派閥決めたよ
毎日投稿2日目です。
週明けの学校。初めての授業。かったるい事この上なし。
俺の想いとは反対に、先生が、1時間目から声を張り上げ、熱心に授業をしている。
想いに応え、真面目に聞いている生徒はどのくらいいるのだろうか。ぐるりとあたりを見回すと、机に突っ伏して寝ている生徒や、机に向かい合っている生徒の姿。
やはり、俺の気持ちが普通なのだろう。
彼らに見習い、自分の世界に入る。
結局、昨日、父を説得することは出来なかった。父の意思は固く、本当に頑固で、どうしようもなかったが、ハート家に滞在してくれるなら、それはそれでいいか、と今は思っている。
というのも、ハート子爵と父の仲が良いからとか、そんな曖昧な理由ではない。そもそもの話、ハート家の子息が長男を除いて、全てウチにいるのだ。余計なゴタゴタを起こしたくないのは、ハート子爵も同じだと思うからな。
前王家の宝具を自慢したい父の気持ちは、全くもって理解出来ない。けれどまあ、父がしたいように放っておいても良いだろう。
ただなあ。ユリスにわざわざ逃走経路を確保してもらったのに、無駄になったって言わなきゃなあ。
自然、気持ちが重くなる。
一体、どんな反応するだろうか。まあでも、怒りの矛先が兄や父に向いたらそれはそれで、気分がいいや。
そう思い、気分を晴らしていると、授業を終える鐘が鳴り、先生は教室から出て行った。すると、クラスメイトたちは、溜め込んだ息を吐いて、各々で行動を取り始める。
俺も、かったるさから解放されようと、無理に大きく伸びをした。そして、何しようか考える。
誰かと話に行こうか、トイレに行こうか、それとも次の勉強の予習をしようか。
俺は初めの選択肢が頭の中に出てきた事に口元を緩ませた。
模擬戦の後、俺は不本意ではあるが、みんなから英雄扱いされるようになった。初めは、嫌で仕方がなかったが、そのうち慣れてきて、最近では悪くないと感じている。
というのも、普通に話せるくらいの友人も増え、たくさんの学生と交友関係を持つ事に成功したのである。そして、皆んなとの会話から、沢山の事情を知った事もオラール家につく判断基準に入れることができた。
思い返すと、急に皆と話したい欲に駆られ、意気揚々と腰を上げたその時。
「やあ、クリスくんいる?」
声が聞こえた方を見ると、開いた扉の外に、ユスクがいた。ユスクは、俺を見つけたのか、大袈裟に手を振って、歩み寄ってくる。
「やあやあ! 聞いたよ! クリス君! アルフレッド様の派閥に入るんだって?」
ユスクは朗らかな笑みを浮かべ、明るい調子でそういった。しかし、教室内は急に凍てついた。
それも当然の話。みんなから英雄扱いされている男、さらには当主が与する派閥を決めたのだ。王族側、宰相側に関わらず、重大な情報であることは間違いないのだ。
俺の予想通りに、クラスメイトは皆が皆、俺に目を向け、聞き耳を立てている。そんな様子を見て、ユスクは抜けた声を出す。
「あれ? クリス君、言ってなかったの?」
アルフレッドと会話したのは休日の前日。休日を挟んで今日なので、言う暇はなかった。というか、そもそも、自分から言うものでもないだろう。
ふと、考えがよぎる。
このタイミングでユスクが話に来たということは、俺がアルフレッドの傘下だという事を周囲に広める為に来たのかもしれない。
意図が正確に読めず、なんて答えようか悩んだが、すぐに解決する。
ユスクはそんな打算を持って俺に接するようなやつではない。普通に話に来ただけだろう。それに、俺がアルフレッドの傘下に入り続けることは変わらないから、正直に答えよう。
「うん。そんな自分から言うことでもないかと思って」
俺がそう言うと、クラスメイトの雰囲気が変わった。それぞれで、喜びや、戸惑い、悲嘆、様々な感情で教室内がごちゃ混ぜになる。しかし、沢山の絵の具を混ぜた時のように、次第に室内は暗い雰囲気で満たされていく。
原因は何かと見渡すと、ミスト、クレア、アリスの三人が際立ったオーラを放っているせいだとわかる。
クレアは、暗い雰囲気を醸し出し、俯いてボソボソと独り言を呟いている。ミストは、自分に腹がたつのか、目に激情の炎を灯し、唇を噛んでいる。アリスに至っては、白目を向き、ポカンとあいた口から魂が抜け出しているように見える。
ミストはわからないが、アリス、クレアは、俺と敵対することが決まり、状況的にも精神的にも苦しいのだろう。
俺も情がないわけではない。未だかつてない罪悪感に胸が締め付けられ、息が苦しくなる。できることなら戦いたくはない。だが、ウチを守るための選択として、絶対に間違っていないのだ。
「あら、クリス君の影響って思ったより大きいんだな……これは、もっとアピールすれば仲間が増えるんじゃないか?」
ユスクがそう尋ねて来た。
「いや、そんなこと……」
アリス、クレアを気にして、そうユスクを止めかけたが、途中でやめる。
クレアやアリスに情はあるが、だからと言って、俺はオラール家の派閥の一員なのだ。ここで、情に負け、協力しないわけにはいかない。生き残る上でも協力しなければならない。
そこで、ある考えが思い浮かぶ。
宰相側の味方を増やし続けて、圧倒的な格差になれば、王族がすぐ降伏し、クレアやアリスと戦わずに済むかもしれない。
王族のアリスはどうなるのか不安はある。しかし、アリス以外の王女は、全て国外の貴族に嫁いでいるため、宰相も王位を継ぐのにアリスと婚姻を選ぶだろう。王の命は保証できないが、アリスの命なら保証できる。
そう考えると、不意に言葉が出た。
「俺はオラール家につく事にしたよ。皆んなも俺がつくということの意味を考えてみてくれ」
俺がそう言った瞬間、二人がバタンと倒れ込んだ。





