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CHERRY BLOSSOM ~チェリーブロッサム~  作者: 悠里
第七章「Standing position」
65/83

065 代理会談

 目覚めた時の気分は決して良くなかった。

 四肢はしこりがあるかのように重く、下腹部はシクシクと鈍く痛みを訴えている。

 少し力を入れるだけで腰や肩も痛むし、昨日さんざん泣いたせいか鼻の奥はツンとしてる。頭も、頭痛こそしないけど十分に重い。


 ただ、気持ちだけはスッキリとしていた。

 昨日いろいろとあった割には、それはそれとして納得してるのかな?

 喉元すぎれば……とか言うけど。

 まぁ、それもあるんだろうけど。


「……コレのおかげかな」

 すぐ横にある薙の寝顔を見つめる。

 子どもみたいな顔で眠る薙は、時折、むにゃむにゃと言葉にならない寝言をつぶやいて満足そうに笑う。

 なにか良い夢見てるみたいだな。


 薙を起こさないように布団から抜け出す。

 おっと、チェリルも起こさないように気をつけないと。


 床には薙のために準備された布団。案の定、使われなかったんだけど……。


 窓際に近づいてカーテンの隙間から外を覗く。

 薄暗い空と見慣れた風景。

 夜にしては明るく、朝と言うには暗い。

 その微妙な時間帯の景色は、なんとなく……なんとなくだけど、今の自分にぴったりだと感じた。




「ほら薙。起きて」

 制服に袖を通しながら、未だにベッドで寝ぼけてる薙に声をかける。

 しかしなぁ……制服のまま寝ちゃってるし。

 あ~ぁ、制服シワになっちゃってるよ。

 アイロンかけてあげないとダメだな。


「薙?そろそろ起きないと……」

 スカーフをきゅっと絞って薙を見下ろす。


 ……ふふふ。

 どうしてやろうかな…。

 そう考えて、右手をワキワキと動かす。

 やっぱり、くすぐりまくりの刑だな。うん。


「……にゃ!?」

 手を伸ばすと、なにかを察知したのか、薙が掛け布団から飛び出した。


 ほほぉ。身の危険は敏感に察知するなぁ相変わらず。


 微睡んでいたチェリルが、跳ね上げられた掛け布団の反動で空中一回転。

 偶然に元のポーズで着地してパチクリと瞬きしている。


 薙は、そんなチェリルの様子には気づかず、寝ぼけまなこのまま壁に背を付けて警戒心むき出しで視線を左右に配る。


 あはは。浅く早い呼吸を繰り返す様は、本当に野生動物みたいだ。


「おはよ。ちゃんと起きたみたいだね」

「……お、おはよ? なんか……した?」

 不審な視線の薙。


「うん。まだしてないよ」

「まだしてないって………いいか…ふぁ~ぁ」

 薙はぽりぽりと頬を掻くと、大きく伸びをしてあくびをする。


「制服のまま寝ちゃダメって言ったのに」

「あぁ~」

 返事とも、ため息ともつかない声で制服を見下ろす薙。

 シワになった部分を引っ張ってみてるが、当然それで消えるわけもない。


「いっか……ふぁぁ~」

「よくない。ほら、制服脱いで。アイロンかけるから」

「いいって。ちょっとシワがあるだけじゃん。メドイよ」

