、みんなに魚の罠も作り方を教えて、5つ程作った。

 魚の罠を川の中に設置するのは僕1人でやらないとダメかなと思ったのだけど、ジャンと、同じように助けに来てくれてレベルの上がった歳上のウィリーが一緒にやってくれた。 他の面々は少し離れた場所から、ウォルフを中心にして周りを監視してくれているので、安全度もずっと増している。

 僕自身は[空間認識]のレベルが上がったからか、認識できる範囲が広がっていたからスライムが近くにいることに気が付かないなんてことはないのだけど、ジャンとウィリーには離れた場所からだけど安全のために見守られているのは、とても安心感があるようだった。

 そうして獲れた魚を僕たちは順番で焼いて食べて、必要になる灰を集めたのだった。

 そうして必要な灰の量が集まってから、その灰で安全な範囲を作って、それからスライムの罠を作ったのだ。


 スライムの罠を4つにしたのは、罠に仕掛ける餌の都合だ。

 魚の罠で獲れる魚の内臓を餌にしているので、あまり多く罠を作っても餌がない。

 餌にするには、魚の罠にも使う林の土の中にいる虫なんかでも良いのだけど、前に試してみた時には、臭いが少ないせいかスライムの集まりが悪い気がしたので、獲れる魚の数を考えて、スライムの罠の数を決めたのだ。


 僕と一緒に罠を作って獲物を獲ると、罠師の特別なところである経験値の増加分の半分が一緒に作った人に入る。

 スライム1匹の増加分は0.5の経験値だけど、その半分の経験値が一緒に作った人に入ることになる。

 だからルーミエのように僕と2人だけで罠を作ると、スライム1匹当たり0.25の経験値が入ることになるのだけど、ルーミエを除いたみんなは、5人で1つの罠を作った感じとなったので、1人当たりだいたい0.05の経験値が入ることになったのではないかと思う。

 0.05の経験値といっても、10匹スライムがかかれば、0.5の経験値が入ることになり、スライムの罠を作った最初の数日は、次々と熱を出して寝込む仲間が出て、ちょっと狼狽えてしまった。


 こうして仲間たちも次々とレベルが2とか3になって、今までよりも色々な能力が向上したのだけど、こういったことが出来たのも、日々の柴刈りにかかる時間が、僕の[空間認識]で、効率よく短時間にみんな作業を済ますことが出来るようになったからである。

 それによって僕がしていたのと同様に、みんなも柴刈り以外のことにも時間を使えるようになったからだ。



 大きな問題となっていたもう一つ、寄生虫に関してだけど、これに関しての解決は、最初はとても簡単に行きそうに思えたのだけど、実際はとても難しく長い戦いになってしまった。


 シスターの魔法、イクストラクトで寄生虫を体外に取り出すことは、割と簡単に成功した。

 僕が何故か知っている知識に、回虫という寄生虫があって、きっとそれが問題の寄生虫なのだろうと考えた。

 僕はその回虫の形状をシスターに教えると、シスターもそれを過去に見たことがあることが分かった。

 となれば、シスターは回虫を認識できている訳で、イクストラクトの魔法で除去が出来るはずで、僕に試してもらったら、見事に僕の寄生虫は除去出来た。

 これならばと、ルーミエにも試してもらったら、ルーミエも回虫を除去することが出来たのだけど、ルーミエの寄生虫に冒されているという表示は、それだけでは消えなかった。

 他の寄生虫にもルーミエは冒されている可能性が高いと考えて、ルーミエが栄養が取れていないことから、サナダムシを疑ったら、それが大当たりで、シスターに紐の様な形の虫とその形状を教えて試してもらったのだが、上手くいって除去出来たサナダムシは大きいのは3mにもなる大きさだったので、僕もびっくりしたがシスターは悲鳴をあげる事態となってしまった。

 しかし、これによってルーミエの寄生虫に冒されているという記述も無くなって、ルーミエはそれからは目に見えて血色が良くなった。


 僕とルーミエが寄生虫に冒されていたということは、この孤児院に暮らす他の仲間も男女問わず同じように冒されている可能性が高い訳で、みんなのことを見ることが出来る僕とルーミエは、シスターの要請で見てみると、ほぼ全員が寄生虫に冒されていた。

