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12話 浴場

まほいく観ました。

颯太が一番可愛いですね。

 

 パンツ穿いた後のバイトは非常に快適だった。

 尻を触られるにしても布が2重になれば防御力が違う。

 いい仕事だ。20万Gかけただけのことはある。

 このパンツの良さはデザインの美しさや肌触りだけじゃない。

 この世界では上から数えた方がいい品質を誇る白金絹(プラチナシルク)が素材として使用されている。

 原料となる絹糸は森林の奥地に潜み、従魔契約の極めて難しいプラチナグローモスから僅かにしか採れないものだ。

 動きを極限まで阻害しない柔軟性がありながら、オーガの腕力でも引きちぎることのできない強靭さ、アシッドスライムの強酸にも耐えうる対毒性能があり、

 富裕層だけでなく、上級冒険者にも根強い需要を誇っている。

 さらに魔力伝達に優れたミスリルを極細の繊維に加工し、フレームの要所に張り巡らせることで、強化エンチャントの効果を高め、何もはいていない時よりも身体能力を向上させることができるのだ。

 チートな俺をより強大なチートに押し上げる究極のアイテムなのである。

 昔日本でやったゲームに無駄に高性能な水着や下着の防具があったが、こういうことだったのかと納得した。

 縫製技術全般に関しては地球が圧倒的に上だが、精鋭の職人が手作業で編み込まれたこのパンツは技術面でも劣るところがない。

 冒険者とパンツァーの要求を同時に満たす品質にバイトも楽しくなること受け合いだ。


 仕事が終わるとミリーシャに公衆浴場に行かないかと誘われた。

 実はこの街には領主の趣味で浴場が至るところにあり、格安の値段で提供されている。

 天然温泉のある火山国を除けば、この世界では大都市か貴族の邸宅ぐらいにしか風呂が無く、贅沢の部類なんだがな。

 山からの豊かな水源を用いて上下水道が整備されており、火魔法に長けた魔術師を雇っていつでも入浴できる状態にしているとのことだ。

 なんにせよ風呂好きの日本人である俺にとっちゃありがたい。

 生活魔法の『浄化』で体を清潔にすることはできるんだが、やっぱ風呂に入らんと疲れが取れた気がしない。

 そんなわけで魔法に頼ることなく体を洗い流し、いざ湯船へ。


「ふーっどっこいしょーあぁぁあああーーぶるぁぁああーー!!生き返るわぁーーー」

 足を伸ばせる風呂最高!

 女風呂の景色も絶景かな絶景かな。

 隣で湯に浸かってほぅっと息を吐くミリーシャを見る。

 む、俺より胸の発育いいな。Dはあるとみた。

 12歳でそのボリュームはけしからんぞ。

 敗北感を感じてしまうではないか。


「クスクス、お姉ちゃんなんだかお父さんみたい」


 はっはっはっ実際キミのお父さんより年上だからねぇ俺。

 風呂で雄叫びを上げてしまうのはおっさんの習性なのだ。

 しかし今のは仮にも美少女がやってはいけないことだったな。

 チャンスをくれ。

 俺の美少女力はこんなものではない。


「テイク2!テイク2!」

「……?どうぞ?」

 俺の謎の言葉に首をかしげたが許可が降りた。

 湯船から立ち上がり、再び湯に体を沈める。


「はにゃ~ふわふわしてとってもきもちいいのぉ~わたし溶けちゃう~溶けちゃうのぉ~」

 …………

「    」


 大きな瞳を真ん丸にして口をポカンとだらしなく開けている。

 うわあ、ドン引きされとる。

 アニメのキャラクターみたいにクネクネとしなを作って思いつく限り可愛く言ってみたのだが。

 どうやら盛大に滑ってしまったらしい。

 おじさんのセンス古い?

 違うな。こっちの世界にはアニメがないからかな!?

 きっと馴染みがないだけだ。

 俺は可愛い。うん、それだけは間違いない。

 頭の悪い言動に引かれるのはいいとしても無反応は困るわけよ。

「何か言えよう……」


「ええ!?えーと、んーと、そういえばそう!お姉ちゃん朝から冒険者登録しに行ってたんだよね?どうだった?」


 強引に話を変えられた。

 これではテイク3をやらせてもらえそうにない。

 しょうがないここは合わせてやるか。

 美少女道を極めるのはまた今度。


「登録してすぐにクエストに行ったぞ。西の穀倉地帯にゴブリンが大発生したって言うんでな。退治してきた」

「大丈夫?怪我しなかった?」

「見ての通りピンピンしてるさ」

 相変わらず雪のように真っ白な肌を惜しげもなく晒して見せる。

 あっちの方もビンビン!!ーーって言いたかったがお亡くなりになってたわ。

 享年50歳。


「ほえーお姉ちゃんお肌綺麗」

 傷がないことが分かると素直に俺の肌に見惚れているようだった。

 そうだろ?スキンケアもしていないのにこのハリ、ツヤ、玉の肌ってやつだ。

 パッシブタイプのスキルで守られてるとしか言いようがない。

 これもチートか。至れり尽くせりだな。魔人族万歳。

 ただし、貧乳だがな。アーティファクトの製作者の趣味か?