「メドくない。ほら脱げっ」

 後退る薙の制服の裾を掴んで脱がしにかかる。


「わ、わ、わっ。やめ、やめれっ」

 四つんばいで逃げようとする薙の背中に馬乗りになる。


「大人しく脱ぎなさい。アイロンかけちゃうから」

「エッチッ!スケベッ!」

 上着の裾をめくると、ますます抵抗がはげしくなった。


「子どもは大人しくしなさいっ」

「うっせー!子どもなのか大人なのかどっちかにしろっ!」

「その大人じゃないって。ほらっワガママ言わないのっ」

「くそっ!おっぱい大きいからっていい気になってんなよっ」

「む、胸は関係ないだろ…」

「大体だな。一年前はあたしの方がおっきかったんだからなっ」

 ……一年前は確かに胸ほとんど無かったけど…。


「それとこれと何の関係が?」

「とにかくっ一年後には追いつくっ! だから子ども扱いはヤメれ!」

 ビシィっと指さす薙。

 でも俯せで振り返りつつのポーズなのでいまいち恰好ついてない。


「はいはい。待ってるよ。ほら~そろそろ観念しろ」

「わわっさくら!おまえは怪我してんだから怪我人らしくしてろっ」

「なら面倒かけずに素直に脱げってば」

「どうでもいいだろ。こんなの」

「ダメ。女の子なんだから身だしなみには気を使いなさい!」

「そ、そんなのは偏見だっ。男の価値観の押しつけだっ!」

「押しつけで結構。でも、男女は関係なく正論だからね」

「ど~でもいいじゃんか。どうせ今日学校行かないし」

「……行かない?」

 制服の上着を脱がしたところで動きを止める。


「あ、うん。今日はさくらに付き合うよ」

「ありがと……って?え?」

「本調子じゃないし、なにかと心配だからさ」

 薙はへへっと照れ笑いする。


「いや、学校行くだけだし大丈夫だから」

 そんなに頼りないか俺? 昨日の今日じゃ無理もないかもしれないけど……。


「その学校でトラブったんだろ?」

「それはそうだけど、今日はコノエもいるし」

「このえ?」

「あ。九重さんのこと。昨日言ったように名前が紛らわしいから」

 今にして思えば、卒業間際に名前の呼び方の提案をされたのは、同じ学校に進学するからだったのか。

 あの時は変だと思ったんだけど、なるほどね。


「……あっそ」

 面白くなさそうな顔の薙。


「その『コノエ』も信用できないから言ってんの」

「信用できないって…どうして?」

 そういや昨日も反発してたな。


「な、なんとなく。勘だよ勘。女の勘ってやつ」

「いや、勘だけで判断するのもどうかと思うけど……」

「いいか? あいつが動くときは必ず裏があるんだって。逆に言えば目的がないと動かないヤツが、さくらの学校に入学してることがそもそも怪しいじゃん。今回の件にしたって、あの女が助けに出てくるタイミングがあいつの都合によすぎなんだよ。あれで疑うなって方が無理だと思わねぇ?」

「……勘ぐりすぎじゃない?」

 それだけで疑うのもどうかと思うんだが。


「確かに、まだ決めつけれるほどの証拠はないけどさ。とにかく信用だけはするなってこと。向こうも利用しようとしてるんだろうし、こっちも利用するくらいの心構えじゃないと」

