11話 たくし上げ
「ああ!!アイリス様感謝いたします!無事で本当によかったですっ!」
俺がギルドに帰還すると、新人の受付嬢は涙を流して喜んだ。
ほぼ強制だったとはいえ、自分の斡旋したクエストで危険な目に遭っていないか、不安でしょうがなかったのだろう。
怪我ひとつない俺の姿にホッとしたようだった。
「心配してくれるのは嬉しいんだが、今日は急いでいるんだ。清算をしてもらえるか?」
ギルドから貸与された討伐数をカウントする万歩計に似たアーティファクトをカウンターに置く。
「ごめんなさい、そうでした。報酬をお渡ししないとですね。えーと、レッドキャップ種のゴブリンが……さ、312匹!?」
おー、驚いとる。新人の戦果じゃないもんな。
「どうした?不具合か?」
「あのう……討伐数なんですけど、312匹で合ってますよね?」
「いちいち数えちゃいないがそんぐらいだ」
「少々お待ちいただけますか?上司に確認をとりますので」
「おう、早くしてくれよな」
ノーパンは落ち着かないんだ。
あとバイトも行かなきゃならんし。
大金が入る予定なのにバイトなんてする必要なくね?と思われるかもしれないが、俺は人と交わした約束は守る主義だ。
それに、ミリーシャが楽しそうだからな。
姉妹ができたみたいで嬉しいらしい。
俺もミリーシャのような素直な妹なら大歓迎だ。
実の妹みたいに顔を合わせるたび毒舌が飛んでこないしな。
この街に滞在中は数日出かけるクエストでない限り、付き合ってやりたいと思う。
奥の部屋で問い合わせをしていたらしい、受付嬢が戻ってきた。
「お待たせいたしました。申し訳ありませんでした!!本当に大活躍されてたんてすね。登録したばかりでこんなに小さくて可愛い女の子なのに、すごいです!!こちら報酬の234000Gです。
レッドキャップの討伐報酬は1体500Gですが、今回領主様のボーナスで1体750Gになっています。どうぞ、お受け取りください」
「確かに……。明日もよろしくな。今度こそエリンギマン討伐をやらせてくれ。俺も食ってみたいんだアレ」
宿の料理を担当しているミリーシャの親父さんに差し入れれば喜んでくれるだろうか?
明日の予定も考えつつギルドを後にした。
レディースエンドジェントルメェン!!
お待たせいたしました。ようやく俺の下着選びの時間です。
様々な店のパンフレットがバイト先にあったので下調べはオーケーだ。
観光案内が行き届いているなんて珍しい街だよな。
地方都市なのに栄えているのも納得だ。
スカートのポケットからパンフレットを取り出し、店の住所一覧を確認。
そして、昨日から目をつけていた最高級の呉服屋に入ることにした。
店内やはり富裕層の豪奢な衣服で飾った大人の女性達で溢れかえっている。
雰囲気に飲まれそうになるが、修羅場を潜りぬけた鋼の精神力で克己した。
ここで物怖じしていては永遠にノーパンのままだからな。
女の世界に邪魔することに申し訳なさを感じただけであって、そもそも女物のパンツを選ぶことに関して躊躇いはない。
何しろ性に目覚め、『探究者』となった瞬間から憑りつかれたように研究を続け、観察し続けてきたからだ。
特に日本で作られた精巧で肌触りの極致に至ったパンツは痴的好奇心を満たすのに十分すぎるぐらいであった。
人間は三大欲求の他に『知る』ことに喜びを感じる動物である。
だから俺は『知』が求める衝動に流されるまま、年の近い少女がどんなものを穿いているのか気になってしょうがなかった。
ネットの通販サイトの画像をジャンル別に分けた1000種類のフォルダに1TB保存していたが、それだけでは我慢できなくなっていた。
サンプル調査が必要だと判断した俺は、行き詰まりを解消するため、倫理をかなぐり捨て妹のパンツに手を出した。
デザインの良し悪しの基準は?素材ごとのメリットデメリットは?厚みはどのぐらいが適切か?ゴムの伸縮性に違いはあるか?下着ごとの数値をメジャーで徹底的に計測し、結果を大学ノート1冊全てのページに記した。
ノートを使いきるなんて勉強でもやったことがないというのに。
パンツに情熱を注ぐ時間はとても充実していたと思う。
まあ、行きすぎた研究を繰り返した結果、とうとう持ち主にバレてしまったのだが。
なんと弁解すべきか悩んだ俺に妹は言った。
「お、お兄ちゃん!?それ私の下着! ……が彼女作らない理由って……そうだったんだ……私のこと…として見てくれてたんだ……
ね!ねえお兄ちゃん!それ、興味あるなら見ていっていいよ
なんだったら好きなのもっていっても……
パパとママには黙っていてあげる。
――その代わりね、今度の日曜日お出かけに付き合って。伝えたいことがあるから……」
普段は小憎たらしくて兄への尊敬など欠片も持ちあわせていない妹が、家族会議モノの犯罪行為を寛大に許してくれたのだ。
結局妹は何を伝えたかったんだろうな?
