表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もう泣き言はいいません!愛する人を守るために立ち上がります  作者: Karamimi


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/56

第55話:忘れていたあの時の気持ち

 魔王の膨大な魔力が襲い掛かって来たのを、必死で止めた。確かに魔王の言う通り、今の私では魔王に勝てない。


 私の持つ全ての力を出しているはずなのに、どうして魔王は顔色一つ変えていないのだろう。隣では必死にジルバード様も戦ってくれているのに。このままだと、ジルバード様の魔力も尽きてしまう。


 不安と焦りが、一気に私の心を覆いつくしていく。


 その時だった。



「アイリーン様、落ち着いて下さい!グリム様はご無事ですわ。私が必ずグリム様をお助けします。ですから、アイリーン様は魔王との戦いに専念してください」


 そう叫び、すぐに兄の元に向かってくれたのは、ルリアン様だ。さらに


「アイリーン様、あなた様とジルバード殿下お2人に、これ以上ご負担をかけたりはしませんわ。私どもも微力ですが、援護させていただきます」


「カミラ様、お怪我はよろしいのですか?無理をなされたら…」


「ルリアン様が治してくださいましたから、大丈夫ですわ。それにこれしきの事で、倒れている訳にはいきません。そうでしょう?ミミア様、アイリス様」


「ええ、もちろんですわ。私は500年前、銀の龍にやられたせいで、早々に離脱してしまいましたから。今回こそは、魔王と戦いたいと思っておりましたの」


「あら、奇遇ですわね、私もですわ。アイリーン様、私たちも500年前の記憶、取り戻しましたわ。さあ、500年前の借りを返させていただきましょう」


「ミミア様、アイリス様も…ごめんなさい、私、弱くて…ジャンティーヌの様に、強くなくて…私では、魔王には勝てないわ…」


 私はきっと、魔王には勝てない。だって、こんなにも弱いのだから…せっかく皆が私と共に戦ってくれているのに、どうして私はこんなに弱いのかしら?もう二度と、大切な人を失いたくはないのに…


「アイリーン様は弱く何てありませんわ。ジャンティーヌと同じくらい、強くて優しくて、素敵な女性です。とはいえ、アイリーン様だけに、これ以上負担をかけるつもりはありませんわ」


「そうですわ、皆で魔王を倒しましょう」


「皆で魔王を倒す?」


「ええ、そうですわ、魔王を倒して、皆で王都に戻りましょう。私、王都に戻ったら素敵な殿方を見つけますわ」


「私は、お菓子を思いっきり頬張りたいですわね」


「私は可愛い弟と妹たちを、目いっぱい愛でたいですわ。その為にも、こいつを倒さないと」


「俺も魔王を倒して、アイリーンと早く結婚したいな…」


「皆様、ジルバード様まで…」


 皆の言葉が、私の心の奥底に眠っていた何かが一気にあふれ出した。


 “魔王を封印する事が出来たら、両親や国中の人たちに、命を懸けて戦ってくれた戦士たちの話をしよう。そして彼らの弔いを、私の手で自ら行いたい。


 無念の死を遂げた皆の為にも、魔王を封印して大好きな両親の元に戻ろう。今もなお、戦ってくれている人たちの為に、恐怖の中必死にこの地にいる、ギルド殿下の為に、無念の死を遂げた仲間たちの為にも。そして何よりも、自分自身の為にも


 そうよ、ここで負ける訳にはいかない。この地に生きる人たちの為に、私は必ず勝つのよ“


 500年前、悲しみと怒りに支配されていたジャンティーヌ、でもそんなとき、今にも泣きそうな顔で、必死に私を応援してくれているジルド殿下が目に入ったのだ。


 その近くには、無残にも命を奪われたセレス、クレアナの亡骸も。


 その時、なぜだか分からないが、急に悲しみや怒りがスーッと消えた。そして魔王を封印した後の未来のことが、一気に私の心を満たしだしたのだ。


「そうよ…悲しみや怒りの気持ちでは、魔王には勝てない。皆様、大切な事を思い出させてくださり、ありがとうございました。私は魔王を倒して王都に戻ったら、純白のウエディングドレスを着て、結婚式を挙げたいですわ。


 それに皆様と一緒に、お茶を楽しみたいです。500年前の思い出話でもしながら」


 それからもし私に子供が生まれたら、今日の事を話したい。立派に戦った仲間たちの話を、沢山したい。皆が頑張ったから、無事魔王を倒すことが出来て、今平和に暮らせているのよ。


 もちろん討伐部隊だけでなく、王都で今も戦ってくれている全ての人たちのお陰で、平和な国が戻って来たのよって。


 その為にも、今やらなければいけない事は!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