「ん~薙がそこまで言うなら……わかった。私もコノエのこと、まだよく知らないしね。そのことを頭においておくよ」

「うん。で、まぁ今日はあたしもついてって監視してあげる。ね? だから制服は別にどうでもいいんだって」

 顔だけこちらに向けて屈託無く笑う薙。


「でも、学校が休みなわけじゃ…ないよね?」

「えっと……その……」

「ないよね?」

 マウントポジションで見下ろしたまま笑顔で問いかける。


「……そ、創立記……ね……」

 言いかけた薙の顔が強ばる。


「な・い・よ・ね・?」

「は、はい…」

「なら、ちゃんと学校に行くこと」

「でも今からじゃ遅刻確定だし」

「二限目には間に合うでしょ?」

「でもぉ~~」

「行・き・な・さ・い」

「はい……」

 ついに諦めた薙は、がっくりと弛緩した。






「さくらちゃん……大丈夫なの?」

 リビングに顔を出すと、挨拶もそこそこに母さんが心配そうに表情を曇らせる。

 昨日の今日だけに少し気恥ずかしい。


「あ、うん……。ごめんね、心配かけて。もう大丈夫」

 照れから苦笑いで答える。


「あ~だめだめ。こいつ『大丈夫』って聞くと『大丈夫』としか答えないから」

 制服の代わりにパジャマを着た薙が後ろから口を挟む。


「うるさい」

 余計なことをいう薙の頭をポカリと小突く。


「痛~い。なにすんだよっ」

「薙は顔でも洗ってきて。その間にアイロンかけちゃうから」

「ちぇっ。横暴だー。暴力はんた~……ふぇ?」

「昨日、人のこと殴ったのは誰でしたっけねぇ?」

 人差し指で薙の口を広げる。


「あ、あははは。ひーひゃん。ほーふんはほほはほ」

「いいから。さっさと行ってこい」

「へ~い」

 薙は頭の後ろで手を組んで洗面所へと向かった。


 さて。手早くアイロンかけちゃおう。






「薙ちゃんって…いい娘ね」

 アイロンをかける俺を微笑みながら眺める母さん。

 上着を裏返して、シワがひどい部分にスチームをあてる。


「いい娘の定義にもよると思うけど……そうだね。うん。いい娘だと思う」

「ふふふ。さくらちゃんの親友なんですものね」

「それは……いい娘の理由になってないと思うけど」

「そぉ? 母さんには、それが十分な理由だと思えるんだけど」

「まぁ……なんてゆ~か……ありがと」

 さ、さてと、次はスカートを…。


「どういたしまして。今朝はどう? 食欲ある?」

「あ、うん……昨日のスープまだある?」

「あるわよ。ちょっと待っててね」

 母さんが再びキッチンに姿を消す。






「おっ待たせ~。今日も可愛い薙サマ降~臨~」

 入れ替わるように薙が戻ってくる。


「ちょっと待って。あとスカートだけだから」

 斎女はプリーツがないタイプで助かった。

 朝にやるにはちょっと時間かかりすぎるからね。


「上、もういいの? んしょっと」

 パジャマの上着を脱ぎ出す薙。


「待て待て。2階の部屋で着替えてこい」

 いきなり着替え出すなよ。


「え~メドイよ~」

「ひとん家のリビングで不用意に着替えるなって。エチケットとしてもマナーとしてもダメ」

 まったく……ひとり暮らしだと気にしなくなるものなのかな?


