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5つの頭と守り神

「はぁ………初っ端から人海戦術かよ」


 蒼白い光で照らし出された純白の通路を進みながら、俺はこの海底神殿で受けた〝歓迎”を思い出しつつ悪態をついた。


 潜水艇で上陸した俺たちを、無数の石像が待ち構えていたのだ。何体の石像が襲いかかってきたのかは数え切れなかったけど、あいつらを殲滅して進むのではなく、立ち塞がった最低限の奴らだけを倒して神殿の中へと逃げ込んだのは正解だったかもしれない。


 銃という武器を使う以上、持久戦だけは絶対に避けなければならない。弾薬が湯水のように備蓄してあるのならば持久戦でも問題ない。だが、俺の能力で生み出した武器に用意される弾薬の数は最初に装填されている分と、再装填リロード5回分のみ。しかも、ステラの持つGSh-6-30のような大型ガトリング機関砲などの重火器は再装填リロード2回分か、再装填リロード用の弾薬すら支給されない場合がある。


 この能力を駆使して戦っている以上、スキルで補っても焼け石に水である。それゆえ、持久戦は好ましくない。


 あの石像たちがひしめく広場を突破し、神殿の中へと逃げ込んだ俺たちは、蒼白い光で照らされた神殿の通路を進んでいた。相変わらず壁や床は純白の石畳のようなもので作られていて、壁には壁画のようなものが刻まれている。古代文字も見受けられるが、ステラは解読できるだろうか。


 壁の一部や床の一部はガラス張りのように透明になっており、そのガラスの向こうには、光に照らされた美しい海中の光景が広がっていた。


 本物の光景なのだろうか? それとも、あのガラスのような透明な部分はモニターの画面のようなもので、それに映像を映し出しているだけなのだろうか? 


 海中に屹立する日光の柱。ダークブルーとライトブルーのグラデーション。蒼で支配された世界の中を泳ぐ、小さな魚の群れ。人類という邪魔者の介入を拒絶した、蒼い楽園だ。


「綺麗だな………」


「タクヤ、あれは映像です」


「あれっ? 本物じゃないの?」


「はい。あれは『メモリークォーツ』というクリスタルに似た鉱石に投影された、製作者がイメージした海中の光景です」


「メモリークォーツ?」


 聞いたことのない鉱石だな。初めて耳にした鉱石の名前を聞いて首を傾げると、ステラはLMGを肩に担ぎながら説明してくれた。


「魔力を注入しながら何かしらの映像をイメージすることにより、そのイメージした映像を実際に映し出す事が出来る特殊な鉱石です」


「そんな鉱石があったのか」


「はい。ですが、私が封印している間に枯渇してしまっているようですが」


 枯渇したって事は、採掘し尽くしちまったって事なのか。自分のイメージした映像を実際に映し出す鉱石は、確かに需要があるだろうな。前世の世界のビデオや写真のように思い出を残す時にも利用できるだろうし、戦いでも偵察の時に役に立つだろう。斥候が目にした映像を思い出すだけで、仲間たちにそれを見せる事が出来るのだから。


 それゆえに採掘し尽くし、現代では残っていないという事なんだな。


「なるほど………じゃあここにあるのを剥ぎ取って持ち替えれば、高値で売れるってわけだな?」


 にやりとかなり下衆な笑みを浮かべながら、俺は海中の映像に見惚れている仲間たちに向かって冗談を言った。実際にここのメモリークォーツを持って帰れば大金になりそうなんだけど、こんな鉱石が古代に存在していた事を知っているのは考古学者ぐらいだろうなぁ………。


 有名な冒険者の体験記をよく本屋で購入して読んでたんだが、メモリークォーツについては全く書かれてなかった。つまり、知名度はかなり低い幻想的な鉱石ということだ。


 もちろん、そんな事をするつもりはないけどな。


「やめなさいよ、勿体ないでしょ?」


「冗談だって」


「あらあら、お兄様ったら」


 冗談だよ。


 肩をすくめながら誤魔化し、AN-94を肩に担ぐ。獰猛な2点バースト射撃が可能な相棒を担いだまま、俺はそろそろラウラにエコーロケーションで敵の索敵をお願いしようとしたんだが………ラウラの奴は、壁に埋め込まれたメモリークォーツに映し出される海中の映像をずっと覗き込んだままだった。


「おい、ラウラ?」


「ふにゅー………」


「そろそろ索敵をお願いしたいんだが―――――――」


「ねえ、タクヤ」


「ん?」


 なぜか顔を紅潮させながら振り向いたラウラは、恥ずかしそうに俯くと、頭の上に乗っている真っ黒なベレー帽を目深にかぶりながら言った。


「こ、これって魔力を流し込みながらイメージしたものを映すんだよね………?」


「ああ、そうらしいよ?」


「じゃ、じゃあ………けっ、結婚した時のことをイメージすれば………映る……かな?」


 ………はぁっ?


