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「雲行きが怪しくなったようだぜ」


「え?」


「王家がかなりもめてる。それからあの婚約者になったクリスティーナとかいう女、どうも裏があるようだぜ」


 私は膝に弟のチビドラゴンさん(人型)を乗せながら、読み聞かせをしていました。

 定例となりました絵本の読み聞かせ会、今は村の人も少しきてくれてるのですよ。

 実はクリスが馬にのって何人かの人を連れてきてくれてるのです。

 移動図書館は今見積もり段階でまだまだ無理そうですが、クリスがお手伝いをしてくれてるのですよ。

 ジュニアスさんもです。

 ドラゴンさんの姿で本を運んだりしてくれてるのです。えっと実はクリスには今も内緒なのですが……。


「ジュニアスももう少ししたら来るそうだ」


「はいですよ」


 さんがとれてジュニアスと呼び捨てになってます。あれからもう1週間になりますかね。

 一応お金は届いたのですが、私のことが心配だからとまだクリスは滞在してくれています。

 人が増えましたですね。ありがたいことなのです。

 王都のおじ様、つまりクリスのお父さんですね。から手紙がきて私を連れていこうとした理由はわからないが、かなり王家がまた揉めてきているという情報が書いてあったのですよ。


「お前をまた婚約者にしようと考えているのかもしれないぜ」


「え?」


「血筋や家柄から言ってお前しかいないだろ?」


「嫌なのですよ!」


「そうだけどさ」


 ジュニアスさんがドラゴンさんだということを打ち明けてもいいかなと思ったのですが、やはり商人さんだということを思い出し私は躊躇しています。

 だって銀の竜の鱗は高いお金で売れます。

 無理やりはがすと鱗は痛いです。私を昔庇って崖から落ちてジュニアスさんは怪我をしました。

 まだちゃんととべない時でしたから……。その時鱗が取れてとても痛そうだったのですよ。

 痛くないって言ってましたが絶対痛いのです!


「うーん……」


「腹でも減ったのか? うな……」


「お腹は減ってないのですよ!」


 デリカシーがありませんよ。考え事をしていただけなのです!

 図書館は賑やかになってきたのです。読み聞かせ会、紙芝居。

 お子さん向けのイベントをはじめてみましたら好評でした。

 ジュニアスさんの弟さん達も大喜びなのですよ。


「アルジェお姉ちゃん、王子様とお姫さまのお話続き読んで!」


「はいですよ」


 司書としての務めです。しかしこれ単位にはありませんでしたよ。独学です。

 弟によく読み聞かせしてましたからね。

 弟さん達の面倒を図書館で最近はジュニアスさんはみています。

 滞在時間も長くなりました。

 しかし人型ばかりとっているのでドラゴンさんの姿が懐かしいです。


 村の人もジュニアスさんのことは内緒にしてくれていますです。

 商人というものは警戒すべき人でしたから、でも寂しいです。

 いつかクリスに打ち明けられたら嬉しいですね。


「お前の親父さんはなんて言ってる?」


「お父様はなぜかわからないと言われてます。相変わらず私の婚約は破棄されたままらしいです。それに王家からは何も言ってきてないらしいですよ。おじい様も同じ答えなのです」


「うーんしかし謎だな……」


「ですねえ、一応護衛をと言われましたが、さすがにお断りしました。王家にたてつくとか誤解されたら今度こそ領地没収などされそうですよ」


「そうだな、やりかねん」


 爵位を剥奪、領地没収などされたら弟はどうなります? 父や母は? おじい様がお助け下さるかもしれませんが、いえお助けは下さると思いますが、連座でおじい様まで爵位剥奪とかやりかねませんよ。

 クリスも王家の事はよく知っています。

 クリスのひいおじい様は商会を広げ過ぎて、酷い目にあったそうなのですよ。

 収支を疑われて、牢屋に入れられて殺されるところだったらしいです。

 あまりよくはしりませんが、財産没収でクリスのおじい様とお父様は元に商会を戻すのに酷く苦労したと聞いたのです。

 

「ジュニアスと俺がお前のことは守るから安心しろ」


「はいです。ありがとうございます」


「そういえばお前の幼馴染はもう一人いるそうだが」


「はいです。妖精さんなのです。でも今は夜会で忙しいそうです。妖精王の花嫁選びを冬至にするそうです」


「ふうん」


 妖精さんは王都にはいませんが、利用価値がないので普通にクリスにも存在をお話できます。

 利用価値がないというか……気まぐれで役に立たないとか言われているので……。

 ティンカさん曰く、大した存在じゃないって言われてるのよねとのことです。


「しかし、平和だな」


「ええそうですね」


「しかしいつ王都から誰が来るかわからんから油断するな」


「はいですよ」


 平和で穏やかな第二の人生、でもなにかわからない出来事に巻き込まれているようです。

 夏になったら釣りに行こうと釣竿を作ろうとしていましたがそんな所じゃなさそうですよ。

 ジュニアスさんがにこにこ笑いながら本を入れた袋を背負って山道を歩いてきました。私が手を振ると嬉しそうに手を振り返してくれました。

 うー、人型にならないとだめなのが面倒ですよねすみませんです。


「続けばいいな……」


「はいですよ」


 私が望んだのはこんな穏やかな日々です。だからだから……。

 チビさんたちがお姫様は幸せになったんだねと嬉しそうに笑います。

 腰痛が治った村長が新しく入った農具の本を借りにきてくれました。小さな子供さんを連れたお母さんがクリスに連れられて紙芝居を聞きにきてくれましたですよ。移動図書館よろしく私が村に行っていいですね。

 私は心で祈りました。神さまにお願いしました。

 この幸せが続きますようにって、図書館が賑やかになるのが私の夢なのです。

 数日後、カウンターに私が座っていると、クリスがやってきて……王太子殿が私を狙うのがわかったかもと言ってきたのです。

 

 

 

 


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