 魔人族のロリコン!


「それならミリーシャはいいおっぱいしてるじゃないか。

 俺にもちょっも分けておくれよー」

 手をわきわきとさせ、触れるか触れないかぐらいの距離まで接近する。

 あれ?防御しないの?いいの?おじさん触っちゃうよ?揉みしだいちゃうよ?

 やるか!かっとビングだ俺!


「そこまで。Yesロリータ、Noタッチですわ。アスカさん」

 後ろから制止され振り向くとそこにいたのはセレナとキッドだった。

 初めて二人の裸体を拝んだのだが、セレナは予想通りの爆乳と筋肉、キッドは俺と同じく貧乳でスレンダー体型か。


「こんばんはだニャ。アスカ」

「おう、ゴブリン退治以来だな」

「お姉ちゃんのお友達?」

「この街に来る前に世話になったんだ。羨ましい乳をした御方がセレナ。貧相な方がキッドだ」

「貧相は余計ニャ。お互い様ニャ」

「そうなんだ。どうもお姉ちゃんがお世話になってます。あたしはミリーシャ、ミリーって呼んでください」

「お世話だなんてとんでもない。ミリーさん、わたくし達が助けられてばかりですのよ」

「そうニャ。アスカがいなかったら今頃ワイバーンの腹の中だったかもしれないニャ。

 でも今日はゴブリンの手柄をほとんど持ってかれちゃったニャ。少しは残しておいて欲しかったのニャ」

「ハハ、冒険者の世界はいつだって早い者勝ちだろ?恨みっこなしだ」

「その通りですわ。キッドもお金に汚くてはいい人が見つかりませんよ」

「25で独り身のセレナには言われたくないニャ。

 アイリス教徒は結婚できるのにセレナには男の影もないニャ」

「わたくしはアイリス様に生涯この身を捧げておりますもの。

 それにわたくしのような大女など殿方が愛してくださるはずはありませんわ」

 自嘲気味にセレナは返した。


 ふうむ。

 俺はセレナはわりといい線いってると思うけどな。

 体の各所は男性なら欲してやまないアクション映画の俳優のような太い筋肉に覆われているが、2m近い身長でも脚が長くて均整のとれた女性らしい体型をしているし、強い胸筋に支えられた爆乳は垂れずに理想的な形状を保っている。

 ナニがあったら挟んでもらいたいぐらいだ。

 もう無いが……

 ウェーブのかかった金髪は冒険者にしては痛みも少ないし、顔立ちも整っていて、高貴さがある。

 もしかしてどこかの貴族の娘だったんじゃないかこの人。

 跡目争いなんかの御家事情で出家するというのもよくある話だしな。

 アイリス教徒は結婚できてしまうが、冒険者なんて貴族のきらいそうな商売を兼業することで実家の懸念を払拭しているのかもしれない。

 容姿は合格点。

 旅の道中で作ってくれた料理も旨かったし、他人を気遣う献身的なところも持ち合わせている。

 奥さんとしても十分な素質持ちだ。

 夜の方は彼女のペースになるかもしれないが、もし結婚した男はがんばれ!とにかくがんばれ。


「セレナが婚活したらいくらでもいい男が寄って来ると思うぞ。少なくとも俺が男だったらほっとかないけどな」

「まあ、アスカさんはお上手ですわね」

「あたしも初対面ですけどセレナさんは素敵な女性だと思いますよ。力強い女の人って憧れますし」

 ドラゴニュートの特性かもしれないがミリーシャだって非常識なパワーの持ち主だと思うぞ。

 宿屋の娘がそれ以上強くなってどうするのか。


「ミリーもこう言ってるし、自信を持った方がいいと思う。

 婚期を焦る必要はないがな」

「お二人がそう仰るなら、前向きに考えておきますね」

「アスカ、アスカ、アタシはどうニャ?

