21話 特別だからなっ
20話大量のミスを放置してしまい申し訳ございませんでした。
むしゃくしゃして20話のIFストーリーをノクターンに投稿してしまいました。
R指定のため、18歳未満の方は閲覧禁止となります。
あいかわらずの低品質ですし鬱要素ありのため、閲覧はおすすめいたしません。
ご理解いただける方のみでお願いいたします。
さて、俺は現在魔物との戦闘よりも困難な状況に遭遇してしまった。
オークの襲撃に遭い、強姦寸前だった女の子を救助。
貞操の危機で恐かったんだろうな、立ち上がれない様子だったので手を差し出したら極限状態から解放されたためか失禁してしまった。
こんなときどうすればいいと思う?
相手は衣服を身に着けていない15、6歳の初対面の少女。
思春期真っ盛りの難しい年頃だ。
下手な行動はこの子を傷つけ、将来に影を落としてしまうだろう。
相手の気持ちを慮るためには自分が過去に経験したことに照らし合わせてみるのが一番の近道だと思う。
俺の人生の年輪に答えはきっとあるはず。
自身の過去を振り返ってみると、恐怖の記憶というのは印象に残っているもので、鮮明に思い出された。
あれは駆け出しの頃だった。
同世代の冒険者より抜きん出た力が欲しかった俺は、パーティーを組む相手がいない日はソロで討伐クエストに臨んでいた。
休日返上でコツコツ努力を続けたことで金がたまり、最初に持っていたなまくらの青銅の剣から鉄のロングソードに買い替えることができた。
武器の新調で討伐数と稼ぎは飛躍的に上昇し、自分も強くなったのだと錯覚して、ギルドが指定する適正ランクより上のエリアをうろつくようになった。
ある日、雑魚の代表格であるゴブリンやスライム相手に無双して調子こいていた俺は、更なる稼ぎを求めていつもより奥のエリアに足を運んだ。
欲をかいて身の丈に合わない生き方をした冒険者がどんな結末を迎えるか、頭では理解していたつもりだったのに。
すぐに後悔をさせられることになった。
俺が足を踏み入れたのはBランク冒険者の討伐対象、『マワシゲリヒクイドリ』の巣だったのだ。
ヒクイドリというのは地球にもいる空を飛ばない鳥の一種で、強靭な足と鋭い爪で人間を蹴り殺すことのある非常に危険な生物だ。
世界で一番危険な鳥としてギネスブックにも登録されている。
俺が遭遇した『マワシゲリヒクイドリ』はかつてテレビの動物番組で見たものより倍ぐらい大きかった。3mはあったね。
さすが異世界、スケールが違うぜと現実逃避して暢気なことを考えていた。
まず、脚力お化けの魔物相手に逃走は無謀な選択肢だ。
間違いなく背中を蹴られ、シャーペンの芯みたいに背骨を折られて、即死するだろう。
戦うより他に道がなかったのだが、ヤツの一撃目、その名の通り得意とする回し蹴りでガードに使ったロングソードが粉微塵に砕け散った。
二撃目で肩に装備していたプロテクターの部分を蹴られ、派手にぶっ飛び、木の幹に叩きつけられた。
全身に走った衝撃で体が麻痺し、完全に動けなくなった。
止めを刺すべく悠然と近づいてきたヤツのゴミを見るような冷たい目に睨まれた時、俺は死への恐怖で小便を盛大に漏らしてしまっていたな。
偶然通りがかったAランクの冒険者パーティーがいなければ、ミンチよりひどいことになっていただろう。
助けてくれたパーティーの連中に笑われて恥ずかしい思いをしたのだが、生還した喜びの方が圧倒的に勝っていた。
結論。
死ぬときゃ誰でもチビるだろうし、生きてたんなら大勝利じゃね?
笑ったりなんてもってのほか。
冷静な大人の態度で彼女を丁寧にケアしてあげるべきだろう。
方針が決まればやることは簡単だ。
まずは粗相の証拠を隠滅することから。
そうしないとコミュニケーションもままならない。
早速アイテムボックスからタオルと桶を取り出し、生活魔法で水を用意する。
水で絞ったタオルで立ちつくす彼女の下半身を拭いてあげようとしたのだが、
「あ、あの!自分でできますから……」
我に返った少女に制止された。
「す、すまん!そりゃできるよな……着替えはあるのか?」
「はい、馬車に。」
「なら良かった。そのタオル、返さなくていいから遠慮なく使ってくれよなっ
俺はそこで倒れてる坊主の様子を見てくる!」
―――
ふーっ。緊張したわ。
年頃の女の子のお漏らしの対処は難易度高すぎだろうが。
おじさんもそこまで経験豊富ではない。
ノーマルなプレイしかしたことがないんだ。
妹が小さい頃お漏らしした時は、異性を意識しない歳だったので、淡々と処理してやったのだが、身内以外の女の子の相手は無理だと悟った。絶対無理。
道具を貸しただけで自己解決してくれたのは本当に良かった。
彼女のことは大丈夫そうだから次のことをしようか。
宣言した通り倒れている少年のところに向かう。
まずはバイタルチェックだ。
対象の状態を把握する回復魔法の一つをかけてみる。
体温、呼吸、脈拍とも異常なし。
外傷は……首筋を打撲しただけか。骨に少しヒビが入っているな。
オークが男相手に手加減をするとは思えないから、彼女を庇って負った怪我だろう。
傷を回復魔法で治癒してやり、目を覚ますまで寝かせてやることにする。
俺は冒険者稼業が長いので枕が無くても寝られる体質なんだが、怪我人にはあった方がいいか。
生憎、旅で使わない荷物まで用意してないし、代わりになる柔らかい物は……無いな。
今更あの女の子に持ってないか聞くのもなんだしなあ。
柔らかくて枕になるものか……
あるわ、あるある。
灯台もと暗し。
アイテムボックスどころか、俺自身に生えてたわ。
俺の体で即席で作れる枕って言ったらあれっきゃないよな?
