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【ねぇジュリアン、私と一緒になったら跡取りなんて産めないわよたぶん、だって異種族の婚姻は難しいもの】


【それでいい、私は君がいいんだシルヴィア】


 花畑がとてもきれいです。目の前に広がる色とりどりの花を私は見ています。

 私? いえ私じゃないです。だって私の口から漏れる言葉は私が言っているんじゃないですよ。

 隣にいるのは、ジュニアスさん? いえ違いますおじ様です。

 少し感じが違います。若々しいというか……。


 隣に座った私の手をぎゅうっとおじ様が握り締めています。


【そうね、私たちどこか遠くに行くの、そしてねずっとずっと幸せに暮らすのよ】


【そうだね、私は君と一緒ならそこでもいい、そこが私たちのハイ・ブラゼルとなるのだから……】


 ハイブラゼルというのは確か楽園という意味でしたねなんて考えます。うーん、しかしこれ夢ですか? にしては現実味があるというか……。


【待っていてほしい、絶対に長老を説得して、君を私の妻にするよ】


【いつまでも待っているわジュリアン、私のいとしい人……私の銀のドラゴンさん】


 あう、あーう、違いますよ、私はおじ様をそんな風に思ってないです。うーん、おじ様の顔が近づいてきて、あうだめですよだ……。





「アルジェさん、アルジェさん」


「あう、だめですよ。初めてのキスは好きな人って、へ? ジュニアスさんですか?」


「よかった、目を覚ましてくれたんですね」


目を開けると心配そうにこちらを見るジュニアスさんがいました。

みんなもいますよ。というか私いったいどうしたんでしょうか?


「やはり何か……」


「アルジェちゃん大丈夫?」


「おば様?」


「よかった、気がついて」


 おば様が心配そうにこちらを見ています。申し訳ないことをしました。

 でもどうしてあんなことに……。


「あの私……あのです」


「あれはアルジェちゃんじゃないってことくらいはわかるから気にしないでいいのよ」


 おば様は相変わらず優しいです。

 でもなぜあんなことになって、どうしてあんな夢を見たのでしょう? おじ様が複雑そうな顔をしてこちらを見ています。


「おじ様」


「なんですアルジェ?」


「シルヴィアさんをおじ様は裏切ったのでしょうか?」


「いえ……裏切っていません。でも裏切ったことになるのでしょうか」


「そうね、私たちどこか遠くに行くの、そしてねずっとずっと幸せに暮らすのよって……」


「それはシルヴィアに……私が」


 ジュニアスさんと顔はそっくりですが、表情がまるで違います。

 うーん親子ですが、気質は違いますからね。じいっと驚いた顔のおじ様を見ると、ジュニアスさんは私をぎゅうっと抱きしめてきました。上半身抱きしめられる形ですが結構痛いです。


「あうう、痛いですジュニアスさん!」


「すみません、アルジェさん……つい」


「うう、おじ様、私それは夢で聞いた言葉なのです。おじ様、おじ様は」


「シルヴィアを愛していました。裏切るつもりはありませんでした。あれは誤解が生んだことです。でももう……」


 ちらっとおば様を見るおじ様、お二人は結婚されてお子さんまでいます。

 でもすみません、私はあの時のシルヴィアさんのうれしい気持ち、わくわくした気持ち、おじ様が大好きだって気持ちがわかってしまったのですよ。

 だからなんとも今は形容しがたい気持ちなのです。


「裏切り者と……」


「そう取られても仕方ありません」


「私が父上だったら絶対にシルヴィアさんをとりました!」


「そうだね、君ならそうだと思う」


 口調が少し変わります。シルヴィアさんといたときのようなどこか少年のような口調、おじ様はさびしそうに笑いました。

 なんだろう、何か誤解しているような気もします。


「今は愛していないのですか?」


「シルヴィアのことをですか?」


「はい」


「そうですね……わかりません」


 おじ様の瞳はどこか悲しみにあふれていて、私はそれ以上聞けませんでした。

 でもジュニアスさんは私の手を握り締め、絶対に私なら裏切りませんと言葉を続けます。

 みなが心配そうに見守る中、私は夢の中で見た光景を話し始めます。どこかアッシュさんは痛みに耐える顔でその話を聞いていました。





 



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