 え? お姉ちゃん、何言ってるの? お前まだ17だろ? 結婚は先の話じゃないか。


 恥ずかしがりながら言ったラウラの言葉に、ステラを除く3人が一斉にぽかんとしてしまう。いや、ちょっと待て。結婚した時の事って、ウエディングドレス姿の大人になったラウラ………?


「――――――ッ!?」


 い、いかん………! 大人びてウエディングドレスを纏ったラウラの姿を想像したら………も、萌えてしまった………!


 今のままでも十分大人びているラウラだけど、性格は幼少の頃からあまり変わっていない。戦闘中はさすがに冷静になってるんだが、普段は昔と同じく俺に甘えてくる事が多いんだ。


 でも、その幼い性格のお姉ちゃんが立派な大人になって、ウエディングドレスを纏っていたら………!


「………さ、最高だな………ッ!」


 ああ、ウエディングドレス姿のラウラかぁ………。見てみたいな。


「じゃあ、ちょっと持って行かない………?」


「よし、さっそく俺が硬化で………」


 左手を硬化させて壁に伸ばそうとしていると、いきなりかぶっていたフードの上からナタリアにチョップされた。やけに素早いチョップで、しかも正確に俺の頭に生えている左右の角の間に炸裂するナタリアのチョップ。まるで鉄パイプで殴られたかのような衝撃を感じつつ、俺は涙目になった。


「――――――たぼーるッ!?」


「何やってんのよ、バカ………」


「いや、ウエディングドレス姿のラウラを見てみようかなと………」


「ふにゃあっ!?」


「はぁっ!?」


 顔を真っ赤にするラウラとナタリア。2人の後ろではカノンがラウラを凝視しながらニヤニヤ笑っているし、ステラは無表情のまま首を傾げている。


「た、タクヤのバカ……」


「何考えてんのよ………で、でも、ウエディングドレスかぁ………」


 顔を赤くしながらじっとメモリークォーツを凝視してるが、ナタリアもウエディングドレス姿のラウラを見てみたいのかな? きっとかなり綺麗だぞ。


 ラウラは小さい頃から『タクヤのお嫁さんになる』って言ってたからなぁ………。結婚する相手は俺なのかな? もし他の男だったら………引き下がろう。俺はシスコンになっちゃったけど、ヤンデレじゃないし。


 ただし――――――もしラウラと結婚した男がお姉ちゃんを悲しませたら、全身全霊でぶち殺しに行く。12.7mm弾の集中砲火をお見舞いしてやるぜ………!


「ナタリアさん、どうしましたの?」


「えっ? な、なんでもないわ………」


 カノンに言われてからちらりと俺の顔を見て、恥ずかしそうにしてから通路の奥へと歩き始めるナタリア。なぜ彼女が恥ずかしそうにしたのか察する事が出来なかった俺は、傍らで俺たちの会話を聞いていたステラと首を傾げ合うと、まだ顔を赤くしているラウラの手を引いて通路を進み始めた。









 先ほどの広間で襲ってきた石像たちのように、古代の人々が守護者として遺していった奴らばかりがこの神殿を守っているのかと思っていたが、奥にはより獰猛そうな外見の魔物が待ち受けていた。


 全身を橙色の体毛に覆われ、ライオンに似た顔を持つ二足歩行の怪物が、骨で作られた鋭利な槍を携えて待ち伏せしていたのである。


 こいつらも、家にあった図鑑に載っていた魔物だ。『ナラシンハ』と呼ばれる獰猛な魔物で、遺跡や神殿の奥に生息しているという。


 獣人のように見えてしまうが、人類の種族の中の1つに分類されている獣人のように言語を話す事もなく、人類と意思の疎通をする事もない。しかし野蛮で荒々しい姿とは裏腹に知能は高く、仕留めた獲物の骨を加工して武器を作り、その武器と素早い動きで戦いを挑んでくる難敵だ。


