13
「ふう……」
「なぁ、お前、ジュニアスさんのことはどう思ってるんだ?」
「はい?」
チビさん達がジュニアスさんにまとわりついてるです。相手をずっとしていて疲れたですよ。
すごいですよジュニアスさん、根気強いです。80回目位になるのでしょうか? また絵本を読んであげてるです。
カウンターに座る私を見てクリスが聞いてきました。
「お友達さんとだと思ってますが」
「友達?」
「はいです」
「それ以上などの気持ちはないのか?」
「はいないですけど……」
実際、それ以上ってなんでしょうねぇ? なんとなくそんなことを思いながら私はお茶を飲み干しました。
色恋沙汰ってことですか?
私はティンカさんじゃないです。妖精王のお妃になりたいなんて思ってま……いえ違いますね。
「私はそういうものは嫌いです」
「どういうことだ?」
「王太子妃の候補、婚約者として私がいた10年間は地獄でしたから……」
実際私は王太子殿を愛していませんでした。これは父を恨んだものですよ。
実際毎回会う度に鏡持参なのですよ。私のほうをろくに見てない人なのです。
外見だけは及第点だなと私を見て言ってましたしねえ。
私はもうそれを聞いてから王太子殿を愛そうと言う気持ちなんてとんとなくなったのです。
一応、婚約者としては愛さないととなんて思ってましたよ。
でも愛そうとして愛せるものではないのですよ。
「地獄か……」
「はいそうです。色々とありましから、私はもう色恋沙汰には関わりたくないのですよ」
「ジュニアスさんのことは?」
「だからお友達なのですよ」
「俺もか?」
「はいなのです」
クリスは少しさびしそうに笑いました。でも私は実際にこの10年ずっと我慢してきたのです。
鏡ばかり見る王太子殿、彼が真実の愛に目覚めたならそれはそれでいいのです。
クリスティーナさんはお可愛らしい方でしたからね。
いつも私は悪口を言われてきました。王太子妃にはふさわしくないと母の悪口や弟の悪口も言われたのです。
ただの辺境伯の娘、あの銀の髪や緑の目は気持ち悪い……。私も色彩のことはいわれたのです。
碧眼とはいえ、あまりにも深い緑で異質だったです。
弟のことは一大スキャンダルでずっと言われ続けましたですよ。
面とむかって言わないのがまた嫌でしたね。
一応私は公爵令嬢でしたから、下の人は言えないのですよ。
むう、影口というものは私大嫌いです。王太子殿は大好きだったようですがね。
「お前も大変だったな」
「過ぎたことですから」
「そうか」
実際に宮廷は私には向いていませんでした。
いつも笑顔を顔に張り付け、神経をとがらせ、社交の場にでるのです。
魔法の才能がなまじ少しばかりあったばかりに他の候補も現れなかったのです。
魔法の才能を持つことが必須条件で、最近かなり魔力を持つお嬢さんが少なくなってきていましたから。
クリスティーナさんは魔法の才能があって認められたようなものなのです。
「ここでのんびり余生を過ごすのですよ」
「余生ってお前……俺と同い年じゃねえ?」
「17歳ですよ」
「余生って言われたら俺はどうなる?」
「そうですねえ。すみません」
釣りもしてみたいです。ジュニアスさんが楽しいって言ってました。
私は王都に戻りたくなかったのですよ。クリスティーナさんに感謝すらしていました。
王太子殿には悪い事をしたのですが、愛そうと思って色々やってみても趣味も合わない人と一生を過ごすのは苦痛ですよ。
本が王太子殿大嫌いだったのです。
お勉強が大嫌いな人でしたからねえ。
「本好きなことが私の伴侶とやらの必須条件ですね!」
「生涯独身とかいってなかったか?」
「うーん、今はそのつもりですが、将来的にはお相手が現れるかもしれません」
「矛盾してるような気がするが……」
「過去は過去、未来は未来ですが、現在の私は色恋沙汰には関わりたくないのですよ」
「わかったようなわからんような……」
本が好きな人がいればですね。
クリスは本が好きです。商売人ですから、商いの本を愛してます。
ジュニアスさんはお料理や家事に関わる本が好きですよ。
ティンカさんはおしゃれの本ですね!
私のお友達はみんな本好きです。ありがたいことなのです。
クリスが好きなようにしろよまだ17なんだからと私の頭を優しく撫でてくれました。
ちらっとジュニアスさんが私たちを見て、一瞬微笑みましたが……う、ちょっとだけやっぱり怖かったのですよ。




