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高1を12回ループしたクラスメート達が賢者モードになっている件  作者: 陽乃優一
第三章 彼らと彼女は、何かを考えていた
20/55

18「ループして踏み倒した、と」

設定詰め込み回。ので、いつもの倍くらいあります。

 HRで決めたように、週末である本日、クラスの何人かを自宅に呼んだ。住所を伝えて直接来てもらおうと思ったのだが、場所がよくわからないと口を揃えて言うので、一度学校の校門に集まり、そこから移動した。


「……え? ここ?」

「うん、そうだよ。私が居候している、親戚の家」

「こ、これは……」

「すっごいねえ……」


 家の入口付近で、クラスのみんなが呆けている。


「『12人くらいなら大丈夫』って意味、よくわかったわ……」

「てっきり、何かのお店をやってるのかと思ってたんだけど……」

「場所がわからなかったわけだよ。ここ、森林公園か何かかと思っていたから……」


 どうやら、敷地の広さにびっくりしていたらしい。うーん、そんなに(・・・・)びっくり(・・・・)するほど(・・・・)かな?


「ああっ! 『芳月』って、あの『芳月商事』の!?」

「柿本くん、知ってるの? おじさんの会社、日本ではほとんど知られてないのに」

「世界展開している『アザレア・コンサルティング』の親会社だろ!? 各国で保険業を中心に扱っている金融グループだ。芳月商事はその持株会社でもあって、社長は……」

「アザレアグループの会長だね」

「げふっ」


 柿本くんが倒れた。おかしいな、日本ではほとんど展開していない金融グループだから、倒れるほどびっくりするなんて不思議なんだけど。


「……昔、世界をあちこち旅していた時、」

「ああ、親御さんのお金を盗んで放浪していた周回ね」

「安積さん相変わらず厳しい。その時にかなり世話になったんだよ。某国でテロに巻き込まれた時、日本政府や現地の治安組織よりも早く対応してくれて」

「柿本くん、アザレア系の海外旅行保険に入ってたの?」

「空港で入った一番やっすいやつだったけどな。でも、名前や渡航先を登録していたからだろうな、すぐに現地交渉や救助手配をしてくれて。報道前の対応だったからびっくりしたぜ」

「そうなんだ」

「あと、保険で賄いきれなかった費用は、分割払いにしてくれて……」


 ループして踏み倒したと。



 入口から少し歩いて、玄関に到着する。


「家自体も、おっきいねえ」

「入口から見えなかったほど敷地が広いのもアレだったけど」

「イギリスのマナー・ハウスに近いか? 固定資産税だけでも酷いことになりそう」

「うん、そう聞いてる。でも、なんとかなってるって」


 たぶん、お母さんが節税対策とかしてるんだろうなあ。


「白鳥先生、呼ばなくて良かったかもな。ウチは家庭訪問とかもないし」

「そうだねえ。2Kのアパート住まいでほくほくしてるけど、これ見たら卒倒するかも。柿本じゃないけど」

「白鳥先生、ひとり暮らしなの?」

「うん。学校近くの賃貸アパートに住んでてね、前の周回で僕らも何度か訪ねたことがあったけど……」

「万年コタツが鎮座してるよね」

「年末年始はいつもどてら着込んでて」

「台所にはいつも即席めんの袋があって」

「若手高校教諭の給料が安いのは知ってるけど、あれはなあ……」


 ひとり暮らしなのかあ。私なら、寂しくて耐えられないかも。過去の周回、私もお父さんと一緒にお母さんについていってたのかな。でも、コタツはちょっと興味あるかも。私、使ったことないんだよね。


 がちゃ


「おお、菜摘お嬢様(・・・)、お帰りなさいませ」

「ただいま、佐々木(ささき)さん」

「少し遅かったので心配いたしました。そちらが、御学友で?」

「うん。みんな、入って」

「「「「「……」」」」」

「みんな?」

「執事キター!」

「ひっ!?」


 びっくりした、びっくりしたよ、笹原さん(・・・・)! 入口でも玄関でも表情ひとつ変えず黙っていたのに、いきなり叫ぶんだもん。っていうか、叫ぶの初めて聞いたよ!


「んんっ……菜摘さん、もしかして、メイドも?」

「メイド? ああ、お手伝いさん達ね。いるよ。あと、佐々木さんは、おじさんの秘書のひとりだから」

「住み込み?」

「そうだけど……」


 ぐっ、と拳を握る笹原さん。な、なんなんだろう、まだ私には理解できない何かなのだろうか。


「笹原のアレな趣味はともかく、今、『達』って言ったよな、安積さん」

「あと、『ひとり』ともね。いやはや……」


 他のみんなも様子がおかしいけど、とりあえず、


「とりあえず、みんな入って。佐々木さん、リビングでいいよね?」

「はい。お嬢様の電子キーボードも野中(のなか)が移動させております」

「ありがとう、佐々木さん。後で野中さんにお礼言わなくちゃ。お庭の手入れがお仕事なのに」

「これも仕事ですよ。さ、みなさま、こちらへ」


 ぞろぞろ


「……庭師? 庭師よね?」

「その人も住み込みっぽいよな」

「え、なに? 現代日本に中世ヨーロッパ風の貴族がいるの?」

「公園と思ってた中に、こんな異世界があったとは……」


 異世界? SFの主人公みたいな人達が何を言ってるのかな?



