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防御特化と追加。

「さてと……追加されたアイテムはこんなところか」

カスミは新しいマップが追加されたり、イベントがあったりする度に四層にやってきて、新しい家具などが増えていないかをチェックしているのである。

その際に、家具のためにとちょこちょことクエストをクリアしたりもして、この階層に限れば誰よりも隅まで探索していると言っても過言ではなかった。


「追加されたクエストがないかも見てくるとするか」

七層まで実装された今となっては四層のモンスターも弱く感じるというものである。

カスミは息抜きに以前多くのクエストが発生していた酒場へと向かう。

酒場の中では、多種多様な妖怪達がそれぞれのテーブルでガヤガヤと話をしている。

カスミにとっては聞き慣れた会話であり、見慣れた顔ぶれだったが、酒場の隅のテーブルにふと目がとまる。

そこには器用に椅子に座っている大きな蛙の姿があった。


「あれは……見ない顔だな……」

カスミがそのテーブルの方に近づくと、ポンっと青いパネルが浮かびクエスト名が表示される。


「【遠き地の霧の底で】?……今回に合わせた実装か……?」

カスミは笑みを浮かべると、期待を胸にクエストを受注する。

すると、目の前の蛙が話しかけてきた。


「おっと、聞きたい話でもあるのかい?」


「ああ、そんなところだ」


「ケケッ、そうだな……面白い話がある……ただまあ信じるかは分からないがね」

そう言って蛙が語り始めたのは霧に煙る谷の底での話だった。


「何でも化物がいるって話でな。そんなものがいるものかと度胸試し向かったものさ。だがなあ……あそこにはいる。それもゾッとして動けなくなるような奴がな」

詳しく聞かせてくれと続きを求めるカスミだったが、そこで蛙は口をつぐむ。


「アンタ、向かう気だろう?……ケケッ、やめときな。力がなきゃあ生きて帰ることすらできないだろうよ。ま……続きはそうだな……アンタが強ければ話してやるよ」

そう言ったところで、クエスト内容が更新される。内容は指定されたモンスターを倒してくるというもので、四層だけでなく、五層、六層にも行かなければならないものだった。

少しの息抜きのつもりだったカスミは驚いた顔をしたものの、次の瞬間にはこれを進めない手はないと酒場から駆け出していた。

間違いなく最新のクエストを見つけることができたことで、ワクワクして自然と笑みが溢れる。


「ふふっ……さて、鬼が出るか蛇が出るか……」

まずは四層からだと、カスミはさらに速度を上げてフィールドへと向かっていった。


「まずは……ふむ、西の小鬼か」

四層でやらなければならないことは雑魚モンスターの小鬼の撃破である。ただ、一体一体は雑魚でも、一度に大量に現れる性質があるため、ソロとなると馬鹿にできない。

カスミが目的地に着くと、小鬼が小鬼を呼びワラワラと集まってくる。

今回は一体目の小鬼を倒してから一定時間内に目標数の小鬼を倒さなければならない。

カスミは刀を抜き放ち、煙と共にその見た目を変え、小鬼を見据える。


「【武者の腕】【心眼】!」

カスミは戦闘態勢に入ると、二本の腕を召喚し、メダルで獲得したスキルを発動する。


【心眼】

効果時間一分 五分後再使用可能。

モンスターの攻撃と、プレイヤーのスキルによる攻撃の命中範囲を事前に可視化する。


【心眼】を使用したカスミの視界には、小鬼の持つ金棒が振り下ろされる軌道が事前に赤く表示されている。つまり、そこにいなければダメージを受けることはないというわけである。


「サリーの視界はこんな風なのだろうな……【血刀】!」

囲まれているとはいえ危険な場所は全て見えている。カスミは落ち着いて体をひねり回避すると、【血刀】を発動し刀を液体化させ、鞭のように振るって広範囲の小鬼を薙ぎ払う。

近くの小鬼は両側に浮かぶ刀を持った腕が勝手に斬り裂いていってくれる。

カスミはただ攻撃力を高めるのではなく、より戦闘を安定させるためにメダルでのスキル獲得を利用したのだった。

近距離も中距離も対応できる上に、防御能力も高まったカスミのソロでの性能はかなりの高さである。


「一分……よし、【心眼】の効果中に終わったか」

キンッと音を立てて刀が鞘に収まった時にはワラワラと集まっていた小鬼は全て光となって消え去っていた。


「やはり【血刀】も便利だな。次は五層か」

カスミは第一の課題を軽くこなして、五層へと向かうのだった。


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