表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もう泣き言はいいません!愛する人を守るために立ち上がります  作者: Karamimi


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/56

第12話:蘇った過去の記憶~ジルバード視点~

 “ギルド殿下、大丈夫ですよ。私が必ず魔王を倒してみせます。ですので、どうかご安心を。ほら、殿下のお好きな、お肉のサンドウィッチですわ。どうか私の分も、お食べ下さい”


 美しい真っ青な髪に、クリクリのエメラルドグリーンの瞳。あれは、アイリーン嬢か?


 騎士団の衣装に身を包んだアイリーン嬢が、まだ10歳くらいの男児に話しかけていたのだ。その眼差しは、まるで女神の様に優しい。


 “ありがとう、ジャンティーヌ。ごめんね、僕がまだ魔力をうまく使いこなせないばかりに。君にばかり負担をかけて”


 ジャンティーヌだって?それじゃあ、あの女性がジャンティーヌなのか?


 “何をおっしゃっているのですか。そんな事、あなた様が気にする事ではございませんわ。早く魔王を倒して、お家に帰りましょう。私、やりたい事が沢山あるのです。これでも私は、貴族令嬢ですからね。美しいドレスを着て、素敵な殿方とダンスを踊って。それで、親友たちとお茶を楽しむのです。


 それから、宝石も沢山買いたいですわ。美味しいお菓子を食べて、ゆっくり過ごす。考えただけで、ワクワクしますわ“


 そう言って笑ったジャンティーヌ。


 次の瞬間、場面が変わったのだ。


 “ギルド殿下はここでお待ちください!皆様、ジルド殿下を、どうかお願いします”


 “ジャンティーヌ、僕も一緒に行くよ。お願い、僕も戦わせて!”


 “そんな小僧に、何が出来ると言うのだ。ジャンティーヌと言ったな、俺を封印できるか?”


 目の前には、沢山の兵士が倒れ込んでいた。真っ黒の髪を腰まで伸ばした男が、ニヤリと笑っている。あれが魔王なのだろう。


 泣き叫ぶ少年を、傷だらけの兵士たちが、必死に抑えている。


 そしてジャンティーヌは、既に腕と足に酷い傷を負っていた。それでも、必死に体を動かし、魔王の前に向かう。


 この光景は…


 “まだ俺と戦うつもりか?”


 “当たり前でしょう。私はこの国の騎士団長なの…私が諦めたら、この国の人々はどうなるの?絶対に私は諦めない。あなたなんかに、この国を奪わせない!絶対に!”


 “死にたがり屋の愚かな女、それじゃあ、お望み通り息の根を止めてやる!”


 そう言うと、魔王がものすごい魔力をジャンティーヌに向かって放出したのだ。それを必死に受け止めるジャンティーヌ。


 “ジャンティーヌ様、私共も”


 そう言うと、残っていた兵士たちも応戦する。


 するとまた場面が変わったのだ。


 そこには傷だらけで倒れるジャンティーヌと、泣き叫ぶ少年の姿が。


 “ジャンティーヌ、目を覚ましてよ。お願いだよ。どうして!死なないって、約束したじゃないか”


 “殿下、もうジャンティーヌ様は…”


 “いやだぁぁぁぁ”


 次の瞬間、ぱちりと目を覚ましたのだ。俺の瞳からも、大量の涙が溢れていた。その瞬間、全てを思い出したのだ。


 俺は500年前、この国の第二王子として生きていた。兄を守るため、当時10歳だった俺は、魔物討伐に参加させられた。本来なら俺が命を懸けて魔王と戦わなければいけなかったのだ。でも俺は、魔王も魔物も怖くてたまらなかった。


 いつもろくに戦えず、泣いてばかりだった。


 そんな中、俺を励まし支えてくれたのが、騎士団長のジャンティーヌだったのだ。彼女は俺を守りながら、必死に戦った。


 想像以上に強い相手に、絶望する仲間たちを励ましながら、自ら先陣を切って戦ったのだ。親友たちや兄を失くし、自身もボロボロになりながらも、彼女は何度も立ち上がり、そして最後は自らの命と引き換えに、魔王を封印した。


 俺はあの日の事を、忘れない。俺にもっと力があれば、ジャンティーヌは死なずに済んだ。俺が彼女を殺したのだ。


 そして俺は、密かにジャンティーヌを愛していた。強くて優しい彼女を。だが、俺は無力だった。己の弱さに、どれほど後悔したか。


 あの後俺は、誰とも結婚せずに、狂ったように稽古を続け、ジャンティーヌだけを思いながら、生涯の幕を下ろしたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