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【完結】【書籍化】錬金術師のなかなかスローライフにならない日々  作者: コウ


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212/214

書籍化発表記念番外編.英雄に会いに行く

お久し振りです。

「神殿から新たな御神託の報せと、関連して幾つかございます」


 内務(うちつかさ)大臣であるルシウス・バーダ公爵は、王城内にある小さな神殿を管理する神官から受け取った書状を、その場で三回ほど精読してみせた。


「神託の内容は……これだけだと意味不明だな……それにグリーンの魔石で動く結界杭? 事実なら朗報だが……それを齎したエルフがサンテールで王家との会談を希望……神殿ではどのように解釈しているのかね?」

「そこに書かれている通りです」

「ふむ……」


 ルシウスは、その情報を事前に別ルートから得ていた。

 具体的にはサンテール伯爵領からの早馬が届けた書状である。

 コンラード伯爵と嫡子のイゴールの連名で、神託とレンというエルフに関する情報が書かれたそれには、神官が持って来た書状とほぼ同じ話が異なる視点から書かれていた。


(神託について虚偽を述べれば天罰が下る。天罰なしに届いた神託である以上、これは事実。ならばどうする?)


 英雄の時代から来たエルフがいる。

 そのエルフの望むようにさせろ。

 それで世界が救われる。

 そう神託があった()()()


 そのエルフは中級の鍛冶師、錬金術師に至る方法を知っている。

 その職業技能があれば、結界杭を英雄の時代の、グリーンの魔石で稼働する状態に戻すことができる()()()

 既に、聖堂に隣接する村の結界を使って、その実験は行われた()()()()

 そのエルフを自由にさせることが、世界を救う事に繋がるという意味の神託があった()()()


 サンテール領からの書状に記載された要約はそういうものだった。


 神官が持って来た書状は、それが伝聞調ではなく断言・断定になっている。


「それで、神殿としてはどのように動くおつもりかな?」

「通例なれば、これほどの大事を報せる御神託。神殿をあげて動くべきでしょうが……」

「ふむ。神託には、そのエルフからの要請があれば、それがどのようなものであれ、神殿の協力内容に制限はないとあるが、これが遵守されるわけだな?」

「神殿は、『要請なき場合は余計な手出し口出しは()べからず』と読み取っており、それを遵守して裏方に徹します。それは神殿以外にも言えること」


『お前達も余計な手出し口出しするじゃねーぞ』という意味の言葉を付け加える神官に、ルシウスは善処する。と述べるに留める。


「……で、(くだん)のエルフは王家の者との面談を要請しているわけか……これについては?」


 ルシウスの問いに、神官は頭を下げる。


「御神託に従っていただきたく」

「王家の者との謁見理由は、神託によるものとすれば通るが……エルフか」


 英雄の時代から来たエルフというのがどういうものか、ルシウスには分からなかった。

 サンテール家からの書状には、

『やや理屈っぽいきらいがあるが、だからこそ理詰めで話せば相互理解は容易だ。だがヒトの身分制度にあまり慣れていないので、そこはご寛恕いただきたい。などという人物評がある。

 神殿からの書状には、そもそもレン本人の情報が少ない。

 どちらの情報にも普通ならエルフが重視する氏族や森の情報が抜け落ちているのだ。


(ヒトの社会に溶け込んでいるエルフではない場合、情報不足のままヒト種が前面に出るのは得策ではないかも知れんな)


 森のエルフには面倒くさい挨拶の慣習があると知っていたルシウスは、その挨拶をルシウスの同僚のエルフに任せようと考えた。


「エルフが相手であれば外務(そとつかさ)にも協力して貰うか……」

「……慣れた方がいらっしゃるのであれば、それが宜しいかと」

「後は王家の誰に頼むかだが……ふむ、これは人選に苦労しそうだ……まず、ひとつ。私の権限でできることとして、謁見は許可する。時期については追って通達する。その場に王家の者以外がいても構わぬな?」

「それはもちろん。護衛も必要でしょうし、実務に近い人間もいるべきかと」


  ◆◇◆◇◆


「……で、そのエルフとの交渉に、外務(そとつかさ)としてレイラ殿にも出席願いたいのだが」

「……」


 外務(そとつかさ)の大臣位にある、エルフのレイラの元を訪ね、ルシウスはそう言った。

 レイラは小さく溜息をつくと


「出席については了承しましょう。だが、相手の氏族は? どの森から来たのかは? 何も分からぬでは、挨拶の準備もできませんぞ?」


 と答える。


「それは……確かに。ふむ、出席してもらうのだ。もう隠す必要はないな……神託では、英雄の時代のエルフだそうだ。名はなんと言ったか……レーン? いや、レンだ。残念ながら氏族や森については不明なのだ。サンテール家、神殿、いずれのルートでもその情報はない。重要と思わなかったんかも知れんな」


