ちがうばしょで(ある人物のヒトリゴト)
それは品子達がいる所から離れた、遠い遠い場所。
そこに人の姿はない。
それなのにどこからともなく声だけが響く。
「おや、室さんの様子がおかしい。すごいフラフラしながら歩いていますね」
普段の室ならばありえない動きに、つい行方を見守りたくなる。
「ふふ、今度、あの動きをやって欲しいって言ったらやってくれますかね? いや、おこられるだけか」
室に襲われた女性も、なにやら同じような動きをして、彼とは反対方向へと歩き出していく。
「二人して何やってるんでしょ? 面白そうだから、もう少し様子を見ていようかな。うん、別にいいですよね」
自分はただ、面白そうかと見ているだけ。
なにせ今は、この間の壁を作る仕事と違って、別に何も頼まれていないのだから。
「それにしてもせっかく作ってあげた壁、すぐ壊されちゃいましたね。管理する奥戸の力が弱すぎるからでしょうね、きっと」
その程度の力しかなかった奥戸も、室によって片づけられたようだ。
今となっては、終わったこと。
ならば自分は次を見届けるだけ。
さしあたっての興味対象となった、室の行動を眺める。
「さて、二人が別々の方に行くならどちらの方をみてようかな? ……うーん」
ならば、知っている人間の方が面白そうだ。
「うん、室さんを観察することにしましょう。どこに行くのかな? 楽しい所だと、いいですけどねぇ」
誰に聞かれるでもないその声は、するりと虚空へ溶けていった。
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次話タイトルは「人出品子は悔やむ」です。