 ―――――そのナラシンハの群れの中にいた、何かの魔物の頭骨を頭にかぶっているリーダー格の個体を、14歳の少女が放った1発の弾丸が貫く。


『グォ――――――』


「遅いですわ」


 ナラシンハの突進する速度は、加速に乗れば全力疾走する黒豹をも追い越すと言われている。加速に乗らなくてもその瞬発力は非常に高く、中堅の冒険者でも瞬く間に反撃されて殺されるという。


 それほど素早い魔物だが――――――カノンにとっては〝遅い”らしい。


 セミオートマチック式のマークスマンライフルから薬莢が排出された音を聞きながら、俺は当たり前だろうなと思いつつ彼女の射撃に仕留められるナラシンハを見据えた。


 ナラシンハの動きは非常に素早い。生息するだけでダンジョンの危険度が跳ね上がるほど強力な魔物だが――――――幼少の頃からマークスマンライフルによる中距離狙撃の訓練を重点的に受け、成長してからは早撃ちのような速度で次々に標的を撃ち抜けるほどの正確さと反射速度を身に着けたカノンからすれば、訓練の移動する標的よりも鈍重で単純な敵であるに違いない。


 ズドン、とまた彼女のSVK-12が火を噴く。7.62mm弾の餌食になったのは、リーダーがやられたことに驚愕していた側近のナラシンハであった。


 側頭部を弾丸に食い破られ、砕け散った頭の破片をまき散らすナラシンハ。他の奴らも怯えるが、まるで熟練のガンマンのファニングショットを思わせる連射速度の狙撃が次々にそいつらの後頭部に風穴を開け、仕留めていく。


 遠距離での狙撃ならばラウラには手も足も出ない。しかし、カノンが真価を発揮するのは中距離である。


 父であるギュンターさんのようにLMGを撃ちまくる戦い方よりも、カレンさんのように中距離から敵を狙撃する選抜射手マークスマンのほうが、彼女には合致していたという事だろう。


「さすがですね、カノンさん」


「ふにゃー………やっぱり、カノンちゃんって凄いよ。私にはあんな素早い狙撃できないもん」


「何を言っていますの、お姉様。遠距離狙撃ならお姉様の方が遥かに上ですわ」


 しかも、スコープを使わずに狙撃してるからな。


 2km先にいる素早い魔物にもスコープを使わずに狙撃し、頭を正確に撃ち抜いた事がある。彼女の視力はサラマンダーの遺伝子のおかげで非常に良いんだが、体質だけではないだろう。狙撃の素質があったラウラを、親父から教わった技術が開花させたに違いない。


 空になったマガジンを取り外した彼女に、俺は予備のAN-94のマガジンを渡した。使用している弾薬は同じく7.62mm弾―――――弾薬を分け合えるように俺が変更した―――――だし、マガジンも使えるように調整してあるから、そのままアサルトライフルのマガジンを装着するだけでいい。


「ですが、これはお兄様の弾薬では?」


「他にも武器はあるさ。………援護は頼むぜ、カノン」


 マガジンを受け取った彼女の頭を撫でつつ微笑む。こうやって頭を撫でると喜んでくれるのは、幼少の頃に遊んでいた時と変わらない。


 貴族としてのマナーを教え込まれ、急速に大人びていったカノンだが―――――頭を撫でられて嬉しそうに笑う笑顔は、幼少の頃と同じだった。


 この顔が、一番面影が残っている。


「………ええ、任せてくださいな。お兄様のために頑張りますわ」


「ははっ、ありがとな」


 小さい時から一緒に遊んでいたカノンは、俺とラウラにとって妹のようなものだ。血は全く繋がっていないけど、小さい頃は一緒に家の中で絵本を読んだり、親父の帽子を取って親父と鬼ごっこをしたこともある。


 昔の事を思い出しながら彼女の頭を撫でていると―――――背後から飛来した威圧感が、俺の背中に突き立てられた。


「ふにゅー………!」


「………」


 久々に、ラウラの目が虚ろになってる………。


 虚ろな赤い瞳でじっと俺を見つめながら、ミニスカートの下から伸ばしたキメラの尻尾を縦に振るラウラ。尻尾を横に振っている時は喜んでいる時や満足している時だが、「私を見て」と言わんばかりに縦に振っている時は機嫌が悪い時の合図だ。


