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6話 vsワイ○○○

○○○に当てはまる語句を埋めよ

 

「なんだってぇ!?

 嬢ちゃんホラを吹くにも限度ってもんがあるだろうが!

 Aランクのバケモンだって奴とはサシでやらねえよ!!」

 バークの言うことはもっともだ。

 一般的な冒険者にとってはごく当たり前の見解だからな。

 以前の俺なら同意してケツまくって逃げたかもしれない。


「唾を飛ばすな汚い。

 殺れるから残るって言ったんだ。ぐずぐずしていると焼き肉になるぞ。

 冒険者は命あっての物種だろうが。さっさと逃げろ」

 バークは言葉に詰まったが、それでも引き下がらなかった。

 普段はふざけてばかりだが、人一倍仲間思いなのはここ数日間で俺にも理解できた。

 Cランクともなれば、絶対絶命の状況に陥った時、全滅を防ぐために仲間を見捨てる勇気を求められることがある。

 リーダーはその重責をこなさなければやっていくことはできない。

 やれやれ、この馬鹿のBランク昇格は当分先だな。

 心配してくれる気持ちは嬉しいが、ここはワイバーンを倒すべきだ。

 馬の足では確実に追いつかれる上、空からの火線が馬をパニックにさせ、事故を起こしかねない。

 それではヤツの思う壺だ。

 俺は皆の制止を振りきりアイテムボックスからクレイモアを抜いて片手で肩にかついだ。

 少女の細腕にあまりに不釣り合いな大剣が出現し、一同が目を丸くする。

「その馬鹿でかい得物で何すんだよ……」

 後ろにいるバークがくだらない質問をする。

 剣に何ができるかなんて子供でも分かる理屈だろうが。

「決まってるだろ。斬り殺すんだよ」

 振り向かずに嗤って言ってやった。


 さて、『ドラゴンを狩ったことがある。』というのは半分本当で半分嘘だ。

 日本にいた頃ゲームの中でなら倒したことがあるぜ。

 この世界では未経験だけどな。

 Bランクの凡人冒険者がソロで倒せるわけなどあるはずもない。

 仲間がいたとしても挑戦する気も湧かなかっただろう。

 だが、圧倒的スペックを誇る肉体が要求する。

 ヤツを殺して己の力を証明せよと。

 ワイバーンは俺の姿を認めると空中で姿勢を整え、火球を吐いてきた。

 単純極まりない軌道だ。

 顔の角度から射線が予測できてしまうので、当たるはずもない。

 火球が成したことは国民の血税で整備された街道の石畳を砕き、焦がしただけだ。

 だが、ヤツにとっては命中したかどうかは二の次だったらしい。

 地面に衝突した時の熱と爆風でダメージを与え、辺り一面を火の海にし、逃げ場を奪う。

 大雑把だが、格下の相手を追い詰めるにはよい手だ。

 次々と発射される火球を回避し、バーク達の射線に入るものは大剣でことごとく弾いた。

 …………降りてこねえなアイツ。

 ゲームとは違うってか?

 言語を解する知恵ある竜ならば、こちらの挑発の内容次第で地上での一騎討ちにも応じたかもしれない。

 ワイバーンは所詮レッサー(下位の)ドラゴンの分類。

 根本的な部分は獣と同じだ。

 理性をもたない分DNAに刻まれた最善手を指すようにできている。

 そして獣を狩るならば、狩人は対象の習性に精通し、盤上をひっくり返す方法を知っていなければ話にならない。

 故に剣を振りながらも思考を巡らせる。

 ワイバーンはあの巨体で空を舞うのに常時飛行魔法を使用している。

 羽根休めしないで飛び続けられるのはそのためだ。

 ゲームでの対ドラゴン戦はプレイヤーが倒せるようにするため接近戦を行えるよう設計されている。

 しかし、これは現実。

 ワイバーンからすればわざわざ近づいて俺達と戦うリスクを犯す必要がないのだ。

 獲物が火だるまになって息絶えるのを上空から、文字通り高見の見物をしていればいいのである。

 相手の土俵で戦うのを避けるなんて戦術の初歩中の初歩のセオリーだ。

 魔力が尽きて巣に帰るまでの間、延々と頭上を旋回して火球を撃ち続ければいいのだから。

 だが俺はこいつの戦術に付き合ってやるつもりなど毛頭なかった。

 下からではキッドの弓の効果も薄いだろう。

 取り回しを重視したショートボウなので射程が短く、矢が届かないか、当たっても甲殻に弾かれてしまう。

 ローガンの魔術についてはこれまで見せてもらった限り、多数の小型モンスターを同時に相手取るものばかりだった。

 最低限の魔力消費で、できるだけ多くの魔物を狩る。

 コストパフォーマンスに重きを置いていたのである。

 そのため攻撃力には著しく欠けていた。

 バーク、セレナ、グレンと前衛火力が充実しているので、魔法は援護射撃の役割でちょうどよかったのだ。

 味方の射撃で地面に撃ち落とし、地上戦で仕留める手は使えない。

 ならば如何にして空の怪物を殺害するか?

 魔法は封印している。

 一撃必殺の破壊魔法も、距離を詰めるための転移魔法も飛行魔法も使えない。

 オーガ戦同様使えるのは己の肉体のみ。

 一見無理難題を押し付けられているようだったが、思考する余裕が勝利の方程式を導き出す。

 火球を大剣で斬り払いながらバーク達の方へ撤退する。


「嬢ちゃんすげえじゃねえか!

 でもよ、その様子じゃ諦めるしかないよな……空にいるんじゃ……」

「違うな。倒し方を思いついたから戻ってきたんだ。

 皆の力を借りたい」

「オレ達なんかで役に立つのかよ!」

「無論だ。ヤツに見せてやろうじゃないか。

 石器時代から戦い続けてきた人間の、戦争に対する貪欲さをな」


 俺の自信に満ちた笑みにバークは背筋を震わせた。


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