でもこいつ男だしなあ……
美少女だけど、男同士でこういうことするのはなぁ……
どうなんだ?
己の良識に問い、逡巡する。
―――
――――しょうがねえなあっ!
小僧!特別だかんな!
お前がガールフレンドを身を呈して守った男気を評価してやってあげるんだから、勘違いするなよな!
あくまで医療行為!医療行為だからな!
大事なことだから2度言った!
あ、今の俺の妹っぽいわ。
なんて言ってたっけ?
そうだ、
『彼氏できた時のためにモテないお兄ちゃんで練習してあげるんだから光栄に思いなさいよね!』
上から目線でモテないと言われたことに腹が立ったが、内心の怒りを押し殺して謹んで辞退したら殴られた。
グーで。
肉親でありながらマジ理解不能の生き物だわ。
俺は妹と違って筋の通らない暴力は振るったりはせん
「お前に彼女ができていざという時にきょどらないようにするためにやってあげるんだからな!光栄に思えよな!」
そうして意識を失った少年の頭を少し浮かせると地面との間に自分の太ももを滑り込ませた。
男の夢の究極形態の1つ、膝枕である。
まさかされる側からする側になるとは夢にも思わんかった。
しかしなんだ?
他人の頭が膝にのってるのってさ、重みに充足感を感じてちょっと気持ちいいというか、甘酸っぱさを感じるというか、
ドキドキするなっ!?
やべえ、恥ずかしいっ!
あー、恋人でもない男に膝枕してやってる時って女はどこを見てりゃいいんだ?
そもそも無関係かつ初対面かつ口もきいたこともない相手に膝枕してるっていうシチュが異常なんだが。
医療行為って言ったもんな……
目を覚ますまで観察するか。
ふむ、黒髪のこれといって特徴のない少年だ。
どちらかというとイケメンより。
これから男らしくなってくれば、そこそこ女泣かせに成長するであろうと窺がえた。
なんかムカつくな。
モテなかった男のひがみ根性が鎌首ををもたげる。
幸い相手はダウンしている。
イタズラするなら今のうち。
そりゃ!お前を3枚目にして将来モテなくしてやる!
少年のほっぺたを指でつまんでこねくり回してやる。
男のくせになかなかの餅肌ではないか。
そりゃ!そりゃ!せいや!ハイ!
餅をこねるように、はたまた納豆をかきまぜるように、縦横に頬肉を操作する。
不細工になれ!不細工になあれ!
そしてモテるなモテるな!
あはっ!なんだか楽しくなってきたぞう!!
たのしっ!楽しい!
―――?
――――あれ?
こういうスキンシップって本来恋人同士がするもんじゃね?
あ、ああ……
自分が傍目から見たらどんな真似をしているのか自覚して顔面が沸騰する。
こいつが目を覚まして顔を見られでもしたら大惨事に……
「…ん、うう……ここは……?」
少年が目を覚ました。
大惨事確定!
空気読めよ少年!!
「あのー?」
「なんだ?言ってみたまえ」
顔面の発火を懸命に抑えながら鷹揚に応える。
「僕は死んだのでしょうか?女神様が見えます。
お顔が赤いのですが、神様でもご病気を患うことがあるのでしょうか?」
「生きてるよ。転生ボーナスも前世の記憶チートも当分先だ。よかったな。
ついでに俺は女神じゃない。顔が赤く見えるのは気のせいだ気のせい。
オークに殴られた後遺症でものが赤く見えるんだ。きっと」
「はあ……オーク!?そうだ!ソフィーは!ソフィー!
痛っ!?」
「おいおい、落ち着け。怪我は魔法で治癒してやったが、痛みはしばらく残るぞ。
安静にしてろ。――あの子なら無事だよ。心配すんな」
彼女のことを思い出して取り乱す少年の頭を押さえつける。
俺の腕力に敵うはずもなく、抵抗をやめて大人しくなったところで、着替えを済ませた少女が戻ってきた。
「すみません。お待たせしまし……ちょっと!何をしてるんですか!
羨まし……!じゃなくて、そこ代わってくだ……!じゃなくて!
ヒューイくん無事なの!?怪我はない!?」
少年が生きていたことを確認してソフィーと呼ばれた少女が駆け寄る。
「うん、痛みはあるけど大丈夫みたいだ。ソフィーこそ無事でよかった。
ところで僕は意識を失っていたみたいだけど、オークはどうしたんだろう?」
「そこの女の子が……えーと」
「冒険者のアスカだ。」
「そのアスカさんが全部やっつけちゃったの。一人で。
もし、アスカさんが助けに来てくれなかったらわたし達全員死んでた」
「そうだったんだ……
ありがとうございます。ソフィーを助けてくれて。
あの、冒険者の方でしたら、報酬がいりますよね」
少年は律儀な性格のようだ。
その言葉に少女も反応して言った。
「あ、それならわたし、一応貴族ですからお金の方は用意できると思います」
「いいよ、報酬なんて。勝手に助けただけだし。
それより、落ち着いて話ができる場所に移動しないか?
死体の匂いに他の魔物がつられて来るかもしれんし、俺、昼飯まだなんだ。
いい加減腹が減った」
ヒューイと呼ばれた少年の頭をぽんぽんと叩きながら言う。
「そうだね。騎士の方達を弔わないと」
「マルセル、ジョシュア、ロデリック、ごめんなさい……」
俺の主張に全会一致したところで、コマちゃんが合流し、移動を開始することになった。




