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 皆さんこんにちは悪役令嬢アルジェなのです。

 移動図書館は一旦中止です。部外者を入れると守りにくいと言われました。

 うう、残念ですが商会はいつでも引き受けるといってくださったので暫くクリスとジュニアスさんに頼るしかないです。


「アルジェ殿、紙芝居の会とやらは村人しかこないのでしょうか?」


「顔見知りしかきませんよ」


「なら安心ですな」


「そうですね」


 アッシュさんは四六時中私と一緒です。護衛なので仕方ないのですが……。

 本を手にいかめしい顔で近くにいるので子供さんが怖がってますよ。

 

「この本は中々興味深いですな」


「冒険のお話の中では一番人気なのですよ」


「ほぉ、この聖女様とやらは中々に……」


 結構、本好きらしくてずっと隣で本を読まれてます。

 それだけが救いですね。だって本嫌いに隣にいられたら嫌ですから。


「しかし利用者があまりおられませんな」


「これでも増えた方なんですよ」


「山の上ですからなぁ」


 ふうむかなり増えた方ですが、一日今30人程度ですね。

 移動図書館を含めたらもう少し増えますが。

 ティンカさん、ジュニアスさん、村長、オークさん、後はマリエルさんがユライさんを連れてきています。あれ以来アッシュさんがユライさんを魔法でみてますが異常はなさそうです。

 アリスさんはドラゴンのお話を今読んでますよ。

 

 クリスは一人放置されてちょっと怒ってました。はしょって説明しましたが……。

 後、ジュニアスさんのことを黙っているわけにもいかず、本人からお話してもらったらすごく怒ってました。

 信用されていないのは嫌だってことらしいです。

 ごめんなさいと皆で謝ったら許してくれたですが……。


「ジュニアス、今日は人型か?」


「はい、細かい作業はこの方がいいですよ」


「なら後でこの本、村に運んでくれないか? 馬いるか?」


「いえ飛んでいきますよ」


 なんて会話を今繰り広げてます。クリスはちらっと私を見てふうとため息をつきました。

 しかしジュニアスさんが正体を打ち明けて以来こんな感じです。

 一体なんでしょう?


「今日は俺、町に行くがお前何か欲しいものあるか?」


「そうですねぇ、新しい本が入荷しているからとってきてほしいのですよ」


「わかった」


 クリスはちらっとジュニアスさんの方を見てやっぱりため息をつきましたです。

 なんでしょう、もう!

 クリス曰く、まぁ色々あるよなってことらしいですけど。


「ジュニアス、お前は何か……」


「いえ特にありません」


首を振るジュニアスさん、おチビさん達が扉からきゃわきゃわ現れました。小さな竜を見て目を細めるクリス。


「おう、今日も王都の話を聞かせてやろうか? 時間はそんなにないけどな」


「クリスお兄ちゃん、王都のお話聞かせて!」


「商人さんのお話聞かせて!」


「うわーいクリスお兄ちゃんだ!」


 ぴょんぴょん飛びつく銀の竜さん達、子供には好かれるんですよねクリス。

 にこっと笑い竜さんたちの頭を撫でるクリス。

 結構子守をしてくれているのでジュニアスさんも助かっているみたいです。

 ご両親は何か忙しいらしく弟さん達の面倒あまりみれないようですからね。


「町に俺は行くがチョコレートでも買ってきてやろうか?」


「うーん、チョコレートかぁ」


「僕クッキーがいい!」


「甘いものがいいなぁ、だってアルジェお姉ちゃんの作ってくれたお菓子しょっぱかったんだもん!」


 悪かったですね。私が作れば絶対何かおかしな味になるんですよ。

 私がため息をつくと、私は美味しいと思いましたよとジュニアスさんがフォローを入れてくれました。

 いいんですよ慰めてくれなくても?


