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ユライさんは今31歳で王都の魔術師ギルドに所属する魔術師さんだそうです。お父様は今年で37歳なので年下ですね。

 少し老け……いえこれは言ってはいけません。お父様だって少し頭髪が怪しくなってきています。


「マリエルは元気か? アルジェ」


「はい元気なのですよ。よく竜さんとお空を飛びまわっています」


「ほぉ、それはよかった」


 マリエルさんに会いに来たものの、二の足を踏んでいたから助かったと言われました。

 どうも魔術師になるといって村をユライさん飛び出したらしいんです。

 それから会ってないと……。

 元々村の人だったんですね。ならみんなわからないはずですよ。怪しい気配なんて元住人さんならありませんからね。

 嫌な気配とか言ってますが、ティンカさんだって村の人みんな知っているわけではありませんから。

 


「13年前でしたら私まだこちらにいましたが……ユライさんのことは知らなかったです」


「俺は町の学校に通っていて村には滅多に帰らなかったから……」


「なるほどです」


 馬にのって村に向かう私達ですが、クリスの後ろではなくユライさんの私は後ろに乗っています。

 安定性の問題でそのほうがいいだろうとユライさんが言ったのですが、クリスもジュニアスさんも物凄く嫌そうです。


「マリエルはその……まだ一人か?」


「はい独身ですよ」


「そうか……」


 二人ともそれを聞いて不思議そうな顔をしています。もう鈍いですね。ユライさんはマリエルさんのことを多分好きなんですよ!

 むう、お付き合いをしている人もいなかったはずですので、上手くいくといいですね。

 そういえばマリエルさんはたまに黒髪のお友達が王都にいるって言ってましたです。

 ユライさんのことなのですよ!


 だから二人はもしかしたら……。


「マリエルは好きな人いるわよユライ」


「ティンカさんは黙っていてくださいです!」


 ユライさんが黙り込んでしまいました。私の懐にいるティンカさんが余計な事言うからですよ。

 好きな人はいるって聞きましたが、ユライさんのことかもしれないじゃないですか!

 

「そうか」


「……でもでも付き合っている人はいませんよ!」


「マリエルの好きな黒髪の素敵な人ってユライじゃないわよ。だってユライ素敵じゃないもん!」


「ティンカさん!」


 黒髪は確かに珍しい色じゃありません。うちの弟アークも黒髪です。

 お母様が黒髪だったらしいのです。

 それに村の人にも黒髪は多いです。


「会いに来ただけだならな……あいつももう30だ本来は結婚して子供の一人もいる年だから」


「でもでも!」


「いやお前達に会えて助かった。マリエルと会うのは13年ぶりで少し……」


 ジュニアスさんとクリスもやっと気がついたようです。

 何か渋い顔をしていた二人が大丈夫ですよとユライさんを慰めにかかってます。


「マリエルさんはまだ独り身ですから、ユライさん大丈夫です!」


「ユライさん、俺はマリエルさんとやらのことは知らないが、でも30まで独り身だっていうのは……」


 いやなんというか二人は必死ですよ。色恋沙汰は苦手ですが、二人はお似合いですよ。応援したいです。


「会えたら色々と話してみるすまんな」


 マリエルさんは栗色の髪をした素敵なお姉さんです。私達にとても優しいです。

 竜使いとしては優秀で、村でもピカ一です。

 しかしユライさんのこととは思いませんでしたが黒髪の素敵なお友達さんが王都にいるって言ってました。なら絶対ユライさんのことです!


 ユライさんがにこっと笑うと、暗いとかいったのが悪いと思うくらいよい人に見えました。

 顔立ちは端正ですが、表情が暗いので暗く見えたんですね。


 ぶすっとしているというか無愛想というか……。

 少しおじい様に似ています。おじい様も孫娘馬鹿と言われる時はそうでもないですが、王都にいて貴族さんたちに会う時がこんな感じでした。


 後、ティンカさんが無事だったことを妖精の長さんに伝えないと駄目ですね。

 怪我はしていますが、よく口が回るので元気ですよ。


「マリエルとあんたじゃ釣り合わないわ!」


「ティンカさん黙っていてくださいです」


 そうこうしているうちに村に着きました。村の入り口にオークさんがいて大丈夫か? と声をかけてくれましたよ。


「ユライ、あんた……」


「久しぶりだなオーク」


「あ、まぁ久しぶりだな」


 オークさんと小さい時に会った事があるらしく二人は顔見知りのようです。

 ふむふむ、何か事情がありそうですね。


「マリエルに会いに来たのか? ユライ」


「ああ」


「あんた……待たせ過ぎだ。立派な魔法使いになって迎えに来るとかぬかしておいてもう13年だ」


「ああそうだな」


 やっぱり二人は何か約束をしていたようです。ぶすっとした顔でオークさんがマリエルさんの家に向かって歩き出します。

 余計な口出しをせずに私達も後に続きました。


 元気だったか? などのやり取りを二人はしていますが、どうもマリエルさんを立派になって迎えに来ると言ったらしいですよユライさん。

 二人はやっぱり……。


「マリエル、おいまだ起きてるか?」


「はーい、オークどうしたの?」

 

 マリエルさんの家について扉を開けた瞬間です。

 ユライさんの顔を見たマリエルさん、口をぱかっと開けて目を見開きましたです。

 あう、すごく驚いた顔をしていますよ。


「ユライ……どうして今更」


「約束を果たしに来た。今年ギルドの一応長の補佐になってだなその……」


「あんたね、13年も普通待たせる? あんた最低! 私、もうおばさんよ……」


 涙がマリエルさんの目から後から後から溢れだします。バツが悪そうなユライさん。

 そしてマリエルさんはたっと走ってユライさんにぎゅっと抱きつきました。


「ずっとずっと待っていたのよ。このバカバカバカ!」


「馬鹿はさすがにひどいな」


「馬鹿じゃないの、馬鹿、馬鹿!」


 ぎゅうっとマリエルさんを抱きしめるユライさん、照れくさそうです。マリエルさんは泣きじゃくりながらユライさんの背中をぽかぽか叩いてます。

 二人は強く抱きしめあい、お帰りなさい。ただいまと優しく言葉ををかけあったのでした。

 ジュニアスさんはぼそっと羨ましいっていってましたが……うんそうですよね。幼馴染同士の恋が実るって感動的なのです。

 そう返したら微妙な顔をされましたですよ。

 ティンカさんが鈍すぎるって……クリスまで頷いてますよ。あぅ、だからどこが鈍いか教えてほしいのですよ!

 




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