孤児院の問題
私が目覚め、リハビリに森に行ってから2日後、今日はやけに人の多いギルドの壁いっぱいに貼られた名簿みたいな紙を見ていた。
「あらミナちゃんも、ランキングを見に来たのね、でもミナちゃんはこの前の緊急告知で自分の順位知ってるんじゃないの?」
メリルさんは可愛らしく首を傾げながらそう言うけど、私緊急告知なんて知らないし、まず何の話をしてるのかもよく分かってないんだけど。
「えっと…ごめんなさい、私頭良くないから、緊急告知とかランキングとか何の事だか全然わかんないんだけど…」
「…えっ? この前掲示板に貼り出したんだけど…見てないの? それにランキングも確か入会の時説明したよね?」
「うん、私聞いてもすぐ忘れちゃうからそういうのはフィリアに任せてたの」
メリルさんは新種の生き物を見るような目で私を見つめてくる。
そして握りしめた拳がぷるぷる震えている。
「そっかぁ…じゃあ確認なんだけど、ミナちゃん…今ここで自己紹介してくれる? なるべく詳しくね」
「? うん、えっと…私はミナ、15歳で冒険者です」
「…えっ? それだけ? いつもそんな感じなの?」
「うん、他に言う事無いし」
私がにへらと笑いながらそう言うと、メリルさんは頭を抱えてため息をついた。
「あのね…ミナちゃんの自己紹介として正しいのは、名前はミナ、Aランク冒険者で序列7位、ここまで言って普通です、ミナちゃんはもうギルドの大幹部なんだからね? わかってる?」
私は首を傾げた。
てかランクとか大幹部とかどうでも良いんだけど。
大事なのは依頼を成功させて貰えるお金と、魔物の買取価格だと私は思う。
「…じゃあ依頼でも受けよーかなぁ」
メリルさんの圧と視線が凄いので、依頼を探すフリをしてそのまま帰ろうと歩き出したところでメリルさんにがしっと肩を掴まれた。
「メリルさん痛い! 肩がミシミシいってるよ!? このままだと私の肩が取れちゃうよ!?」
「黙りなさい、ミナちゃん…2週間後ギルド本部で最高審議会の会議があるんだけど…もちろん知ってるよね? ミナちゃんは議員だから召集されてるって言ったもんね?」
「………」
冷や汗が止まらない。
メリルさんが私の肩を掴み、目線を合わせた上で、無表情、しかも光の無い目で覗き込むように私を見ているからだ。
一言で言う、怖い。
余りの恐怖に膝が震える、ここで武者震いだとか言ってふざけたら、多分私はここで死ぬだろう。
「いいミナちゃん…もし会議を忘れてすっぽかしたらどうなるか…わかるよね?」
「はい! わかります!」
私は震え、半泣きになりながらそう返事してその場から逃げ出した。
しばらくギルドには来ないと心に決めて。
「お姉ちゃん、食べ物持ってない?」
ギルドから逃げ、大通りを目的も無くぷらぷらしていると、突然手を掴まれて声をかけられたので振り向くと、とてもボロい服を着ている痩せ細った女の子が立っていた。
「食べ物はあるけど…大丈夫? 顔色も悪いよ? 何処に住んでるの?」
「えっと…私は街外れの孤児院に住んでるの、でも食べ物が無くって…私はまだ大丈夫だけど、寝込んじゃってる子も居るから…食べ物下さい!」
「うん、じゃあ孤児院に案内してくれる? あげるなら皆の分もあった方がいいでしょ?」
私がそう言って笑うと、少女は花が開いたような笑顔を見せて、早く早くと私を引っ張って歩き出した。
そして着いた先は、ボロボロの建物だった。
私はこの街に失望した。
というか、どうしてこんな小さな子がこんな目にあっているのかわからない。
この理不尽さに怒りを覚える、はらわたが煮えくりかえるかのようだ。
「あら…スール、また街に行っていたの?」
「あ、うん! それでね、このお姉ちゃんが食べ物くれるって!」
この人が孤児院の院長さん…この人も痩せ細っていて随分辛そうだ。
「あの…どうして孤児院がこんな状態になってるんですか?」
私の質問に院長は苦い顔をする。
「それは…」
「領主が支援金? とかいうのをくれなくなったんだよ! だからママやお兄ちゃん、お姉ちゃんたちはご飯もろくに食べずに朝から晩まで働いて…うっ…うぅ…」
なんだそりゃ。
孤児院って親のいない子供を育てるところでしょ?
なのに支援金を打ち切る? そんな事したら働けない子供が沢山いる孤児院がどうなるかなんて頭の悪い私でも分かる。
許せない。
そんな事もわからない無能な領主なんか…。
そこから引き摺り下ろしてやる。
《ミナの怒りが最大値になりました、自動スキル、逆鱗が発動、攻撃力が80倍になり、防御力が5割減少、痛覚を完全遮断します》




