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男の正体と解決策

 

「部屋で何をしていた?」


 男は未だに、俺の首に回した腕の力を維持して拘束を緩めず、低くそれでいて鋭さを持った厳しい口調で尋ねてくる。


「勉強しようとしていただけですけど……」


 俺はこの緊迫とした状況には不似合いな穏やかに答えた。

 何故、俺がこんなに穏やかに答えられるかというと身の危険は無いと安心しているからだ。


 この男の口振りからすれば隣にアリスがいる事を知っている様だ。それに、変装している上で俺の名前を言い当てていた。という事は、もちろんアリスと俺の正体を誤認しているという訳も無さそうだ。


 次に、こんな質問を何故するのかと考えた時に、王女であるアリスや俺に害を為すつもりならば俺に長々と質問する理由も無い。さっさと暗殺、誘拐してしまう方がリスクも少なく安心できるはずだ。


 さらに、学園内で変装したのに、変装を暴けたという事実から、学園内に侵入可能な人物。つまり、学生、教師、警備兵の誰かであるが、学生と教師は無い。何故なら教師は目立つ為、学園内でこっそりと俺たちの跡をつけることは不可能であり、学生は単純に実力不足で、ユリスに鍛えられた俺が気付かないなんて事は無いだろう。


 ならば、害を為すつもりも無いのにわざわざ後ろから警備兵が俺たちにバレないように付いてくる理由なんて1つしかない。恐らく、この警備兵はアリスの護衛なのだろう。


 よくよく考えれば、誕生日会を俺のような小貴族まで招いて盛大に行う程王女を溺愛しているのに、護衛をつけないはずがない。そういう事でこいつは護衛に違いないのだ。


 でも、護衛ついてるならしっかり仕事しろよ。今回も宿屋で個室まで入っちゃってるし、前は盗賊に捕まってたんだぜ?そのへん大丈夫なのかよ……


 それはまぁ取り敢えず今如何すればいいかを考えよう。


 害を為すつもりも無いのに、何故このように脅しをかけてくるのかと考えれば、おそらく俺が身の危険に迫られた時の反応を試しているのだろう。

 信用できるかどうか、アリスを売るかどうかで俺をアリスに近づけて良いかを図っているはずだ。


 それに対しての俺の行動は簡単だ。

 信用されず、アリスを売って、アリスを護衛の手によって物理的に遠ざけてもらえば良いのだ。


 いや〜こんなチャンスにめぐまれるとはね!

 どうせ、沈みゆく王家の評価なんてどうでもいいし、アリスを遠ざけるのにわざわざ自分から行動を起こさなくていいなんて最高じゃないですか!


 という事で適当な事言って遠ざけてもらおう!


「そんなはずがあるか!何故勉強するのに宿屋で行う必要があるんだ!やましいことがあるのではないのか?」


「アメリシア様が僕と一緒に宿屋に行きたいって言うからその願いを恐れながら叶えさせて頂いただけですよ」


 どうだ!このアメリシアという王女の本名を言いつつ、我が身可愛さに自分から連れてきてないとかいうコンボ!こんな事、護衛ならこんな事する奴、絶対に近づけられないだろ!怒りで顔を真っ赤にしているはずだ。


 さぁ、反応はいかに!ってあれ?


 俺が男の様子を確認すると驚愕し、目を見開きながら立ち尽くしていた。


 それから、無言の時が少し流れ、男が口を開いた。


「そ、それは本当か?」


 ん?なんだこのリアクション。嘘だと気づいてないかのような反応で何かに衝撃を受けているように見える。

 それか、俺が嘘をつくのに驚いているのかもしれない。よくわからないが、このまま通してしまおう。


「え、ええ。本当ですけど……」


「そ、そんな馬鹿な‼︎」


 そういうや、否や男は崩れ落ちてしまった。


「えええええええ!?一体どうしたって言うんですか!?」


「一体どうしたとはこっちのセリフだ!姫様に貴様!何をした!」


「何もしてませんよ!」


「そんな訳あるか!俺たち護衛はな!お前も知ってるように王都の街が大好きな姫様にな、街の怖さを知ってもらう為にわざと盗賊に攫わせたりしてるんだ!そんな事をしている中で、男と二人きりで宿屋に行くって事が一番やらしくて怖い事だと教育してるんだぞ!」


「そんな事、教えずに歴史と数学を教えてやってくれよ!」


「そんな事、王様に言ってくれ!!王様の命令で毎晩代わる代わる護衛の女騎士が寝ているアメリシア様に男はケダモノ、宿屋は怖いとこだって囁かせたるんだぞ!それなのに宿屋に誘うってことは……は!?」


 やばい!盛大な勘違いをさせてしまった!とんでもなく面倒な事になる前に誤解を解かないと!


「嘘です!王女が誘ったのは嘘です!嘘をつきました!」


「そんなのこんな状況で信じられるか!!ひ、姫様がついに初恋を!!こ、これは上司に報告しなくては!さらばだドレスコード子爵!姫様を王城に送りとどけてくれ!なに、そういう関係ならやぶさかでは無いだろう!」


「ちょ、ちょっと待ってくれ!待ってください!たのむ!お願いします!頼むから〜〜〜〜!!」


 俺の必死の制止の声を無視して、護衛の男は走り去ってしまった。

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コミックス2巻6・26日に発売ですよろしくお願いします>
― 新着の感想 ―
[一言] 嗚呼、ナルホドね、そんなこんなでおわコン王家に目をつけられちゃったのね
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