 こう大人の色気とか感じないニャ?」

 キッドが湯船から立ち上がり、腰と胸を強調するようなポーズをとる。

 僅かな谷間と小さな尻という感想しか出てこない。


「大人の色気(笑)」

「キッドお姉ちゃんは……あはは……」

 ミリーもかける言葉が見つからないようだ。

 しかし、少女よ。その方がより深く心を抉ると俺は思うぞ。

「ぐぬぬ、今に見てるニャ!アタシだってまだ17歳。すぐにボンキュボンッ!になって吠え面をかかせてやるニャ!」


 ニャーーー!!!!と威勢のいい大声をあげてキッドは浴場から出ていった。

「若いっていいねえ……」


「それではわたくしも上がらせていただきますね。またお会いしましょう」

 爆乳を揺らしながらセレナも去って行った。

 大きいことはいいことだ。

「俺たちもそろそろ上がるか?ミリー」

「うん。お姉ちゃんのお友達とっても楽しい人ばかりだね♪」

「そうだな。あの二人の仲間にバークってやつがいるが、ミリーは近づくなよ。あいつはロリコンだからな。話しかけられただけでお腹を大きくさせられるかもしれん」

 これだけは釘を刺しておこうと思うのであった。



 風呂から上がると俺達は売店で買った果汁を混ぜて甘くしたミルクを飲んで涼むことにした。

 本当はキンキンに冷えたエールが飲みたかったが、子供に合わせてやるのがいい大人ってもんだ。

 しかし、売店のミルクといい、風呂場の壁に描かれていた山の絵といい。

 ……日本みたいだよな?

 この番台前の休憩所も既視感を感じるっていうか。

 扇風機そっくりのアーティファクト。

 あれは座った人間の魔力で動かすマッサージチェアか?

 牛乳瓶を傾けつつある疑い募らせていく。

 ミリーシャは扇風機の正面で

「ワーレーワーレーハー」

 なんてやっている。

 異世界だろうと人のやることは変わらんな。

 微笑ましく見守っていると、正面のベンチに20代後半と見られる男が腰かけてきた。

 身長は175センチぐらいの痩せ型。茶色い髪を綺麗になでつけ、品の良い口元にはトリミングの大変そうなチョビ髭を生やしている。

 片眼にはモノクルをかけていてなんとなく知的な人柄のように見えた。

 服装は地味な緑のスーツにネクタイ。

 風呂上がりなのにスーツの上に同じ色の外套を着ていて、暑苦しそうなのだが、気にしていないらしい。

 頭を抱え、俯いたままぶつぶつと独り言を言っている。


「なぜだ?なぜ僕の理想郷が実現しない?計算は完璧だったはずだ。現に種族、性別、年齢の垣根を越えて人が集まっている。

 環境はほぼ完全に再現したはずだ。何が足りない?故郷の温泉、スーパー銭湯では高確率で父娘のペアに高確率で遭遇したはずだ。なのに銭湯計画がスタートして10年、男湯で女児との出会いが一度もない!

 僕の求める少女達がこうして目の前にいるのに、なぜだ!なぜなんだ!」


 小さな独り言は唐突に叫び声に変わった。

 しかし、こいつ今、『スーパー銭湯』って言ったよな?

 もはや確定的だ……


「キミ!キミはなぜお父さんとお風呂に入らないんだ!」

 俺の肩をがっしり掴んで、問いかけてきた。

 知らんがな。それと、銭湯に父親と一緒に入ってきた女の子を視姦するのはやめろ。

 ミリーシャのおっぱいに触ろうとした自分を棚に上げて思う。


「父親いないから……」

 日本にいる親父が今の俺を見たらなんて言うんだろうな?

 息子が娘になりましただなんてな。

 親父は妹にはベタ甘だったから案外喜ぶかもしれん。


「そうだったのか……無神経なことをきいてしまってすまない」

「いいんだ。それよりもさ、乙女の肩をいつまでも掴んでいるのは『事案』だよな?」

「『事案』?懐かしい響きだね。ふふ、僕の故郷じゃ声をかけただけで『事案』なんてことがあったなあ……」

「なら触った時点で犯罪だよな?」

「勿論だとも。僕も敬虔なアイリス教徒である以前に紳士だ。それぐらいわきまえている。あ……!」

「キャー!憲兵さーーん!!!!この人痴漢でーーす!!」


 俺の叫び声に何事かと反応した客が集まってくる。

 たまたま近くにいたのだろう、1分もしないうちに人混みをかき分け、憲兵達がやってきた。


「痴漢が発生したと聞いてやってきたのだが、領主様……ですか」


 こいつやっぱり領主だったのか、恐らく転生者の。

 そして紛れもないロリコンだ。

 女の子の体を見たいがために浴場を作ってしまうぐらいに筋金の入った

 憲兵はあっちゃーこの人とうとうやっちゃったよーなんて表情をしているので間違いない。


「領主様といえど罪を犯せば償わなくてはなりません。

 申し開きはありますか?」

「ないよ。僕の作った法律だ。それを僕が守らなかったら民に示しがつかない。牢屋でもどこでも連れていきたまえ」


 この世界で初めて出会った転生者は痴漢の現行犯で連行されていった。

 変態でなければ日本の話をしたかったんたがな……


 翌日、エリンギマンを討伐し精算を済ませようとギルドに戻ると騎士ジョエルが俺を待っていた。


「よう、どうした?」

「実は貴君に頼みがあってだな、グリーンウッド様がお会いしたいそうなのだ。ご足労願えないだろうか?」


 どうやらあの変態転生者との縁はまだ繋がっているらしかった。







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