 弟さん達がクリスの膝にのってお話を聞いています。

 

「王都には大きな塔があるんでしょ?」


「おうあるぞ」


「その塔にはお姫様が昔閉じ込められていたんだよね?」


「そうだ、そのお姫様を助け出したのが黒い竜さんなんだぞ!」


「すごいね、すごいね!」


 王都にある時計塔に昔お姫様が閉じ込められていて、黒い竜が助けたというお話があります。

 悪い貴族がお姫様を閉じ込めて、竜が助けて……その竜が王家の守護者になったという伝説です。

 実はこれ前王家のお話でして、今の王家がタブーとしているおとぎ話なんですよね。


「お姫様を閉じ込めたのは、悪い宰相だ。長い長い金の髪に青い瞳の美しいお姫様を……」


「お姫様を宰相は好きだったの?」


「いや違う、お姫様が王子様と結ばれない様にするためだ」


「どうして?」


「お姫様は、遠い国の王子様と恋に落ちる。その王子様が宰相をやっつけるって預言があったからだ」


「ふうん、でもどうして宰相ってわかったの?」


 悪い宰相はずっと王家を牛耳ってきて、そうしてお姫様のお父様も操り人形にしていたというお話でお姫様と結婚して悪い宰相は王位につこうとしたところを、黒い竜の盟友の王子が助けるというお話でしたね。


 預言では確か宰相とは出ていませんが、百合の花を退けるとかなんとか、百合の紋は宰相の家の象徴だったとか……うろ覚えでしたけど。


「王子が百合を退けるという予言で、宰相の家の紋が百合でな」


「それで預言が宰相のことだってわかったんだね」


「そうだ」


 宰相は倒され、前王家のお姫様は黒い竜と盟約を結び、王子様と結ばれめでたしめでたしでした。

 今の王家が二百年ほど前から続き、前王家はその前ですから三百年以上前のおとぎ話です。


「そういえば、今の王家に竜の守護はないなぁ」


「竜の守護ってなあにクリスお兄ちゃん?」


「竜はたまに国全体に守護を与える盟約を結ぶ。でもなぁ、最近は少ない、確か隣国のリートレット王子が赤竜と盟約を結んだとかいうのが十年前か」


「へぇ、すごいね」


 竜の守護の力は大きいですが、それは稀です。

 竜さんは人間嫌いが多いんですよ。

 赤竜さんと黒竜さんは例外で以外に人が好きだそうです。


「そういえば数十年前に銀の竜の守護を王が……」


「クリス、その話を詳しく聞かせてくださいですよ!」


 私もそれは聞いたことがなかったですよ。アッシュさんも不思議そうにクリスを見ています。

 うーんと首をひねったクリスは、親父に聞いた記憶があって確か銀の竜の守護を王がどうとかとか考えています。


「確か王が銀の竜の守護を求めて、魔法使いを確か……」


「思い出してくださいです!」


「確か王が銀の竜の守護がある魔法使いを自分のものにしようとして拒否されたとか、親父が小さい頃に聞いた話らしい。ってこれジュニアスの親父の事か!」


「そうですよ、それ以上の話?」


「いやわからない、親父も確か3つかそこらのガキだったから知らないとか……」


 確かにクリスのお父さんは今43歳ですから、40年前のことは詳しく覚えてないでしょうね。

 私がうーんと首をひねると、アッシュさんは商人は噂に敏感ですから知っていたんでしょうねと言ったですよ。


「王は銀の竜の守護が欲しかったのですか? それでシルヴィアさんを?」


「いや、噂程度だが、やはり英雄を取り込みたいというのが一番だったと思うが」


 しかし銀の竜の守護ってそんなに欲しいのですかね? 私がじっとジュニアスさんを見るとにこっと笑いました。


「守護ですかぁ、私の守護からいつでもアルジェさんにあげますよ」


「今も守護ならもらってますよ」


「いえいえ、特別に盟約を結ぶことを守護といいます。マリエルさんとアリスさんみたいな感じですか?」


「そうなのですか」


 どうも聞いてみると相手のいる所がわかるとか、危ない目にあったら助けるためとか……。

 ふむふむ、アリスさんの能力は守護の能力もあったですか。

 守護さえあれば私はいつでもアルジェさんを守れますと私の手をそっとジュニアスさんは握りました。


「うーん、でもそれって一生に一度とかですか?」


「はいそうです」


「ならいいですよ。今も十分守護してもらってますから」


「はぁ」


 がくっと肩を落とすジュニアスさん、アッシュさんなんでしょうかこちらを残念そうな目で見てから若いっていいですねとか言うのは! 皆はまぁ仕方ないかとか言っていますよ。

 弟さん達は不思議そうに私たちを見ています。


「親父にまた詳しく聞いてみる」


「お願いしますです」


 しかし銀の竜の守護とか魔法使いとか……うーん、何か色々と昔のことが関わってきているようでした。



 


 

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