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「今は何も感じませんね」
「アルジェちゃん気分は?」
「今は普通ですおば様」
おば様は私の額に手を当てて熱はないようねと優しく笑いました。見かけの年齢はほぼ変わらないんですよね。
20歳前の女性にしか見えません。同じ銀の髪に緑の瞳ですが、存在感というやつが全く違うんですよね私と……女子力が高いっていうか。
「うー、私がおば様やおじ様、ジュニアスさんにひどいことをするようなら何処か遠くにいったほうがいいんでしょうか?」
「闇の魔法ではどうもなさそうなので、違う系統ならジュリアン殿達のお力をかりたほうがいいですぞ。アルジェ殿」
アッシュさんがしかめっ面で私に話しかけます。なんというかうーん……楽観的ではいられない出来事なのを再確認できますね。
王都から闇の魔法使いの方も系統が違うって言ってましたし。
「シルヴィアを語る闇のものかもしれない、アルジェちゃんの魔力は強いから利用しやすいというか……」
「はう、おじ様? でも私の魔力はアッシュさん以下なのですよ? ユライさんにも及ばないものです」
「しかし、君のお母様にもね、何か特殊な魔法の力を感じたんですよ。アルジェちゃん」
「アルジェちゃん、ジュニアスを守護に今まで通りつけるから安心して、こう見えてもこの子強いのよ」
ふーむ、ご両親達が言うと照れるジュニアスさん、頭を掻いてますがでもねえなんでもかんでも頼りっぱなしっていうのは微妙ですよ。
「アルジェ、俺も色々調べてみる」
「はう、お願いしますですクリス」
クリスは寂しそうに笑いました。魔法とか魔力が全く関係ないので、話に入ってこれないからですか。
しかしティンカはひらひらと飛んで、気配は感じないなぁと言ってます。
「アルジェ、もう大丈夫?」
「今の所は大丈夫そうなのです」
「ユライにとりついていた気配も払えたし、うーんでもアルジェにはやっぱり何も感じなかったのよ」
「系統が違うかもしれませんな。妖精の長殿にも相談してみましょう」
みなを心配させてしまってます。でも私はどうしてこんなことになったのか? 今まで自分じゃない存在が自分の中にいたなんてことなかったですよ。
ぎゅうっとジュニアスさんが私を抱きしめてくれます。するとやっぱり心がぽかぽかするのを感じます。
「なぁ、アルジェ?」
「なんですかクリス?」
「……おばさんやおじさんに相談した方がいいかもしれないぜ、お前が倒れたとか聞いたら心配……」
「そうですね。お母様に聞いてみたい事もありますから、連絡をしてみますよ」
お母様が銀の髪と緑の瞳をしていて、強い魔力を持って生まれてきたことが何か理由がありそうな気がするのです。
しかし夢の中で幸せそうだったお二人を思い出すと、やっぱりジュニアスさんのご両親を見ていると複雑な気持ちになりましたですよ。
ジュニアスさんが私は裏切りませんと言いますが……。
【人の心は変わる。竜の心だって変わる。今は大好きなんて言ってくれていも、年をとっておばあさんになっても好きって言ってくれるかしら?】
心の中に声が響きます。
はう? 私の心にだけ響いているようなのですが、私の中にあった嫌な気配の方と何か違うようです。
【愛している。なんて言葉……信じるだけ無駄】
「愛は絶対なのですよ。おじい様はこの世界で一番強いのは愛だっていっていたです!」
【ばかばかしい、愛は人を強くもするけど弱くもするわ。弱くなった時に心が……】
「アルジェさんどうしました?」
「あう、だって人を愛することは素晴らしいことなのです!」
ジュニアスさんが私を心配そうに見ています。でも知らない女の子さんの声が私の中で響きます。
少しシルヴィナさんのお声とも似てるようですが?
声はもう聞こえませんが、私がいきなり叫び出したので皆が心配そうに見ています。
うーん、嫌な気配は感じませんが、やっぱり私の中に何かあるようなのです。
私が先ほど聞こえた言葉をおじ様とおば様に言うと、二人は悲しそうに目を伏せて笑いあいましたです。
誰の言葉か知っているようなのですが……聞いても教えてもらえませんでした。
アッシュさんは違う魔法使いさんを手配しましょうといってくれました。もっと強いお守りを貰いましたが……何かが動き出しているようなのです。ため息をつくと大丈夫ですよとジュニアスさんが笑ったのでした。
やっぱり少しその微笑みを見るとドキッとしましたですよ。