 いかん、このままカノンを撫で続けていたら殺されるかもしれない。もしくは宿屋で2人部屋になった時に監禁される可能性もある。


 カノンに目配せし、静かに彼女が不機嫌になりつつあることを知らせると、カノンはにやりと笑ってからウインクした。今度はラウラの頭も撫でてやれという事なんだろう。


 彼女の頭から手を離し、不機嫌になっているラウラの傍らへと戻ろうとした俺は、今しがたカノンが片付けてしまったナラシンハの死体の上に蒼白い六角形の結晶にも似た物体が浮遊していることに気付いた。


 雪の結晶を思わせるそれを凝視しつつ、俺はラウラの手を引いた。するとラウラは尻尾を縦に振るのを止め、代わりに俺の右手にそのぷにぷにする柔らかい尻尾を絡ませてくる。


「えへへっ」


「相変わらず柔らかい尻尾だなぁ」


 サラマンダーのメスは孵化したばかりの子供たちを温める際に耐熱性の高い外殻が邪魔になるため、外殻は退化しているという。それが原因なのか、ラウラは俺よりも外殻を生成する能力を苦手としている。


 柔らかいラウラの尻尾に触りながら、俺は一旦AN-94を背中に背負い、ラウラの尻尾に触ったままそのドロップした武器へと手を伸ばす。


《『ソードオフ・ショットガン』を入手しました》


 おお、獰猛な代物がドロップしたな。


 ソードオフ・ショットガンとは、基本的に銃身を短くしたショットガンやライフルの総称だ。銃身や銃床を短くすることでサイズが小さくなり、軽量になる。


 ライフルの場合は命中精度と射程距離が低下するだけなんだが、ショットガンの場合は散弾が拡散しやすくなるという恩恵がある。その理由は、ショットガンの銃口に装着されるチョークというパーツが銃身もろとも切り詰められ、取り外されるからだ。


 チョークはショットガンの散弾を拡散しにくくし、極力束ねたまま標的に叩き込ませる役割を担っている部品だ。それが取り外されるため、散弾が拡散しやすくなるのである。


 これはメリットだが、距離が離れれば離れるほどデメリットとなる。散弾が拡散し過ぎるため、遠距離どころか中距離でも使い物にならなくなるからだ。


 だから、こいつを使う以上は近距離で使わなければならない。


 メニュー画面をタッチして画像を確認してみたが、ドロップしたのは2本の銃身を持つ水平二連型ショットガンのソードオフ・ショットガンのようだ。しかも、大型の撃鉄ハンマーがついている有鶏頭ゆうけいとうと呼ばれる古めかしいデザインだな。


 使ってみようかと考えていると、他の死体からももう1つドロップしている。興味深そうにメニュー画面を覗き込んでいるラウラを連れたままそっちもチェックしてみるが、そちらからドロップしていたのも水平二連型のソードオフ・ショットガンだった。


 おいおい、2つもドロップしてるぞ。2丁使えって事か。


 まあ、俺は近距離で戦う事が多いからな。ソードオフ・ショットガンは俺が使った方が良いかもしれない。


「あ、これパパも使ってたやつだよね?」


「ああ。そういえば狩りで使ってたな」


 親父が使ってたのは一般的な12ゲージの散弾を使うタイプではなく、さらに大型の散弾である8ゲージの散弾を使う大口径タイプだったが。


 転生者の防御力が高かったせいで苦戦したから大口径の武器を好むようになったらしいが、使い辛くないんだろうか………? さすがに8ゲージは反動リコイルが大き過ぎる気がしますよ、お父さん。


 入手したばかりだけど、さっそく装備してみよう。


 画面をタッチして2丁のソードオフ・ショットガンを装備すると、腰の後ろにショットガン用のホルスターと共にがっちりした水平二連型のソードオフ・ショットガンが出現した。


「あら、また新しい銃が出たの?」


「おう。さっそく使ってみるよ。ショットガンなんだ、これ」


「え? 私のショットガンより小さいじゃないの」


 そう言いながら自分のサイガ12を凝視し、目を丸くするナタリア。俺は彼女に「ソードオフ・ショットガンっていうタイプなんだ」と説明すると、まだ俺の右手にくっついているラウラの頭を撫でたまま通路の奥へと歩く。