「もう~さくらってばお堅いんだから」

「はいスカート。いいから二階に行く」

「へいへい」

「返事は『はい』で一回!」

「は~い。もう~昨日はあんなに可愛かったのに…」

「……ギロッ」

「ん、んじゃ……ちゃちゃっと着替えてくんね」

 状況が悪くなったと感じた薙は、制服を抱えてあたふたと二階へ向かう。


 はぁ……どこに居ても薙は薙なんだな。

 わかってたことだけど。






「おはよう。ミキちゃん、ナギー」

「げ……」

 隣の薙が嫌そうに顔をしかめた。


 昨日の話の通り、最初の曲がり角の先で待っていた制服姿の九重さん……コノエが笑顔で手を振ってくる。

 待たせちゃ悪いと思って、少し早めに家を出たんだけど。


「おはよう。悪いねわざわざ」

「いいんですよ~。私とミキちゃんの仲なんだから。ね?」

 コノエが、少し前のめりになってウインクする。


「けっ。顔見知りなだけだろ……」

「ナギーは黙ってて。私とミキちゃんは、これから薔薇色の高校生活を三年間送るんだから。これからドンドン親しくなるのよ」

「さくら。コイツにビシッと言ってやれよ。迷惑だって」

「薙。言い過ぎ」

「いやいや、そんなこと……ちぇっ」

 軽く睨むと拗ねたようにそっぽを向いた。


「ふふ。ナギーのこの態度はいつものことだからいいのよ。それより、さぁ乗ってくださいな」

 コノエが後部座席のドアを開けてくれる。


「へぇ。ベンツとかロールロールじゃないんだ」

「どぉ?可愛いでしょ」

 コノエはふふっと微笑んでシルバーカラーの軽自動車のボディを撫でる。

 間違いをさりげなく無視するあたり、薙の扱いは慣れてるらしい。


「響んトコはリムジンだっけ? っつ~かベンツとかリムジンとかってどう違うの?」

「……俺に訊くな」

 縁ないんだから。そういう車には。


「響ちゃんは確かにリムジン使ってる時があるね。ちなみに、リムジンは対面式のシートがあったりする長~い車のことで、車種はベースとなる車によって変わるのよ。主にGMのキャデラックかフォードのリンカーンをベースにしてることが多いかな。響ちゃんのはリンカーンベース。ふわふわした乗り心地が気に入ってるらしいのよ~」

「へぇ~」

 コノエの説明に、珍しく薙が素直に感心する。


「メルセデス・ベンツは、ドイツのプレミアムセダンと呼ばれる重厚な車。ロールスロイスは超高級車の代名詞になっていて、飛行機の中にも『空飛ぶロールスロイス』とか比喩されたりするのよ。でも、今ではBMWが買収しちゃってて、一口には説明しにくい状態かな」


「……マニア?」

 話の途中で飽きたらしい薙。

 超熱しやすく超冷めやすい薙は興味の伝導率が高すぎで困る。


「あら。これくらい一般常識よ~」

「さくら知ってた?」

「だから俺に振るな」

 知らないってば。


「さぁさ、乗って乗って。続きは車の中で。ね?」

「いや。その話もういいし」

 つれなく断りつつ乗り込む薙。

 それに続いて後部座席に乗る。

 運転席には女性が座っていて、目が合うと控えめな笑顔で会釈してくれた。


「すみません。お手数かけます」

「あら。気にしないでミキちゃん。莉子(りこ)さん、出してちょうだい」

 リコと呼ばれた運転手?さんが、ウインカーを出して発車する。


「あ、コノエ。悪いけど薙も送ってあげてくれないかな?」

「いいですよ~。斎女に直でいいのよね」

「うん。お願い」

「いや、あたしは……むぐ……」

 なにか言いかける薙の口を塞ぐ。


「ん?」

「なんでもない」

「むぐぐ……れろれろ」

「うわっ舐めるな!」

 口を塞いだ手のひらがくすぐったい。


「ふふ。見たか、あたしの舌技を」

「……なんに使うんだよ。そんな技」

「それは……。さくらを舐め殺す時に使う!」

「あ~。それいい。私も。私も!」

 助手席から振り返ったコノエが手を挙げる。


「べぇ~~。ダメダメ。免許皆伝しなきゃ参加資格無し!」

「師匠っ! ぜひ弟子にしてください!」

「ダメだダメだ。ワシは弟子なぞ取らん」

「そこをなんとか!」


「……(平常心平常心…)」

 俺は流れる景色を眺めながら呪文のようにつぶやいていた。







「じゃぁ。ちゃんと学校行くんだよ」

 校門の前で車から降りた俺は、助手席に乗り換えた薙の頭を窓越しに撫でながら言い含める。


「……は~い」

「すみませんリコさん、薙のことお願いします」

「はい。かしこまりました。いってらっしゃいませ」

 リコさんは柔らかく微笑んで、コノエと俺に頭を下げた。


 薙に手を振りながら、コノエと並んでゆっくりと発進する車を見送る。


「さて」

 いつもより20分ほど早い時間。

 まだ、通学する生徒の姿はほとんどない。

 人通りが少ないことに、ちょっとだけホッとする。


「ミキちゃんは、このまま保健室に行って待ってて」

「?」

「神野先生に被害届の件とか説明してて。学校側との交渉は昨日言ったとおり私に任せてね。大事にはしないように話してみるから」

「……うん」

「ミキちゃんも顔、出す?」

 少しだけ眉を曇らせるコノエ。

 ……心配してくれてるんだろう。


「あの五人も居るの?」

「うん」

「なら……やめておく」

「ん。わかった。さ、行きましょ?」

 手を引かれるままに歩き出す。


 正直、逢うのが怖い……のもある。


(でも…)