ちょうど約束の日に死んでしまったので分からずじまいだったんだ。
俺のパンツに対する学術的興味を満たすことへの手伝いでもしてくれるつもりだったのだろうか?
妹も実はパンツの求道者、パンツァーだったとか?
もしかしするとカップルを装って俺に安全なランジェリーショップ探索を提供しようとしてくれていたのかもしれぬ。
あいつにも優しいところがあったんだな……
ならば日本に置いてきた遺志を俺が引き継いでいかなければなるまい。
少々長くなったが、そういった経緯があり、俺のパンツに対するこだわりは尋常なものではない。
命を預ける装備に妥協してはいけないように
パンツもまた最高の物を選ぶべき。
自身の好みからすると若すぎるが、美しい女に最高のパンツを穿かせることができる。
長年の悲願を満たす機会を今、与えられているのだ。
マッドサイエンティストは己ですらモルモットにすることを厭わない。
俺も同じだ。
迷いなど……ない!
日本で培った知識チート?を駆使して一切の迷いなく予備の分まで選んでいく。
清楚で細かな刺繍のされた純白のレースに小さくてキュートなリボン。歩きやすく、戦闘の動きについてきてくれる伸縮性。
鍛えに鍛え抜いた眼力が究極のパンツの選定を容易にした。
そして店の主人にミリ単位での調整を依頼し、出来上がったものを試着室で身に着ける。
予想した通り、天使の羽を想起させる肌触りが尻を、足の付け根を、女の子の大事なところを優しく包んだ。
それは
伝説の聖剣がふさわしい勇者の手に納まるように
灰かぶり姫のガラスの靴のように
しっくりときた。
姿見の前でスカートの前面をたくし上げるとほっそりとしているが、線の美しい柔らかそうな脚が出現する。
ビスクドールを思わせるような透き通った肌にきゅっと引き締まった膝頭が愛らしい。
その上部にあるのは秘所を覆う白妙の逆三角形。
世の数学者がこの神秘の図形を見れば魂を震わせられ滂沱のごとく涙を流すに違いない。
計算された大人の美しさによってできた布地にアンバランスなはずの幼い容姿が絶妙にマッチし、情欲をかきたてられる悩ましい色気を放っていた。
この少女が今のようにスカートを摘み、お情けを懇願されたらどのような男も理性を失い、顔を埋めてむしゃぶりつきたくなるだろう。
パンツが見えそうで見えない方がいいというのは時と場合によりけり、モロに見せられた方が興奮することだってあるだろう?これはそういうシチュエーションだ。
ミロのヴィーナスに腕を復元する、ジ○ングに足をつける。
それらが歓迎されるのと同じことなのだ。
試着室から出た俺は惜しみない称賛を店主に贈った。
「パーフェクトだ店主」
「感謝の極み」
<アスカ>
性別 女
クラス 月光姫
VIT Er
STR Er
INT Er
AGI Er
DEX Er
E ボルドウィンのクレイモア
E 竜の落とし子ママ手縫いのエプロンドレス
E 竜の落とし子ママ手縫いのロングスカート
E 童貞を殺すパンツ
E 人面水牛の皮靴
スカートたくし上げをやってみたかっただけです。
それ以上のこともそれ以下のこともありません。