 〜♪

 ♪、♪♪〜


 〜♪


「……っと、こんな感じだけど」

「いいねいいね! ピアノになったらもっと良さそう!」

「ごめんね、ピアノはなくて」

「確かに、こんな家ならグランドピアノのひとつくらいあっても良さそうだよな」

「失礼ですよ、柿本さん」

「悪い、調子に乗った」


 さすがに、ピアノは前の家から(・・・・・)持ってこれなかったのよね。


 とたとたとた


「菜摘お姉ちゃん、この人達って……」

「あら、司さん。おひさしぶりです」

「司じゃん、ゴールデンウィークぶりー」

「お、おひさしぶりです」

「この間話した、他のクラスメート達だよ。仲良くしてね」

「「「こんにちわー」」」

「こ、こんにちわ」


 緊張してるねえ。まあ、しかたないか。みんな年上な上に、綺麗でカッコいいから。


「司、しばらくみんなと話をしていて。私、お昼の用意してくるから」

「お姉ちゃん、いつも言ってるけど、ご飯なら瀬尾(せお)さん達に任せれば……」

「いいのいいの、私が料理するの好きなの知ってるでしょ? 横山(よこやま)さん、司の分もお茶とクッキーを用意してもらえますか? 佐々木さんも、このままみんなをお願いします」

「かしこまりました、お嬢様」

「かしこまりました」


 横山さんは、この家で一番長く働いているお手伝いさんだ。だからというわけでもないのだろうけど、お茶を入れるのがうまいんだよね。私も学んでみたいんだけど、なぜか止められるのよね……。


 すたすたすた



「よーし、じゃあ、司、菜摘ちゃんの美味しいごちそうが出来上がるまで、お姉さんお兄さん達とOHANASHIしようか?」

「そうだな。居候中の安積さんの前では不躾で聞けないこととかな」

「柿本が聞きたいのは芳月商事のことか? いくら御曹司でも、小学生の司くんじゃわからないんじゃないかな」

「そうですね。どちらかというと、菜摘さん本人のことを聞きたいですね。家での様子とか」

「居候と言っても、部屋に閉じこもってばかりじゃないだろうしね」

「庶民が……貴族の……執事と……禁断の……メイドも……」

「笹原、その定番はNG」


 わいわい


「ちょ、ちょっと待って。その前に、みなさんきっと勘違い(・・・)していると思うから、先に言っておくけど」

「なになに?」

「菜摘お姉ちゃんは確かに居候だけど、この家はもともとお姉ちゃん家の(・・・・・・・)だから」

「「「「「………………え?」」」」」


 ざわざわ


「え? え? どういうこと? 居候しているのに、菜摘ちゃん家って」

「菜摘さん、去年は隣の県に住んでいて、御両親が海外赴任したから、この親戚の家に住んでいると」

「確かに、ここを借りて(・・・)住んでいるのは僕たち家族だから、そこにお姉ちゃんが住むのは居候かもしれないけど。あと、隣の県って『本邸』のことかな」

「「「「「本邸!?」」」」」


 すっ


「私からお話しましょうか」

「佐々木さん?」

「菜摘お嬢様は、資産家で()ある『安積家』本家の一人娘です。芳月家は分家筋……と言えば良いのでしょうか」

「分家? アザレアグループの会長の家が?」

「はい。そして、安積家はもともと学者を輩出する血筋なのです」

「あ、それはなんとなくわかる」

「自由な家風でしてな。菜摘お嬢様のお父様は、大学生の頃からデイトレーディングの才能を発揮し、そのままそれを仕事とされています」

「うはー」

「そして、お母様はもともと安積家本家の長女でして、安積一族の資産管理を行う傍ら、起業家として活躍されて……」

「……アザレアグループの、創始者……」


 ぱた


「あ、柿本が死んだ」

「スマホ握りしめてるから、ネットで調べたんだ」

「そうですな、所有企業グループのひとつ(・・・・)です。国際規模の保険事業の伸び代が大きいとのことで、地元政府と提携して直接指揮を取ることにしたとのことです」

「……兼、外務省経済政策顧問……」


 がたがた


「あ、復活した」

「柿本、この周回で旅に出た方が良かったのかもね」

「で、でも、すごいのは菜摘ちゃんのお父さんやお母さんだよね? 菜摘ちゃんには気軽に接しても問題ないよね? ね?」

「まあ、御両親にしても、別に権力者というわけではないですし……」

「ああ、アザレアグループに限っては、もともと菜摘お嬢様の発案で起業されましたな」

「「「「「はい!?」」」」」

「私が『本邸』で働いていた頃です。お嬢様が新聞を読んで『難民の人達のための保険ってないの?』と」

「「「「「………………」」」」」

「社会について知り始めた、子供の荒唐無稽のアイディアと我ら大人は思ったものです。ですが、お嬢様なりに書物で調べて『提案書』としてまとめ、お母様に渡されました。それを受けて試行が始まり……現在に至るわけです」


 ぱた


「柿z……じゃなかった、柿本ー!」

「あの、もしかして、柿本さんを救ってくれたの、菜摘さんだったのでは」

「なるほど、過去の周回では、御両親と一緒にドバイに移り住んだのか」

僕達の(ループ)ことを聞いてすんなり受け入れてくれたのも、安積さんならではだったか……」


 とことことこ


「みんなー、ご飯できたから食堂に……って、柿本くん、なんでまた倒れてるの!?」

ここまでを第三章とし、登場人物まとめの後に第四章となります。


※13話の誤字報告ありがとうございました。05話と短編の方も直しました。アレは恥ずかしい……空想科学ジャンル作品なのにににっ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 柿崎ぃぃイイ!!
[一言] なんというか、物語が回り始めた感じですね!
[一言] まさか、後の時空研究者達の研究資金の出所だったりして・・・・・・・・・・・・・・
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