 形容しがたい感情とともに、ぎゅっと左手の指を握りしめた。








「それでは、ご了承いただけた。と思って構いませんね?」

 シンっと静まりかえった生徒指導室に九重櫻子の声が発せられる。


 校長、教頭、生徒指導を担当する学年主任、そして五人の男子生徒達。その八人は押し黙って櫻子の話を聞いている。

 櫻子は神妙な顔つきで、その八人を見渡す。五人の生徒は一様に俯き、教頭と主任は気むずかしげに手を組んで机を睨んでいた。


「それで……大丈夫なのかね?」

 沈黙を守っていた校長の額に汗が流れる。


「もちろんです。今回の件を公にしたくないのは、被害者である彼女の望みでもあります。それは学校側としても同じだと思います」

「うむ……だが……」

「ご心配なく。校長先生方や学校にご迷惑はお掛けしません」

 櫻子は容姿の幼さに似合わぬ落ち着いた物腰で微笑んだ。


「それに、この事については、こちらの五人の加害者……失礼。五人の生徒たちにも納得してもらっています。わたくしが責任を持って指導、更正いたします」

「しかし、君が指導すると言っても……」

 苦い顔で生徒指導主任が異を唱える。


「有塚先生のご懸念は最もです。わたくしのような若輩者に任せるとなれば、そのお気持ちは無理もないものだと思います」

「……」

「だからこそ、有塚先生には後見人として見守っていただこうと思っているのですが」

「後見……人」

 学年主任の有塚が少し驚いた表情でつぶやく。


「はい。わたくしだけでは何かと至らぬ点もあると思いますし、生徒指導主任としての監督指導をお願い致したいと考えております」

「それは……もちろん」

「ありがとうございます。先生にはしばらくご静観いただき、この五人の素行が改善されているかのチェックをお願いします。もし、改善の余地が見られない時は、先生のご判断で対応していただいて構いません」

「……校長。それでよろしいですか?」

 主任の問いに校長は重々しく頷く。


「わかった。しばらくは見守るだけにしておこう。しかし、手に余るときには、すぐに相談にくること。いいかね」

「はい。ご配慮ありがとうございます」

 櫻子は着席のまま優雅に目礼する。


「では、先ほどお話しした通り、今回の件については他言無用でお願いいたします。謹慎その他の公式な処分は一切なし。あくまでも『事件そのものが無かった』ものとして対応してください」

「それは……波綺くんも……」

「大丈夫ですわ校長先生。彼女はまだ気持ちの整理がついていないので、この場には出席できませんでしたが、わたくしが全権を委任されています。委任状は先ほどお見せした通りです」

「いや、それならいいんだ。確認まで……ということでだね」

「はい、わかりました。それでは、わたくしは彼女に報告しなければなりませんので、これで失礼致します」

 立ち上がった櫻子が一礼する。

 そのまま退室しようとドアに手をかけた所で立ち止まって振り返った。


「それと、あなたたち五人は、放課後、掃除が終わったらこの場所に集合してください。いいですね?」

 微笑を浮かべた櫻子の言葉に、五人の男子生徒たちは無言で頷く。


「返事は、はっきりと喋りなさい」

「……はぃ」

 ぼそぼそっとした声を聞いて櫻子が薄く笑う。


「……では」

 男子生徒たちは、なにか言われるのかと思って身構えたが、櫻子はそのまま笑みを崩さぬまま立ち去った。


「……君たちも授業に戻りなさい。九重さんの申し出により処分はしないが、それでも君らのやったことが許されたわけではないことを肝に命じておきたまえ」

 校長の言葉に、男子生徒たちは、うなだれたり反抗的な視線を返しながら退室していった。

校長弱い(確信)

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