 シスターは自分の体力が続く範囲で、順番に次々とイクストラクトの魔法で、みんなの寄生虫を除去していった。

 イクストラクトの魔法を行使して、寄生虫を除去することは、シスターとしての経験値となる行為だったようで、シスターは次のレベル7に必要な経験値が31と、割と迫っていたからかもしれないけど、すぐに[全体レベル]が 7 に上がり、それどころかしばらくするとレベル8まで上がって、他の項目も特に[魔力]と[治癒魔法]の項目が顕著に数字が上がった。


 シスターから聞いた話によると、20歳くらいの大人で、[全体レベル]は 5 くらいが普通なので、自分がまだ17歳でレベル8というのは、ちょっと驚きの数字らしい。

 僕はシスターの驚きついでに、もう一つ見えたことを教えてあげた。

 シスターの[称号]の中に下級シスターという称号があったのだけど、その称号が中級シスターに変わっていることを。


 下級シスターというのは、シスターの学校を出れば誰でも得られる称号らしくて、中級シスターになって、初めて一人前のシスターとして認められるらしい。

 シスターの学校を出れば、簡単な治癒魔法と製薬の技術は覚えられるらしいが、そこで留まってしまい、それ以上の一人前のシスターになることを求めない人も少なくないらしいのだが、中級シスターから上級シスターになるのは、長き厳しい狭き門らしい。

 そもそもにおいて、学校を出てから中級の一人前になるにも普通は5年くらいかかり、2年で中級というのは、とても異例の速さ、若さらしい。


 とにかくシスターのイクストラクトという魔法のおかげで、寄生虫を簡単に除去できるかと思ったのだけど、残念なことに寄生虫の問題はなかなか終わることが出来なかった。

 魔法により一度寄生虫がいなくなっても、しばらくするとすぐに寄生虫に冒されている状態に戻ってしまうのだ。

 寄生虫は除去出来てもその卵まで除去出来ていなかったからだと思ったのだが、ある程度何回かシスターがみんなを魔法で除去しても収まらず、別の要因をどうにかしなければ駄目だと考えなければならなくなった。

 まず一番の問題は、孤児院で行っている農業の肥やしは、人糞がほとんどであることだと、知識として問題点が分かっていた。

 それともう一つ、僕たちは僕が見ることが出来る人を対象として、見て記述されていることから寄生虫に冒されているかどうか判断して、シスターに除去してもらっていた。 そこから完全にこぼれ落ちている存在がいる。

 僕は7歳の誕生日を迎えた後の人しか、その人のことを見ることが出来ない。

 7歳の誕生日を過ぎると、神父様が職業を見てくださることになっているので、きっと神父様もそれ以前には見ることが出来ないのではないかと思った。

 それだから僕は孤児院に居る、それ以下の小さな子どもたちは見ていないし、問題が収まらないので、その原因を探るために見てみようともしてみたのだけど、やはり僕には小さい子は見えなかったので、そういうものだと思っていた。

 しかし驚いたことに、ルーミエは小さい子も僕とは違っているので一部ではあるのだけど見えて、小さい子も寄生虫に冒されていることが分かった。


 こうして小さい子もシスターの魔法による除去の対象になったのだけど、シスターだってこれだけの人数を、次々とどんどん除去できる訳がない。

 なかなか寄生虫の問題を克服することは出来ないと、ため息をつくこととなってしまった。


 僕は男の仲間に手伝ってもらって、刈った草や落ち葉に糞尿と土を少しかけて、発酵させて堆肥を作るための施設を作った。

 施設と言ってもそんな大した物ではなくて、ちょっと穴を掘って、その上に竹で雨よけの屋根を作っただけのことだ。

 それだけのことでも、少し時間をおくと、湯気が出るほど発酵して熱くなる。

 適当な時に一度上下を逆さになるように、作っている堆肥をひっくり返して混ぜて、今度は完全に熱が収まるのを待てば、完熟堆肥の出来上がりだ。

 こうすれば、人糞に含まれていた寄生虫の卵やその一部は、熱によって死滅して、安全かつ効果に優れた肥料になることも、僕は何故か知識として知っていた。


 こんな面倒な手間を増やすことは、嫌がられて当然だと思ったのだけど、僕が訳が分からないけど知識があることを、シスターは見てきたので、そんな行動を容認してくれた。

 友たちも、訳が分からないけど新しいことをするので、面白がってなのか協力してくれた。

 最初は僕の言葉にまあ従ってみようか、という感じだったのだけど、一番最初に作ったところに湯気か立ったのを見てからは、とても積極的に手伝ってくれて、僕が思っていたよりも大きさも数も多くの施設を作って、草や枯れ葉などを運んでくれた。


