第53話:大切な仲間たちと共に
「500年前も今も、あなた達はちっとも変っていないわ。まさかあなた達も、この世に転生していただなんて」
かつての親友たちも、この場に転生していたのだ。最初は本当に仲が悪くて、本当に大嫌いだった。でも、あの事件をきっかけに、少しづつ仲を深めていけた。
そして、命を懸けてでも守りたいほど、大切な存在になったのだ。500年前、目の前で命を落としていった彼女たちの姿。今でも目に焼き付いている。あの時私に、もっと力があれば…彼女たちに申し訳なくて、胸が張り裂けそうだった。
あの時の想いが、今一気にあふれ出し、困惑する彼女たちを抱きしめた。
「私の大切な親友。500年の時を超え、再会できるだなんて。私、ずっとあなた達に謝りたかったの。守ってあげられなくて、本当にごめんなさい。今度こそ、私があなた達を守るから」
一気にあふれ出す涙を止められず、彼女たちを抱きしめながら泣いた。
「泣かないでください、アイリーン様。正直私共が、英雄ジャンティーヌ様を支えた隊長たちだなんて、にわかに信じられないのですが…それでもあなた様がそうおっしゃるのなら、私は信じますわ」
「私もです。アイリーン様。どうか謝らないで下さい。きっとあなた様の傍で戦えて、前世の私は幸せだったでしょうし」
「そうですわよね。だって伝説の英雄、ジャンティーヌ様の傍で戦えたのですもの。こんな名誉なことはありませんわ」
「今だってそうです。アイリーン様、あなた様だって前世で命を落としたのでしょう。今度こそ私たちが、あなた様をお守りいたしますわ」
「皆様…」
4人が私に向かってほほ笑んでくれる。前世の記憶がない4人。見た目も全く違うけれど、それでもやはり、彼女たちは間違いなく私を支えてくれた親友たちの生まれ変わりなのだろう。
4人を見て、改めてそう感じた。
かつての仲間たちやお兄様が、私の傍にいてくれる。そして愛するジルバード様も。大丈夫、きっと勝てる!
何だかそんな気がした。
その時だった。
「きゃぁぁぁぁ」
次の瞬間、ものすごい魔力が襲い掛かって来たのだ。
「「「「「カミラ様!!」」」」
魔王の魔力を露骨に食らったカミラ様は、数十メートル吹き飛ばされてしまったのだ。急いで彼女の元に駆け寄る。
「しっかりしてください、カミラ様!」
「も…しわけ…ございませ…ん。早速…足を…」
「これ以上話さないで。ミリアン様、カミラ様をよろしくお願いいたします」
酷い傷を負い、息も絶え絶えなカミラ様の姿を見たら、一気に500年前の事を思い出す。彼女は最後まで私と一緒に戦ってくれた、クレアナだ。
そうだわ!
「危ない!アイリーン」
ものすごい魔力と魔力がぶつかり合う。魔王が一瞬で私たちの元にやって来て、今度はセレス様に襲い掛かろうとしたところを、間一髪で止めたのだ。
「貴様、さすがだな…」
「一度ならず二度までも、同じ手には引っかかりませんわ。魔王、あなたは相変わらず卑怯ですわね。混乱に乗じて私の大切な人を奪っていく…私はこれ以上、大切な人を失いたくはないのです。皆様、落ち着いて下さい。魔王はこうやって、私たちの心を揺さぶって来ます。
ですが、動揺する必要はありません。なぜなら500年前の私たちは、もっと不利な状況の中、魔王を封印したのですから。ここにいらっしゃる方たちは、500年前、私と共に戦った勇敢な戦士たちばかり。きっと今回も、勝てますわ。自分に自信を持って下さい」
500年前、既にリーナとミレスを失った私達は、魔王との戦いに挑んだ。あの時も赤い液体を飲んで、不気味な笑みを浮かべていた魔王。あの時は魔物たちに襲われ、危機的な状況に陥っていた王都の様子を見せられた。
動揺した私たちの隙をみて、クレアナが襲われた。何とかクレアナを助けようした私とセレスだったが、治癒魔法をかけようとした瞬間、今度はセレスが襲われたのだ。
酷い怪我を負ったセレスだったが、その後自分の持つ全魔力を使ってクレアナを含めた沢山の兵士たちに治癒魔法をかけ続け、魔力が尽きて命を落とした。
クレアナも最後まで私を支えてくれたが、魔王の攻撃を再び受け、命を落とした。
当時隊長だった2人も命を落とし、彼女たちの隊員たちは一時大パニックになった。逃げ出そうとするものを次々と操り出した魔王。
そう、こいつは色々な手を使って、私たちを混乱させてくるのだ。




