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高1を12回ループしたクラスメート達が賢者モードになっている件  作者: 陽乃優一
第六章 彼らと彼女は、何かを知っていた
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34「みんなと過ごす楽しい日々」

※当初の1日1話更新予定を変更し、第27話より連続公開をしています。この回は、第六章(クリスマス&年末年始編)の4話目です。

 今年最後の、通常HRにて。


「というわけで、恒例のクリスマスプレゼント交換会、始めるよー!」

「何が回ってきても恨みっこなし、年に一度の大博打だ!」

「特に、今回は! 菜摘ちゃんのがげっとできなかったからって騒がないこと!」

「だが、お前らもこれまでの周回のを避けて持って来たはずだ! 面白いのを期待してるぞ!」

「「「「「おーーーー!」」」」」


 なぜか文化祭準備と同様、湯沢さんと柿本くんが司会である。まあ、わかるけど。


「もはや、HRの体すら成してないわね……」

「いいじゃないですか、白鳥先生。年末の連絡はすぐに終わりましたし」

「まあね。安藤くんからプリント一枚配れば終わりだし」

「先生もちゃんとプレゼント持ってきましたか? 僕たち、割と楽しみにしてるんですよ」

「もちろんよ。でも、毎回毎回、みんなよく選んでこれるわねえ」


 そして、司会のふたりを隅の席で見守りながら、穏やかな会話を繰り広げる安藤くん(クラス代表)と白鳥先生(クラス担任)。……の、雰囲気が悪くない感じ。ふむ。


「菜摘さんは、どんなプレゼントを持って来たんですか?」

「んー、ひみつ、かな。もらった人が喜んでくれるか、自信ないから」

「そんなことはないと思いますけど」

「でも……えっとね、手作り、なんだ」

「「「「「手作り!?」」」」」

「ひゃっ」


 もう、何度目かになった、クラスみんなの一斉の声。でも、今回は叫びとかじゃなかったから、それほどびっくりしなかったけど。


「あ、安積さんの、手作り……」

「絶対……絶対、尊い……はず」

「よし、菜摘ちゃんのだけ予選会やるか。フォークダンスの時みたく」

「いや、それあんまり変わらんだろ」


 またよくわかんないけど、とりあえず、普通に回そうね?



「おい誰だ、ICカード入れ付き手袋とか用意したの!」

「私だよー。それを使えばあら不思議、電車やバスに乗る時に魔法使いになれるよ!」

「中二かよっ。ありがとなっ」


「CD? もしかして、松坂くん?」

「違いますぞ。僕が用意したのは、自作シューティングゲームMk-IIIが入ったUSBメモリですぞ」

「うわ、これ松坂のかよ! いやまあ、遊ぶけどさ」

「それじゃ、これは……?」

「それは俺のだな。出かけた山で録音した数々の野鳥の声、今周回バージョンだ!」

「そ、そう……」

「あ、それ、私が9周目にもらったやつだ。ね、私も聴いていい?」

「まあ、もらった本人がいいなら」

「へー、結構いいんだ、野鳥の声って。一緒に聴こうか」

「うん!」


「……新作ラノベ3巻セット、か。笹原か?」

「残念、俺だ」

「え、お前、本読むのか?」

「失礼な。……と、言いたいところだが。聞いて驚け、それはどれも、俺が作者だ!」

「「「な、なんだって!?」」」

「えっ、なんだお前ら、その反応」

「その作者、小説投稿サイトにいきなり現れて3作同時に連載を始めて」

「そのどれもが半年の間、総合日間ランキングの上位に入り続けて」

「あれよあれよと書籍化の話が進んで」

「こないだ発売されたばかりの、大作ラノベ群だぞ!」

「なん……だと……」

「ふふん、驚いたか? 俺が12回ループの中で今年の流行を研究しつくした成果だ!」

「よし、安積さんとみんなには悪いが、14回目のループも起こしてもらおうぜ」

「なるほど、これ暗記して、次の周回で俺らが早いうちに小説家デビューか」

「そしてめでたくループを抜けて、コミカライズにアニメ化に映画化か」

「なんてこと言うんだお前ら」

「まあ、読んでみるわ。打ち切り判定してやるぜ」

「なんてこと言うんだお前は」


「え、なにこれすごい! 超効果がある品薄の美容液ばかり集めたセットじゃない!」

「……頑張って、揃えた」

「笹原さんの!? うわあ、ありがとー!」

「それを使えば、男はイチコロ」

「う、うん」

「女も、イチコロ」

「えっ」


「湯沢さんの、サイン入りシューズ……」

「あははは、この周回で協賛企業からもらったものだけど」

「……履いたの?」

「え? あ、う、うん。実はそれ、全国大会で使ったやつなんだ」

「よし、鑑定番組に」

「やーめーてー」


「安藤……さすがにこれはないぞ……。そもそも、年度末まであと3か月くらいだし」

「でも、あったら便利じゃない? 天気予定(・・)表示ウィジェット。松坂とアプリを共同開発してみたんだけど」

「俺らみんな、暗記レベルで知ってるしなあ。せめて、ゴールデンウィークあたりで欲しかったぞ」

「それだとクリスマスプレゼントにならないし、あと……開発に時間かかっちゃって」

「……14回目ってことになったら、年度初めに作ってみんなに配布な」

「悪い」


「これ……鳴海さん?」

「よくわかりましたね。普段の私とはかなり趣向が違うと思うのですが」

「鳴海さんって、初期の周回の頃はストーカー被害が酷かったから」

「ああ……覚えてたんですね」

「ループ仲間だしね。でもまあ、お下がりでも嬉しいよ、スタンガン」


「うがー! なんでこう、たびたび柿本のが当たるのよ!」

「不思議なものだよな。湯沢に当たるの、これで4回目か? 最初期に1回、中盤で連続2回、2年前に1回……だったか」

「……最初の1回が、あんたとの腐れ縁の始まりだったわね」

「……そうだな。もともと、男子向けのウケ狙いだったんだが」

「あれ、他の女子に当たってても、同じことしてたの?」

「さあなあ。まあ、今回のは割といいやつだ。そのまま受け取れ」

「うん、機会があったら使うよ。スマホ充電用ソーラーパネル」


「あら、これって……」

「白鳥先生に当たったんですね。ある意味、ちょうど良かったかも」

「おおお、菜摘ちゃんのが先生に!」

「白鳥先生、早く見せて下さいよ!」

「ええと……卓上カレンダー?」

「来年のです。写真は、私がクラスの様子をスマホで撮り溜めたのを使ってます」

「あ、これ、最初のカラオケの時のだ! なつかしー」

「こっ、これはっ、プールの時のっ……!」

「写真は、写った人がOKならコピーをあげるよ。私はほとんど写ってないけど」

「そういや、俺らってあんまり写真とか撮らないよな。いや、撮らなくなった(・・・・・・・)というべきか」

「画像データも含めてリセットされちゃうと思うとねー」

「記憶が……頼り……」

「そっか。でも……このカレンダーは、来年もずっと使い続けられるといいね」

「「「「「………………」」」」」



 プレゼント交換もつつがなく終わり、みんな帰宅していく。明日は終業式で、翌日から冬休みである。夏休みほどではないが、しばらく学校でみんなと顔を合わせることはない。でも、クリスマスライブを含め、クラスのみんなと過ごす冬休みの予定がたくさん詰まっている。クリスマスが終わっても、年が明けても、そして、学校が再開しても。


 今日も明日も明後日も、みんなと過ごす楽しい日々が続いていく。願わくば、ずっとずっと、みんなと―――

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