34「みんなと過ごす楽しい日々」
※当初の1日1話更新予定を変更し、第27話より連続公開をしています。この回は、第六章(クリスマス&年末年始編)の4話目です。
今年最後の、通常HRにて。
「というわけで、恒例のクリスマスプレゼント交換会、始めるよー!」
「何が回ってきても恨みっこなし、年に一度の大博打だ!」
「特に、今回は! 菜摘ちゃんのがげっとできなかったからって騒がないこと!」
「だが、お前らもこれまでの周回のを避けて持って来たはずだ! 面白いのを期待してるぞ!」
「「「「「おーーーー!」」」」」
なぜか文化祭準備と同様、湯沢さんと柿本くんが司会である。まあ、わかるけど。
「もはや、HRの体すら成してないわね……」
「いいじゃないですか、白鳥先生。年末の連絡はすぐに終わりましたし」
「まあね。安藤くんからプリント一枚配れば終わりだし」
「先生もちゃんとプレゼント持ってきましたか? 僕たち、割と楽しみにしてるんですよ」
「もちろんよ。でも、毎回毎回、みんなよく選んでこれるわねえ」
そして、司会のふたりを隅の席で見守りながら、穏やかな会話を繰り広げる安藤くん(クラス代表)と白鳥先生(クラス担任)。……の、雰囲気が悪くない感じ。ふむ。
「菜摘さんは、どんなプレゼントを持って来たんですか?」
「んー、ひみつ、かな。もらった人が喜んでくれるか、自信ないから」
「そんなことはないと思いますけど」
「でも……えっとね、手作り、なんだ」
「「「「「手作り!?」」」」」
「ひゃっ」
もう、何度目かになった、クラスみんなの一斉の声。でも、今回は叫びとかじゃなかったから、それほどびっくりしなかったけど。
「あ、安積さんの、手作り……」
「絶対……絶対、尊い……はず」
「よし、菜摘ちゃんのだけ予選会やるか。フォークダンスの時みたく」
「いや、それあんまり変わらんだろ」
またよくわかんないけど、とりあえず、普通に回そうね?
◇
「おい誰だ、ICカード入れ付き手袋とか用意したの!」
「私だよー。それを使えばあら不思議、電車やバスに乗る時に魔法使いになれるよ!」
「中二かよっ。ありがとなっ」
「CD? もしかして、松坂くん?」
「違いますぞ。僕が用意したのは、自作シューティングゲームMk-IIIが入ったUSBメモリですぞ」
「うわ、これ松坂のかよ! いやまあ、遊ぶけどさ」
「それじゃ、これは……?」
「それは俺のだな。出かけた山で録音した数々の野鳥の声、今周回バージョンだ!」
「そ、そう……」
「あ、それ、私が9周目にもらったやつだ。ね、私も聴いていい?」
「まあ、もらった本人がいいなら」
「へー、結構いいんだ、野鳥の声って。一緒に聴こうか」
「うん!」
「……新作ラノベ3巻セット、か。笹原か?」
「残念、俺だ」
「え、お前、本読むのか?」
「失礼な。……と、言いたいところだが。聞いて驚け、それはどれも、俺が作者だ!」
「「「な、なんだって!?」」」
「えっ、なんだお前ら、その反応」
「その作者、小説投稿サイトにいきなり現れて3作同時に連載を始めて」
「そのどれもが半年の間、総合日間ランキングの上位に入り続けて」
「あれよあれよと書籍化の話が進んで」
「こないだ発売されたばかりの、大作ラノベ群だぞ!」
「なん……だと……」
「ふふん、驚いたか? 俺が12回ループの中で今年の流行を研究しつくした成果だ!」
「よし、安積さんとみんなには悪いが、14回目のループも起こしてもらおうぜ」
「なるほど、これ暗記して、次の周回で俺らが早いうちに小説家デビューか」
「そしてめでたくループを抜けて、コミカライズにアニメ化に映画化か」
「なんてこと言うんだお前ら」
「まあ、読んでみるわ。打ち切り判定してやるぜ」
「なんてこと言うんだお前は」
「え、なにこれすごい! 超効果がある品薄の美容液ばかり集めたセットじゃない!」
「……頑張って、揃えた」
「笹原さんの!? うわあ、ありがとー!」
「それを使えば、男はイチコロ」
「う、うん」
「女も、イチコロ」
「えっ」
「湯沢さんの、サイン入りシューズ……」
「あははは、この周回で協賛企業からもらったものだけど」
「……履いたの?」
「え? あ、う、うん。実はそれ、全国大会で使ったやつなんだ」
「よし、鑑定番組に」
「やーめーてー」
「安藤……さすがにこれはないぞ……。そもそも、年度末まであと3か月くらいだし」
「でも、あったら便利じゃない? 天気予定表示ウィジェット。松坂とアプリを共同開発してみたんだけど」
「俺らみんな、暗記レベルで知ってるしなあ。せめて、ゴールデンウィークあたりで欲しかったぞ」
「それだとクリスマスプレゼントにならないし、あと……開発に時間かかっちゃって」
「……14回目ってことになったら、年度初めに作ってみんなに配布な」
「悪い」
「これ……鳴海さん?」
「よくわかりましたね。普段の私とはかなり趣向が違うと思うのですが」
「鳴海さんって、初期の周回の頃はストーカー被害が酷かったから」
「ああ……覚えてたんですね」
「ループ仲間だしね。でもまあ、お下がりでも嬉しいよ、スタンガン」
「うがー! なんでこう、たびたび柿本のが当たるのよ!」
「不思議なものだよな。湯沢に当たるの、これで4回目か? 最初期に1回、中盤で連続2回、2年前に1回……だったか」
「……最初の1回が、あんたとの腐れ縁の始まりだったわね」
「……そうだな。もともと、男子向けのウケ狙いだったんだが」
「あれ、他の女子に当たってても、同じことしてたの?」
「さあなあ。まあ、今回のは割といいやつだ。そのまま受け取れ」
「うん、機会があったら使うよ。スマホ充電用ソーラーパネル」
「あら、これって……」
「白鳥先生に当たったんですね。ある意味、ちょうど良かったかも」
「おおお、菜摘ちゃんのが先生に!」
「白鳥先生、早く見せて下さいよ!」
「ええと……卓上カレンダー?」
「来年のです。写真は、私がクラスの様子をスマホで撮り溜めたのを使ってます」
「あ、これ、最初のカラオケの時のだ! なつかしー」
「こっ、これはっ、プールの時のっ……!」
「写真は、写った人がOKならコピーをあげるよ。私はほとんど写ってないけど」
「そういや、俺らってあんまり写真とか撮らないよな。いや、撮らなくなったというべきか」
「画像データも含めてリセットされちゃうと思うとねー」
「記憶が……頼り……」
「そっか。でも……このカレンダーは、来年もずっと使い続けられるといいね」
「「「「「………………」」」」」
◇
プレゼント交換もつつがなく終わり、みんな帰宅していく。明日は終業式で、翌日から冬休みである。夏休みほどではないが、しばらく学校でみんなと顔を合わせることはない。でも、クリスマスライブを含め、クラスのみんなと過ごす冬休みの予定がたくさん詰まっている。クリスマスが終わっても、年が明けても、そして、学校が再開しても。
今日も明日も明後日も、みんなと過ごす楽しい日々が続いていく。願わくば、ずっとずっと、みんなと―――




