廃墟ホテルでの邂逅
光だ
最初に感じたのは瞼の向こうから視界を照らす小麦色の光
次に感じたのは肌を覆うボロボロの布切れ
感触に反してとても優しいフローラルな香りがした
迫る眠気に負けそうになるも 強引に瞼をこじ開ける
最初に視界に入ったのはジメジメと水が滴るヒビ割れたコンクリートだった
土の腐った臭いが鼻につき不快感に苛まれる
周りを見渡せば、その殆どが砂利で覆われ自分が寝ている所だけ形の整った石畳が置かれている状況だった
「あ、起きた!」
砂利の中、黒い拳銃をハンカチで丁寧に手入れする可憐な女の子がそこにいた
美しい黒髪のパーマに金髪のメッシュが除き、一目見ただけで工芸品の様な品の良さを感じさせる
彼女の着る服もまた、髪の毛同様に漆黒の生地がベースとなっておりそこに金箔の刺繍が入っている
その服はドレスとロングコートを合わせた様なデザインの軍服だ
上着は重かったのか乱雑に床に放り捨てられ、その上には服とは対照的に手入れの行き届いた純銀の装飾品が並んでいる
よく見れば彼女は薄い肌着しか身に付けておらず、可愛らしい黒いサンダルを履いており風景に反してとてもラフな格好と言える
そして何より目を引くのは
異常な程に紅く染まった悪魔の如き両眼だ
生気を感じさせない真紅の邪眼の裏から発せられる、しっとりと潤う滑らかな声は余計に彼女を不気味に仕立て上げていた
その横から突き出る僅かに尖った耳が彼女が純粋な人間でない事を裏付ける
「貴方は?」
「ラティナ!ラティナ・イエロアニスよ。見ての通りハーフエルフの女の子、よろしくね!」
手に持った独特な形の拳銃をバチンと鳴らしニコリと微笑むラティナと名乗る娘
瞳のせいでやはり胡散臭さは消えないものの、その声音と表情の裏には一才の邪念がない
見た目通りの年頃の女の子といった印象だ
もっとも拳銃片手に廃墟に棲まう半妖精が普通の娘とは些か考え辛いが
「貴方の名前は?」
「名前は、無いの…でも、そうね。ナナシとでも呼んで頂戴?」
「名無しでナナシってか!オッサンかよ!」
「オッサン…間違いでは無いのかも、ね」
「…どゆこと?貴方、まさか男?」
「そう見える?」
「ううん、どう見ても女の子だよ。それに…そのごめんね?貴方見つけた時、素っ裸だったの。だからガッツリ見ちゃった、ホントごめん」
そう言えば今身に付けている服は彼女の服とよく似た軍服だ
ややサイズが小さく、服から手首がチラつくが彼女が裸の自分に態々着させてくれたという事に間違いは無いだろう
それに身体からは甘い石鹸の匂いが感じられ、態々彼女が自分の体を洗ってくれたのだろう
ほんの少し不快感を感じなくも無いが、彼女が自分を助けてくれた事は事実と見て良いのかもしれない
「私は、どうなったの?」
「どう…と言うと難しいな。貴方は道端に倒れてたの、ニグルーシ周辺に逸れアンデッドが湧いたってんで駆除に来たの。そしたらアンデッドじゃなくて貴方がいた、まるで夢遊病みたいに何かから逃げてるようだったよ…」
最後に記憶に残っているのはあの博士に抱かれた後、アナルに肉棒を挿れられそうになった所まで
あの収容所から抜け出してそう時間は経過して居ないのだろう
その証拠に未だ股間に不快な感覚が残っている
彼女が体を清めてくれなかったらもっと酷かっただろう
それと同時に彼女に汚れた自分の身体を覗かれた事実が、徐々に心を羞恥心で満たしていく
顔が真っ赤に染まり、背中から不快な汗が溢れ出し服に籠って全身が痒くなった
「臭かったでしょ、私」
「うん、イカ臭かった」
「ハッキリ言うじゃんアンタ…気持ち悪いでしょ?こんなの」
「うーん、ちょっと良い?」
ラティナは銃をコートの上に丁寧に置き寝床へと近づいてくる
よく見れば自分より彼女の方が薄着であり、見方によっては殆ど下着姿だ
その小柄ながらに豊満な肉体は消えた股間を刺激し、その香水の裏に微かに感じる女性の香りが股を濡らす
目の前まで迫ったラティナは視線を自分に合わせてその場れ屈んだ
異常なほど顔が近く、彼女のほんの僅かな毛穴までハッキリ確認できる
「…なに?」
「抱きしめる」
突如、あまりに儚いほど小さく柔らかい肉の温もりが身体を覆った
マシュマロのような胸が肌に当たり、その先端には僅かな硬さを感じる
服の上にも関わらず感じる事が出来るのはエルフの身体故なのか、背中に回るてから彼女の頬までの全ての情報がいっぺんに脳内に流れ込んでくる
「臭く無いよ?」
「変態女」




