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 ジュニアスさんが声に耳をすませどうも町の方ですねと言いました。

 だけど……あんなところまでティンカさんはいった事ないですよ。


「捕まった可能性は大きいです。しかしティンカはドジとはいえやすやすと外の人間に捕まえられますかね?」


「町に行きましょう!」


「そうですね」


 少しジュニアスさんは躊躇しています。気持ちはわかります。

 町は村と違って私達の存在を知っている人は少ないのです。

 銀の竜は伝説って言われてるくらいですからね。


「私だけで行きましょうか?」


「いいえ……しかし人型になってもあそこは人が多すぎて少しよどみがありすぎます……」


「どうしても人が集まると闇が増えますからね」


 銀の竜さんたちは人の悪意に弱いです。

 村の人は基本のんびりしてますから悪意はあまり持ちません。

 うちのおじい様や私もそうらしいです。それが竜使いの条件みたいなのです。

 竜にとって、特に銀の竜さんは人の悪意にとても弱いのです。

 前に宣伝をお願いした時は、悪意のあるところを避けて行ってもらいました。

 お若いお嬢さんたちはきゃっきゃしてますから、意外に強い悪意は少ないそうです。

 まあうちのおじい様が統べる領地だからでしょうね。町でものんびり屋さんが割と多いです。

 でも中央部になればやはり悪意は増えるんですよ。特に夜は喧嘩等も増えます。



「でも……あなただけを町に行かせるわけにはいきませんよアルジェさん」


「クリスについてきてもらいますから……」


「いいえ私がアルジェさんをお守りします!」


 ジュニアスさんがまっすぐに私を見て言いました。でも無理をさせるわけにはいきませんよ。

 昔から私を庇って怪我などをさせてきましたから……。


「人型でもジュニアスさんは目立ちます。クリスのほうがいいですよ」


「じゃあクリスさんと私とアルジェさんで……」


「わかりました。でも体調が悪くなったらすぐ言ってくださいね?」


 ジュニアスさんが寂しそうな顔で私を一瞬見ます。ドラゴンさん達が基本あまり人と交流したがらなかったのは人の持つ強い悪意に弱いというせいもありました。

 火の竜さんや黒竜さんは耐性があるようで、王都にきたりしていたようですが……。


「わかりました。申し訳ありません……倒れたりはしなくなりましたから」


「いいえ……」


 王都からきたおじ様と対峙した時も倒れたりはしなくなっていたようなのですが、昔ドラゴンさんを狩りにきた商人さがんいまして、銀の竜さんたちと対峙した時にジュニアスさんは倒れ、数日寝込んだんです。

 ジュニアスさんのお父様やお母様、それに私のおじい様達がドラゴンさんたちを守ったのですが人の悪意というものに弱いと私は初めてその時知りました。

 だって私とジュニアスさん、ティンカさんはずっと一緒に遊んでいましたがジュニアスさんは元気でしたからね。

 おじい様のお膝の上で遊んだりもしていたくらいなんですよ。


「私はもっと強くなりたいです……」


「いえジュニアスさんはそのままでいいですよ」


 私はジュニアスさんの上にのって図書館を目指します。ついた途端、悲しそうにジュニアスさんがぽつりと言ったのですよ。

 クリスに姿を見せたら駄目なので人型になりますが……。

 とても寂しそうな表情をしていました。


「でも私は弱いです。アルジェさんが王都に行った時も手紙のやりとりしかできませんでした」


「王都なんかに来たらジュニアスさん死んじゃいます!」


「え?」


「あそこは悪意の塊なのですよ。そんな所にジュニアスさんが来るっていったから私は駄目て言ったのです。でも里帰りもできずすみませんでした」


 私達が10年も直接会えなかったのはそういう理由もありました。

 それに私がおじい様の所に行くことをよい顔をしない人も多かったのでですよ。

 王太子の婚約者ともあろう人が……と影口をよく言われましたです。

 だからお母様やお父様は心配して、私をおじい様のところに行かせることができず、おじい様が王都に来ていたのです。


「これからはずっと一緒なのです! ティンカさんを探すのも手伝ってくださいです!」


「はい!」


 クリスに声をかけるともう準備をしていてくれていました。

 しかし……町にいる人は沢山過ぎてどこのティンカさんがいるのか探すのは一苦労かもしれないです。

 馬をクリスはひいてきました。私はクリスの後ろ、ジュニアスさんは別の馬に乗ることになったのですが、やっぱりジュニアスさんは何処か寂しそうな感じなのです。


 でも町は村よりももっと遠いです。

 ティンカさんが飛んで行ける範囲だとは思えません。

 捕まったのなら見世物にされたり? 嫌な考えが頭をよぎります。

 絶対そんなことはさせないと決意して、町に向かったのでした。

 

 

 

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