 レイラは天井を見上げて、溜息に見えるように小さく深呼吸をした。

 その名前は幼い頃から幾度となく、母から聞かされた名前と同じだった。だからレイラは、(はや)るまいと自らに言い聞かせながらも


「……英雄の時代のエルフでレン? 氏族不明……そうか、ならば外務(そとつかさ)のエルフ担当の私の仕事だ。この目で確認させてもらおう」


 と、職責によるものであるとアピールする。


「助かる。いつ呼ぶのか、王家側で誰が担当するのかはこれから協議する。決まったら報せよう」


 そう言って退室しようとしたルシウスの背にレイラは声を掛けた。


「待たれよ、ルシウス殿。先の話では、相手は神託において自由にさせておくよう言われた者。その者に対してヒト種の王が来いと命じるのは、果たして神託に沿った行いだろうか?」

「……確かに。自由にさせるなら、呼び付けるのは間違いかも知れん……が、王家の誰を連れて行くにせよ、それは王家を軽んじる行為だと騒ぐ者は出てくるだろうな」


 レイラの意見はもっともだと思いつつも、王家を守ろうとする善意の意見も決して軽んじて良いものではない。

 身近にひとり、そういうことを言いそうな者がいるのを思い出し、ルシウスは溜息をつく。


「神殿からの書状を見せて貰っても?」

「ああ」


 ルシウスから書状を受け取ったレイラは目を通し、なるほど、と頷いた。


内務(うちつかさ)の長にお尋ねする。イエローの魔石は十二分にあるのですか?」

「足りぬという事はないが……余力は尽きかけている。このままでは、遠からず街や村を間引く必要が出てくるだろうな」

「結界杭を英雄の時代の状態に戻せるというのが事実であれば、それはその問題を解消して余りあるのでは? だとすれば、一刻も早く話を聞きに向かうべきでは? そのように言えば、王は無理でも王子、王女達ならば動いてくれるのでは?」

「……そうか……現在の危機的状況を改善する一手のためとあらば……だとすれば……うむ。何とかなる。してみせよう……レイラ殿、感謝する。それと、或いは今日明日の内にサンテールの街に向けて馬で発つことになるかも知れんが……」

「自分の準備だけならいつでも行ける。出立が決まったら声を掛けてほしい」


  ◆◇◆◇◆


 レイラは手紙を用意し、少し迷ってから、それを引き出しにしまった。

 母であるライカに一報を入れようとしたのだが、まだ本人であると決まった訳ではない。


 仮にライカが探すレンなら、黄昏商会の名前を出せば、信用を得やすかった筈なのにそうしていない。

 単なる同名の可能性もある。とレイラは考えていた。


 だがそれでも、これまで英雄が戻ってきたという話は聞いたことがない。

 もしも英雄の時代のエルフというのが事実なら、ライカとレイラが探すレンの手掛かりになるかもしれない。

 だから、仮に目的の人物でなかったとしても、会って話を聞かねばならない。


『英雄に会いにサンテールの街に行く』


 それだけを記した手紙を雑に畳み、ライカに手紙を届けてほしいと書いたメモを付けて、黄昏商会に届けるように部下に命じる。


「もしもレン(ご主人)様なら、押さえつけてでも話をする」


 神託に沿うという話をどこかに放り投げ、レイラはそう決意するのだった。

コウです。

タイトルでお気付きの事と存じますが。

本作

『錬金術師のなかなかスローライフにならない日々 』が

ぶんか社さんのBKブックスから書籍化決定しました。


これもひとえにこれまで読んで下さっていた皆さんのお陰です。


イラストはひづきみや様。


とても綺麗で格好良くて可愛く描いて下さいました。

早く表紙をお見せしたいところですが、もうしばらくお待ちください。

しばらくはひとりでニヨニヨ眺めています。


出版時期の公式アナウンスはまだですが、Amazonでは予約可能になっていて、そこに記載があります。

なので、発売日は多分その辺なのかな? と思ってます(が、予定は未定)。


皆さんご存知の通り、スロースタートで風呂敷広げまくった物語ですが、可能なら完結までお付き合い頂けると幸いです。


買って楽しんで頂ければこれ以上の喜びはありません。


現時点ではまだ不明情報もありますが。

発売日その他、公式発表がございましたら追って活動報告などで情報を出して参ります。

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[一言] わーい、お久しぶりなのだ! 書籍化おめでとうございます
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