 もう一つ大きなこととして、ルーミエが僕らと一緒に外の林に行く時に、ルーミエと仲の良い女の子数人も行くようになったのだけど、自分たちの遊びに使おうと木の実を集めたのだけど、その中に特徴的な木の実が含まれていた。

 何かというと、センダンの木の実だ。

 それによって僕は、林の中にセンダンの木があることに気づいて、すぐにその在処を知った。

 センダンの木の樹皮からは、確か駆虫薬が出来るのだ。

 僕にはそんな知識があることはあったのだけど、どうしたら良いかまでは良く分からなかったので、シスターに相談した。

 さすがにシスターには[製薬]の項目があるだけあって、センダンの木の樹皮を使っての駆虫薬の知識はしっかりと持っていて、それを煎じた駆虫薬を簡単に作ってしまった。

 出来上がった煎じ薬はとても苦くて、飲みたいと思うような物ではなかったのだけど、魔法で除去した時に、自分の体内にいた虫の姿を見ることとなった僕たちは、我慢してそれを何回か定期的に飲んだ。


 シスターの魔法と、シスターの作る薬、そして人糞を直接畑に撒くことをやめた結果、かなりの時間がかかったのだけど、孤児院ではどうやら寄生虫の感染をほぼ抑えることが出来た。

 そうしたら、孤児院のみんなは顔色が良くなったし、体格も少し良くなった。

 もちろん一番それが顕著だったのはルーミエだったけど。



 それからシスターだけでなく、僕とルーミエ、他の友たちもレベルが上がった。


 僕がレベルが上がったのは、きっとスライムの罠の数が増えて、得られる経験値の量がずっと増えたからだと思う。

 レベルが上がっていくと次のレベルになるのに必要な経験値の数がとても増えてしまうので、レベル7は243だからそんなには掛からないと思ったけど、レベル8は729必要だから遠い先だと思っていたのだが、もうレベル8になっている。

 半年ちょっとのことだから、毎日40から50の経験値になっていたことになる。


 ルーミエは罠による経験値だけでなくて、みんなの状態を見たり、シスターの薬作りを手伝ったりも聖女という職業では経験値になるらしくて、レベルは6になっていて、もうすぐ7だ。

 聖女という職業は経験値になることが広くて、治癒魔法を使っても経験値になるのはシスターと一緒だ。 ついでに触れれば、ルーミエはイクストラクトの魔法も覚えた。

 僕はルーミエほどいつもシスターの側で手伝っていた訳ではないからか、イクストラクトの魔法は覚えていない。 でも種火を付ける魔法を教わって、[火魔法]という項目が出来た。


 それ以外の男の仲間たちはレベル4とかレベル5になっている。

 ジャンは[職業]が槍士だった。 それに歳上のウィリーは剣士、ウォルフは弓士だ。 他は残念ながらと言って良いのか分からないけど、農民と村人だった。


 ジャン、ウィリー、ウォルフも神父様には、農民か村人と言われていたのだけど、僕が教えると自分の職業の武器で、スライム討伐をしたりもしたので、レベルは5だ。

 [職業]が農民や村人の人でも、3人と同様にスライムを何匹か槍で討伐してみた人もいて、中にはレベル5になった人もいる。


 そんなこんなしているうちに、時は過ぎ、また春になろうとしている。


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― 新着の感想 ―
【気になった】 誤字報告では伝わりにくいと思い書き込みです。長文になりすいません。 以前にルーミエが院内の子どもは全員寄生虫に侵されてる事を告げてましたが、今話ではその事は無かったように表現されてます…
[一言] 堆肥作りは臭くて嫌がる人が多そうな気がしたり。特に熱が籠もるとムワッとしそうだし。 面白がるのは意外
[良い点] 相談相手や仲間が増えて一気にできることが増えましたね!
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