 壁に埋め込まれていたメモリークォーツはもう見当たらない。最深部が近いのか、段々と通路の装飾が壁画のようなものに変わり始めている。


 しばらく広い通路を進んでいると、水の流れ落ちる音が聞こえてきた。蒼白い光に照らされた通路の奥から聞こえてくるその音は、滝が落ちるような荒々しい音であり、滴が水面に落ちる儚い音でもある。


 そろそろ最深部かと思った瞬間、ラウラが俺から手を離した。さすがにいつまでもくっつているわけにはいかないと判断したんだろう。背中に背負っていた銃剣付きのヘカートⅡを構え、目つきを鋭くするラウラ。俺もAN-94の安全装置セーフティを解除しつつ、仲間たちに戦闘準備を促す。


「………奥に大きい奴がいる」


「大きい奴?」


「うん。この先は闘技場みたいに広くなってるみたいだけど、その真ん中に大きい奴がいるよ」


 大きい奴か………。まさか、この神殿に生息していると言われる『シーヒドラ』か?


 シーヒドラはドラゴンに分類されているが、国によってはエンシェントドラゴンに分類されている。極めて硬い外殻を持ち、5つの頭がある巨大な竜で、水を自由自在に操ると言われている。


 古代の人々はシーヒドラを海の守り神として崇めており、シーヒドラは未だに古代の人々の供物である財宝を守り続けているという伝説がある。


 先ほどカノンが片付けたナラシンハも強力だが――――――シーヒドラの戦闘力は、ナラシンハの比ではない。同じくドラゴンに分類されているサラマンダーと同等の力を持つドラゴンだ。


 ちなみに、サラマンダーの戦闘力はエンシェントドラゴン並みだと言われている。ただし、サラマンダーは普通のドラゴンに分類されている。


 エンシェントドラゴンとは、一般的に人語を話し、何かを司っている存在なのだ。例えば有名な『ウロボロス』は〝生命”を司っていると言われているし、最古の竜であるガルゴニスは〝進化”を司ると言われている。


 今から戦う羽目になるかもしれないシーヒドラは――――水を司っている。


 拙いな………。電撃で応戦すればいいかもしれないが、炎は全く通用しないだろう。更に敵の攻撃を喰らった場合、体内の魔力が暴発する危険性がある。


 変換済みの魔力というのは、特定の魔力に偏っている状態といってもいい。台の上に乗っている人を突き飛ばせば台から落ちてしまうように、変換済みの魔力が苦手とする魔力をぶつけると、ぶつけられた魔力は暴発してしまう可能性があるのだ。


 だからあらかじめ変換済みの魔力を体内に持つキメラは、属性に気を付けなければならない。


 ラウラは影響がないだろうが、俺は水属性の攻撃を喰らうだけで暴発し、自滅する可能性があるのだ。








 通路の奥には、ラウラの索敵通りに闘技場のような広間が広がっていた。球体状の巨大な空間に円盤状の広い足場が浮遊し、その足場から下は壁面から流れ落ちる水によって満たされている。先ほど通路まで聞こえてきた水の音は、ここの水の音だったらしい。


 広間の奥には大きな扉がある。透き通った蒼い結晶のようなもので作られた扉の向こうには、既に積み上げられた無数の財宝らしきシルエットが見えている。俺たちが探し求めている天秤の鍵もあの中にあるのだろうか。


 しかし、その財宝の山をいつまでも凝視しているわけにはいかなかった。俺たちの欲を遮ってしまう脅威が、広間の中央に浮遊しているのだから。


 水で満たされた広間の中央に浮遊するそれは、巨大な水の球体であった。半径は15mくらいだろうか。まるで夜の静かな大海原の上に浮かぶ月のようだが―――――その月の中で眠るのは、大昔からここを守り続ける存在。かつて古代人が海の守り神として崇めた、5つの頭を持つエンシェントドラゴン。


「こいつが………シーヒドラ………!」


 こいつを倒さなければ、鍵を手に入れることは出来ない。


 海底神殿で最強のドラゴンを倒さなければ――――――天秤で願いを叶えることは出来ないのだ。


 だから、この怪物を乗り越えなければならない。――――――俺たちの、願いのために。


 



 

※タボールはイスラエルの滅茶苦茶カッコいいブルパップ式アサルトライフルです。


そろそろ銃以外の名前も叫び声に採用しようかな(ネタ切れの予兆)

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