第56話:決着の時
「顔色が変わったな。やっと500年前の事を、思い出したのだな」
ニヤリと笑った魔王。
「ええ、皆様のお陰で思い出しましたわ。ですが、私たちがこの力を使うという事は、あなたが封印されるという事なのですよ。それなのに、どうしてそんなに嬉しそうな顔をしていらっしゃるのですか?」
「俺は相手が強ければ強いほど、燃える男だからな。お前は歴代の中で、群を抜いて弱いからな。面白い事を教えてやろう。俺を封印できるのは、神から与えられし力を持った人間のみ。
前回は騎士団長をしていたジャンティーヌ、そして今回は、お前だ、アイリーン。お前の持つ魂は、代々俺を封印し続けていた。前回のジャンティーヌは非常に優秀で強い相手だった、歴代で一番強かったかもしれない。だが今回はどうだ、歴代で一番弱い奴ではないか…
これでは俺が全く楽しめないからな。だからお前の仲間も生かしてやったんだよ。俺が楽しむためにな。
アイリーン、お前の魂は、神に選ばれし者なのだ。だから今回俺を封印しても、次生まれ変わったらまた俺を封印しなければいけない。分かるか?お前の戦いは、永遠に続くんだよ。それがお前の宿命だ!それからお前の隣にいる男も、お前と同じ第二王子としての宿命を背負っている男だ。
その男もまた、次に生まれ変わってもまた第二王子として、魔王討伐の任務を与えられる宿命を背負っているのだよ。
もちろん、この国に生きる人間たちも一緒だ。たとえ生まれ変わってもまた、俺が復活すれば戦いに駆り出される。それの繰り返しだよ。
分かるか?いくら俺を今回封印できたとしても、次に生まれ変わった時には、また同じ事の繰り返しなのだよ。本当に哀れな奴らだな」
そう言って声を上げて笑っている魔王。
要するに、今回魔王を封印できたとしても、次に生まれ変わった時は、また魔王との戦いが待っているという事なのね。私もジルバード様も、そしてここにいる皆も。
「魔王さん、ベラベラと色々と話してくれて、ありがとう。あなたのお陰で、尚更覚悟が出来ましたわ。さあ、おしゃべりは終わりにしましょう。皆様、どうか私に力を貸してください!」
「「「「もちろん(ですわ)」」」」
私は確かに、歴代の中で一番弱いかもしれない。弱くてネガティブな性格で、本当は誰一人守れないのかもしれない。前世のジャンティーヌには、何一つ勝る物はないのかもしれない。
それでも私には、こうやって共に魔王と戦ってくれる仲間たちがいる。彼らの為にも私は絶対に、負けない!私の中に眠る魔力よ。どうか私に力を貸して!
お腹の中から、溢れんばかりの魔力が沸き上がって来る。そして
「皆様、今ですわ!!」
今までに感じた事のない…いいや、500年前、確かに感じたものすごいエネルギーが力となり、一気に魔王に向かって放出される。
その瞬間、魔王の顔が一気に険しくなった。
「お前…一体どこにそんな魔力を…前回のジャンティーヌより魔力が…まずい…」
「今更焦っても、もう遅いですわ。少し私たちを舐めすぎた様ですね。さようなら、魔王様」
「くっ…まあいい、また500年後にまた会おう、アイリーン。今回は手加減してやったが、次回はもっともっとお前を追い込んで、絶望のどん底に突き落としてやるからな!!!今日の事を、絶対に後悔させてやるから!!」
私達が放出した大きな光の魔力が、魔王を一気に包み込んだ。次の瞬間、ものすごい爆発音と爆風で、私たちも一気に吹き飛ばされたのだった。




