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「そしてお姫様と王子様はずっと幸せに暮らしましたとさ」
「うわーい、うわーい、幸せに暮らしたんだね」
「すごいや!」
私が読み聞かせを終えると、すごいすごいとちびさんたちが手をたたきます。
ジュニアスさんの弟さんたちと、あとは数人の村の子がお母さんと来てくれてます。
「ティンカさん、効果音ありがとうございます!」
「うふふ、そういうのも大事よ」
ティンカさんは小道具を使っていろいろと音を出してくれました。
湖からお姫様が現れるところは水を使ってとか、しかしよく湖にいて息が……はう、お話です考えるのはやめましょう。
ティンカさんはちょこんとカウンターに座り、ぱちぱちと手をたたいた後、どの本を借りようと並べられた絵本を見る子供たちを優しく見ます。
「うーん、子供っていいわよね」
「ティンカさんに言われても……」
「でも子供も大人と人間は変わらないわ、悲しいって気持ちなどはね、妖精はあまりそういうのないから」
「え?」
「感情の起伏はあるけど、あまり負はないの。そういうところ人間と違うわね」
でもねえ、ティンカさんは楽観的ですが悲しむこともあります。
私がそういうと、でもその幅は小さいのとあっけらかんと言い切りましたです。
「でも私はあんたが悲しいと悲しい、ジュニアスが悲しいと悲しい、だから今あんたがひどい目にあっているのをみると悲しいし、何とかしてあげたいと思うの」
「ありがとうございます……」
ティンカさんは優しいです。この数日は何もありませんが、何があるかドキドキしていましたですよ。
クリスとジュニアスさん、アッシュさんもちょっとピリピリしていますですよ。
「考えすぎないことね。みんながあんたを大切で守っている。あんたは図書館の館長、だからここをどうするかを今は考えなさい、私も協力するわ」
「うううううう、やっぱり持つべきものはお友達さんなのですよ!」
「泣かない泣かない、ほら次はどうするの?」
読み聞かせ会は終了後、子供さんたちが選んだ絵本は貸出して、あとは冊数が多いときは移動図書館にのせますですよ。
クリス以外、数人の村人さんたちが協力してくれて今は成り立ってるです。
「子供さんたちが選んだ本を貸出して袋につめますです!」
「うん、じゃあ私はそれを手伝う!」
「お願いしますです!」
うふふ、ティンカさんはやはり優しいです。
私たちは子供たちを持ってきた本を貸出カードや台帳に記入して、袋に本を詰めていきますです。
ジュニアスさんも手伝ってくれています。
うーん、私とティンカさんの女の友情を見て、口を挟んでこないのがいいところですねえ。
「これで終わりですか? アルジェさん」
「はいです」
「なら、移動図書館を手配して、あとは閉館ですね」
「あう、そうですね」
うーん、アッシュさんが難しい顔で横にいますが、みんな慣れたようですよ。
魔獣のことはジュニアスさんがご両親に聞いてくださって、あとでお話ししてくれるそうですよ。
だって隣にアッシュさんがいては話せませんからね。
「アルジェ殿」
「はい?」
「体調にお変わりは……」
「はい、普通なのですよ」
「それならいいのですが」
実は夢のことはアッシュさんには言ってませんです。クリス、ジュニアスさん、あとはティンカさんにお話ししました。
みんな自分のつてでいろいろ調べくれるそうです。
夢で泣いていたシルヴィアさん、でもあの闇はどこにいるのか?
そんなことを思うと、後ろからぎゅうってジュニアスさんが私を抱きしめ大丈夫ですよと囁きます。
みんななにか生あったかい目で見ていますが……。
クリスだけがどこか暗い表情でこちらを見ていたのが気になりました。




