第31話:予想外の展開
王宮に着くと、高貴な身分の貴族たちが待っていたのだ。その中には、私に今まで散々酷い事をしていた令嬢たちの姿も。
「アイリーン嬢、今まで酷い扱いをしてしまい、本当に申し訳ございませんでした。まさかアイリーン嬢が、一時的に魔力を失っていただけとは思いもよらず…」
「アイリーン様、本当に今まで申し訳ございませんでした。今日のアイリーン様、本当に格好良くて…私、魔王の恐ろしさに恐怖で身を縮こませる事しかできなくて」
「私もですわ。あのような場面で、とっさに対応できるアイリーン様、とても素敵でしたわ。それなのに私は、散々酷い事を申し上げて、さらには暴力まで。本当に自分が恥ずかしくて…」
一斉に貴族たちが駆け寄ってきた。
さらに
「アイリーン嬢、よく来てくれたね。君には散々辛い思いをさせてしまった事、本当に申し訳なく思っているよ。そもそも君は伝説の英雄、ジャンティーヌの末裔というだけで、勝手に期待をし、勝手に裏切られたと思ったのは我々だ。
よく考えたら、君には関係のない話なのに。完全に八つ当たりをしてしまった事、国王として恥ずかしく思う」
そう言うと、陛下も頭を下げてきたのだ。
そして
「さっき貴族たちとも話した。アイリーン嬢が魔王との戦いに参加したくないというのなら、それでも構わない。魔王は1日の猶予を与えると言っている。その間に、隣国に逃げる手続きをとろう。
君には、散々嫌な思いをさせて来たのだ。これ以上、アイリーン嬢を振り回す訳にはいかない。ジルバードも1人で魔王を倒したいと言っているし」
「アイリーン嬢、今まで本当にすまなかった。散々酷い事をした私たちの、せめてものお詫びです。もう時間がありません。どうかこの国を出る準備を」
この人たち、何を言っているの?
「皆様、お待ちください。ここにいるのは、一部の貴族たちですよね。あなた達だけで、勝手にそんな事を決めていいのですか?他の貴族たちの意見は…」
「そうですね、多くの貴族は、アイリーン嬢に魔王を倒してもらいたいと考えております。ですが…我々は、今までアイリーン嬢にして来た酷い仕打ちを考えると、これ以上あなたに頼るのは違うと考えたのです」
「アイリーン様、どうかここからお逃げください。私も貴族として、戦います」
「私もです、魔物は倒せないかもしれないですが、私は治癒魔法が得意なのです。怪我をした方たちを、裏方で補佐する予定ですわ。散々あなた様をバカにし、傷つけた私たちが、逃げる訳にはいきませんから」
「皆様…」
今まで私の事を、親の仇の様に睨みつけていた令嬢たち。でも、今の彼女たちの瞳は…
「皆様、ありがとうございます。ですが私は、これでも公爵令嬢です。正直あなた様達にされた仕打ちは、許せるものではありません。ですが、私にも守りたい大切な人がいるのです。
陛下、私も魔王討伐に参加いたします。今度こそ、魔王を必ず倒して見せます。ここで魔王を、倒しましょう」
「アイリーン嬢、魔王を倒すというのは…」
「500年前の私、ジャンティーヌもなんとか魔王を倒そうとしましたが、力及ばず…封印するという形になってしまいました。その結果、私たちはいつ蘇る魔王に怯える日々を送る事になってしまったのです。
もしあの時、魔王を倒していれば、今回の様に、私を祭り上げたり落胆する事もなかったかと。その為にも私は、魔王と戦います」
真っすぐ陛下を見つめ、そう告げたのだ。
「待ってくれ、アイリーン嬢。俺は反対だ。君は散々辛い思いをして来たのだよ!それなのに、魔王と戦うだなんて。俺は君を守るために、今まで血のにじむ稽古を続けてきたのだ。それなのに…」




