第49話:敵は待ってはくれません
「ああ…そうだね。それじゃあ着替えて…」
「失礼いたします!ジルバード団長、アイリーン様、大変です。ものすごい数の魔物たちが現れました」
「もう魔物たちが…分かりました。すぐに参ります。ジルバード様、敵は待ってはくれない様ですね。私達もすぐに参りましょう」
まだ夜明け前なのに、もう襲ってくるだなんて…とにかく、早くいかないと!
着替えを済ませ、急いで外に出ると、たくさんの魔物たちと騎士たちが戦っていた。既に多くのけが人が出ている様だ。
「皆、遅くなってすまない。それにしても、凄い数だな…」
「確かにすごい数ですね。500年前よりも、魔物たちが増している気がしますわ…やはり一筋縄では、行かないという事ですね」
500年前よりも、あきらかに魔物たちが増えている。早く魔王を倒さないと。
「ジルバード団長、アイリーン様、ここは我々が引き受けます。どうか先にお進みください」
「ジルバード団長、こちらです。急ぎましょう」
隊長たちが既に道を作ってくれていたのだ。
「皆様、ありがとうございます。それでは参りましょう」
隊長たちが作ってくれた道を進んでいく。しばらく進むと、見覚えのある洞窟が見えてきた。
「アイリーン様、あの洞窟ですか?」
「ええ、そうですわ。あの洞窟の中に、魔王がおります。でもその前に…」
洞窟を守るように立ちはだかるのは、金色の龍だ。その周りには、小さな金と銀の龍が2匹、こちらを睨みつけていた。
もしかしたら金と銀の龍は、番だったのかしら?それじゃああの小さな龍は…て、今はそんな事を考えている場合ではない。
「ジルバード団長、アイリーン。金の大きな龍は、俺が倒す。銀龍と同じ要領で倒せばいいのだよな?」
「それでは、小さな金と銀の龍は、私とカミラ様で倒しますわ。アイリス様は、援護をお願いいたします」
お兄様と令嬢たちが、そう申し出てくれたのだ。
「待ってください。今回は私が龍を…」
「アイリーン様とジルバード殿下は、魔王との戦いが控えているのです。どうか体力を温存しておいてください。大丈夫ですわ、アイリーン様のお陰で、倒し方は分かっておりますから」
そう言って笑顔で戦いに向かった彼女たち。騎士団で長年鍛えてきたお兄様はともかく、令嬢たちは本当にすごい。魔力量もさる事ながら、何よりも魔物を恐れない勇敢さがある。
まるでかつての…
「アイリーン、危ない!ボーっとするだなんて、君らしくないね。周りには魔物たちが沢山いるよ、気を抜いたら負けだ」
「ごめんなさい、そうですわね。皆様が頑張って下さっているのですもの。私も頑張らないとですね」
彼らが龍の相手をしてくれている間に、私もジルバード様は、魔物たちが彼らに攻撃をしない様に、補佐を行う。
そして
「ぐわぁぁぁ」
金の大きな龍と、金銀の小さな龍を倒すことに成功した。
龍たちを倒した瞬間、周りにいた魔物たちが一気に消えた。
「一体どうなっているのだ?金の龍たちを倒したら、魔物たちが消えて行ったぞ…」
お兄様が目を大きく見開き、呟いている。
「お兄様、500年前もそうでした。金と銀の大きな龍を倒した後は、なぜか魔物たちが一旦退散したのです。でも、油断は禁物です。魔王との戦いの時には、おびただしいほどの魔物たちが居りますので。
それから…」
真っすぐ彼らの方を見た。




