第14話 忌まわしき風習(前編)
「このクエルの町から北西に向かうと大森林と呼ばれる森があります。
その中央に小さな村があるのです。
名前はコナー村。
そこに住むある少女をこの町に攫ってきてほしい。
……ええ、妙に思われるのは当然でしょうね。
英雄に人攫いを頼むなんて。
事情は……申し訳ありません。
もしあなたの口から情報が洩れてしまうと、コナー村の住民が生きていけなくなる。
あの村の者たちはまずいことをしている。
ですが穏便に済ませてやりたい。
何も聞かず引き受けてくださいませんか?
あの村は孤立した村です。
少々トラブルになったとしても決してあなたの名誉を汚すことはない、と保証します」
『で、あっさり引き受けて森の中を一人行軍中っと。
せっかく町で遊ぶチャンスだったのに!
民衆ってのは恩知らずだぞ!
助けてもらった恩なんて三日で忘れるし、ハイパーモテモテタイムはあっという間に終わっちゃうんだぞ!』
ザコルさんが僕の背後で嘆いている。
あまりのうっとおしさにため息を吐きながら僕は尋ねる。
「どうしてザコルさんは僕が女の人を抱くようにけしかけるの?」
『自分で抱けないなら、せめて人が抱いてるところだけでも見たい』
「変態ですか?」
『さらに言うなら、その光景を見て恥じらうセシリアも見たい』
『さっさと天に召されたら?』
僕とセシリアにボロボロに言われるザコルさんなのであった。
『それにしても――』
ザコルさんが話題を変える。
『コナー村、ね。
まさか、あの村がまだ残ってるとはなあ』
「えっ? ザコルさん知ってるんですか?」
『そりゃあな。
戦闘力もなければ学もない俺がベントラやナラ爺と並べて祀り上げられてるのはフットワークの軽さにある。
ユーレミア国内の人里は大抵廻ってるし、揉め事には欠かさず首突っ込んでる」
「じゃあどういう村なんですか?」
『よくある田舎の村さ。
住民同士が少ない資源を分け合って生きているといえば聞こえはいいが……まあ、お前が気にすることじゃない』
言葉を濁すようにしてザコルさんは説明するのをやめて、関係ない雑談に話を切り替えていった。




