第27話:魔王が復活しました
「皆様、私がこの世に誕生したからには、もう安心ですわ。魔王は私がしっかり封印いたしますので、どうかご安心を」
胸を張って挨拶をするレア様。
相変わらず口だけは達者ね…
「いいぞ、レア嬢。本当の英雄」
「レア嬢、この国をどうぞ守ってください」
あちこちからエールが飛ぶ。
「レア様がいれば心強いですわ。それに比べて…」
周りから冷ややかな目で見つめる、令嬢たち。なんとでも言えばいい。こいつらになんと言われようと、私の知った事ではないのだから。
その時だった。急に真っ暗な雲が、空を覆い始めた。そして真っ赤な雷が、あちこちに落ち始める。
周りは急な出来事に、完全にパニックだ。
「皆、落ち着いてくれ!」
急に竜巻が現れ、人々が吹き飛ばされていく。さらにおびただしいほどの魔物があらわれたかと思ったら、その中央に現れたのは…
「魔王…」
真っ黒な長い髪を腰まで伸ばし、鋭くとがった耳と瞳、黒い羽根をはばたかせているこの男。間違いない、魔王だ。
「魔王だ、魔王が現れたぞ!」
魔王が現れたことで、完全にパニックりなる人々。
お母様も恐怖からか、動けずに固まっている。
「皆、落ち着いてくれ。こっちにはジャンティーヌ嬢の生まれ変わり、レア嬢がいるのだ。レア嬢、魔王を封印してくれ」
陛下が大きな声で訴えている。
「ジャンティーヌの生まれ変わり?」
ゆっくりとレア様の方を振り向く魔王。
「ほら、レア。魔王が現れたよ。500年前の時の様に、勇敢に戦って僕を守ってくれ」
ガタガタと震えているレドルフ殿下は、レア様の後ろに隠れている。あれでも王族なのだろうか…情けない…
「わ…私は…その…」
「お前が俺の相手になるのか?」
ニヤリと笑った魔王。
「ぎゃぁぁぁ!私はただの男爵令嬢ですわ。このお方がこの国の王太子殿下です。私は関係ありませんわ」
そう言いながら、必死に逃げ出そうとするレア様だが、腰が抜けて動けない様だ。さらに恐怖からか、失禁までしている…
「レア、君はジャンティーヌの生まれ変わりではなかったのか?僕たちを騙していたのか?」
「うるさいわね!私はジャンティーヌの生まれ変わりの訳ないでしょう。あなた達が勝手に勘違いしたのよ。魔王が現れたら、安全な場所に隠れて頃合いを見て出てこようと思っていたのよ。まさか目の前に現れるだなんて…」
ガタガタと震えるレア様。
「何をふざけた事を言っているのだい?君がジャンティーヌの生まれ変わりだと、言ったのではないか。今さっきだって、私が魔王を封印してみせると、大口を叩いていたじゃないか。それなのに、今更逃げ出そうとするだなんて!とにかく、君が言いだした事なんだ。何とかしてくれ」
「そんなの無理に決まっているでしょう。あなた、王族なのだから何とかしなさいよ。そうだわ、ジルバード殿下、あなたは騎士団の団長なのでしょう。何とか…て、どうしていないのよ。
て、なに魔物たちと戦っているのよ。私を助けなさいよ」
レア様がギャーギャー騒いでいる。
あの子、前世でもあんな感じだったわね…全く変わっていなさすぎて、何とも言えないわ…あまりにも醜態をさらしている2人、ため息しかでない。
「アイリーン、ここは危険よ。逃げましょう。あなただけでも、助かって」
私の手を引き、逃げようとするお母様。既に周りは、魔物たちによって囲まれ、火の海になっていた。逃げ道など無く、周りでは人々の泣き叫ぶ声が響き渡っている。
次の瞬間、私たちめがけて、魔物たちが襲い掛かって来たのだ。




