一人で何でもできる人間なんていないのだからお互いの欠けたものを補いつつ力を合わせればいいんだよ
アナの趣味は絵を書くこと。
少しデフォルメされた絵だったりするがその腕はかなりのものだ。
しかし今日はスケッチブックに向かいながらため息を付いている。
「そんなにため息ばかりついていると幸せが逃げると言うよ」
私はアナの後ろ側から声をかけてみた。
「あ、王子様……私はなんでこんなに弱いのかなって思うと……」
「確かにアナの魔法はそんなに強力じゃない。
おそらく射程や範囲もそれほど広いほうじゃないのだろう」
「はい……」
「でもね、私が貯められるマナの量はさほど多くない」
「さて状況を再確認するか。
ステータスウインドオープン」
私がそういうとホログラフのタッチパネルのようなモニターが中空へ現れデータを示した。
王子シャルル
王子レベル:4
マナ量:800
マナ回路範囲:50
経験値:400
所持金:800
レベルが上がりマナ量は増えているがまだ4桁には達しない。
「私のマナではRクラスやSRクラスでも比較的弱めのものしかマナを供給しきれない。
そうなればウォー・ドレスは起動しないし力を発揮することもできない」
「そうなのですか?」
カロル
レアリティランク:R
クラス:双剣使い:接触しているすべての敵に2回の物理攻撃
レベル:4
攻撃力:230+10
移動速度:50
攻撃速度:40
足止め数:2
必要マナコスト:200
所持品:分厚い本(攻撃力+10)
ミシュリーヌ
レアリティランク:R
クラス:大剣使い:単体の敵に物理攻撃
レベル:4
攻撃力:1445
移動速度:30
攻撃速度:80
足止め数:1
必要マナコスト:500
アナ
レアリティランク:R
クラス:鈍足魔法使い:魔法範囲攻撃でダメージを与え鈍足状態にする・飛行ユニットに攻撃できる
レベル:4
攻撃力:545
移動速度:30
攻撃速度:80
射程:140
範囲:120
必要マナコスト:300
シュゼット
レアリティランク:R
クラス:弩使い:射撃攻撃で単体の敵に物理攻撃・飛行ユニットに攻撃できる
レベル:4
攻撃力:745
移動速度:30
攻撃速度:60
射程:210
範囲:単体
必要マナコスト:400
「それにアナだって間違いなく強くなっているよ」
「そうでしょうか……正直あまりわかりません」
「それにね。
仮にとても強いUR級の人が私達のもとで戦ってくれることになったとしても、一人で何でも対処できるわけじゃないよ。
魔法使いや射手に関して基本的に足止めはできないし、魔法使いは広い範囲へ攻撃できても一撃の威力では射手や大剣使いとかにはかなわないからね。
それぞれが得意な状況もあれば苦手な状況もある。
だからこそ私はそれをどう活用するかが大事だと思う。
そしてアナの多数の敵の足を遅くする能力は状況によってすごく役に立つようになるはずだよ」
「私だけでは足止めできても敵を倒せなくても……ですか?」
「うん、そのためにシュゼットやミシュリーヌがいるわけだしね。
自分に足りないものを仲間に補ってもらうのは決して恥ずかしいことじゃない。
そもそも私は前線で戦えないのだからよほど役立たずになってしまう」
私がそう言うとアナはくすっと笑った。
「たしかにそうですね。
王子様の役割は私達が傷つかないようにすることと、一番良い行動を指示すること。
私達の役割はその指示に従って敵を足止めしたり倒したりすること。
それでいいのですよね」
「うん、それでいいと思う。
そして強い力がなくても平和に暮らせる国を取り戻す。
それで何か問題があるかな?」
「いえ、無いですね。
私これからもがんばります」
吹っ切れたのはほほえみながら言うアナに俺はうなずいた。
「うん、これからもよろしくな、アナ」
「はい!」
いろいろな状況に対処できるような多様性を揃えるのは大事なことだと思うし、貯められるマナの量やその回復速度なども考え合わせればコストが高くて強いものばかりいてもだめなのだ。
特にまだまだレベルが低い現状では高レアなものがいても宝の持ち腐れに成るだろうし。




