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閑話 体育館の話2

 体育館のドアが閉められて、数十分は皆この状況に騒いでいたが、さすがは体育教師、八岩先生の一喝で静かになった。

 とりあえず、先生たちで今後のことを話し合うらしい。

 体育館には、俺たち全員が一週間過ごせるだけの食糧がある。少し無理をして節約すれば、二週間でもなんとかなる。

 救助がいつになるかは分からない。そもそもあの緑の生き物は、どの範囲で現れているのか?それが分からないので、もしかすると助けが来ないかもしれない。それならば、出来るだけ体育館で長く過ごせるように、食糧を節約すべきだろう。

  そんなことを先生に進言してみた。

 その後、一時間ぐらいだろうか会議を終えた先生方が、舞台から降りようとする。

 はじめの方は、静かにしていた生徒たちだったが、活発な男子勢は鬼ごっこなどで遊び始めた。この状況で、よく遊ぶ気になれるなと思ったが、こんな現実離れした状況を今ひとつ受け入れられていないのだろう。

 先生方が舞台を降りてきて、整列するよう指示があった。

 最後に、遊んでいた鬼ごっこ勢が並び終えた。それを確認した校長先生が前に出てきたので、生徒達は腰を下ろす。


「えー、今の状況を大まかに説明する。まず、緑色の生き物が校内を徘徊している。正体についてはまだ分かっていない。分かるのは、人を見つけると噛み付いてきて、噛まれるとその人も、緑色の生き物になってしまうということだ。とにかく、外は危険なのでこのまま救助が来るまでは、非常用の食糧を食べて過ごす。救助がいつになるかは、現時点ではわからないので、出来るだけ長く立て籠もれるように、食べる量を節約することになった」


 校長は、太り気味でバーコード頭というテンプレな人ではなく、髪の毛も健在で今年で50という若い校長だ。話も短くて、俺としてはすごく嬉しい。


 やはり先生達は、救助が来るまでは体育館に立て篭る、という結論を出したようだ。俺の食糧を節約するという考えも通ったらしい。

 ところで、先生達は「緑色の生き物」という言い方をしていたが、生徒達の間では、「ゾンビ」という言い方になったようだ。なんでも、人を襲って噛まれると移るというのは、よくあるゾンビとそっくりらしい。俺はあんまり知らないけどな。そういうのは、清がよく知っていたはずだ。

 そういえば、清は無事なのだろうか。いや、清のことは信じると決めたんだ。無事であることを願おう。


 さて、この後特筆すべきこともなく、幹也と話して過ごした。俺は何故だか分からないが、サッカー部の奴らには距離を置かれている。だから、話し相手になるのは幹也だけなのだ。


 そして、かなり少なめの昼食、夕食を食べた。育ち盛りの男子の腹を満たすには、到底足りるわけもなく、文句も出たが、八岩先生に説得されていた。

 まぁ、立て篭り生活を長く続けるためなら仕方ない。


 そして寝床のことだが、マットを敷いてそれを枕にして寝るしかないらしい。体全体をマットに入れると、マットが足りなくなるので、体は体育館の床に直接寝ることになる。朝起きたら体が痛くなってそうだが、体力を温存するのが最優先なので出来るだけ早く寝る。





 二日目の朝を迎えた。やっぱり体が痛い。時計を見ると、7時を指している。


「おなよう、和」

「おはよう、もう起きてたのか?」

「うん、あんまり寝れなくてね」


 友人と挨拶を交わす。幹也は既に、起きていたらしい。寝床が変わるとあまり寝られない体質なのだそうだ。

 話すことも昨日で尽きてしまい、口数も減ったまま時間が過ぎていく。

 7時半頃になると、皆が起きたらしく朝食が配られる。


 朝食は、五目ご飯と乾パンが数枚だ。

 非常食らしく味気ない。量も全然足りない。そんなストレスが積み重なっていくと、いつか暴走が起きるのではないか?と思いながら、少しずつ大事に食べる。


 その時だ、体育館の電気が一斉に消えた。生徒達がざわつく。

 しばらくしても着く気配がない。電力供給が止まってしまったのだろうか?

 徐々に生徒達も落ち着いてきた。校長先生によると、停電したようだ。見りゃわかるって。


 やがて、昼食の時間になり、少しの量が配られる。ドライカレーのようだ。

 このまま、何事も起こらずに二週間生き延びれたとして、救助は来るのだろうか?閉鎖的空間で過ごしてきて、ストレスが溜まっているのか、どうしても、ネガティヴな方向に思考が行ってしまう。


 そんなことを考えていた矢先のことだ。

 急に、何かを体育館のドアに打ち付けている音がし始めた。

 ついに、ゾンビが襲ってくるのだろうか?いつからか、体育館に立て籠もっているから安全という考えになってしまったが、よく考えると安全である保証など、どこにもない。

 ドアを一枚壊されて、ゾンビが入ってきたらほぼ全滅だ。


 他の生徒達も恐怖に陥っている。少しずつであるが、ドアも変形してきているようだ。このままでは、壊されてしまう。

 かといって、何かを策があるかというと何も思いつかない。

 八岩先生が男子を動かして、バリケードを作ろうとしているが、金属でできたドアを壊せる力を持っているなら、バリケードも一瞬で壊されるだろう。

 こうなると、戦うしかないのか?

 戦う?金属のドアを壊せるほどの力を持つ生物とどう戦えと?しかも、相手はゾンビ。体育館に逃げてくる際見た中では、両腕が食いちぎられた様子の、ゾンビが平然と歩いていた。そんな化け物とどう戦えと?

 ドアがこちら側に出っ張ってきた。そろそろかもしれない。一か八か違うドアを開けて逃げるか?


 その時、急に打ち付ける音が鳴り止んだ。と思ったら、ちょっとしてからゾンビの咆哮と、ドンドンと音とがしてきた。

 何故かは分からないが、外で暴れているらしい。おかげで考える時間が増えた。


 ゾンビが外で暴れている間に、先生たちが相談した結果、破壊されそうなドアと反対側のドアを開けて、一か八か別の避難場所へ逃げるという案と、体育館二階から何か物を落として、ゾンビを倒してしまおうとという二つの案が出た。生徒達に採決をとるらしい。


 そんなことをしていると、ゾンビの咆哮が再度聞こえて、 暴れるのをやめたようだ。

 結局、採決では多数が反対側のドアを開けて逃げる、に手を挙げた。

 だが、結局それ以降ドアが壊されることはなかった。


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