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閑話 南校舎の話

ここから閑話が3話か4話くらい続くので、お付き合いいただけたらと思います。

(とは言ってもなぁ……)


 俺は何度目かも分からない、ため息をつく。




 ゾンビを倒すとレベルが上がって、身体能力も向上する。

 おまけに、スキルと呼ばれるものまである。

 清が操っていた力は到底、現在科学では説明のつかないものだろう。


 そうまるで、ゲームのような現象が起こっているのだ。



  清が語ったのは突拍子も無いことだ。

 だが、清が操るあの力。どうやら、本当にそれは現実に起こっていることらしい。


 だとしたら、この状況を変える突破口になる。



(とは言ってもなぁ……)


 さっきから思考がループしている。


 清の存在を説明せずして、どうやって皆にそれを信じてもらうかが問題だ。



 俺が清の存在を伏せて、このゲームのような現実を説明したとする。


 まず、信じてもらうのが難しい。

 俺だって清の不思議な力が無ければ、信じられなかったかもしれない。


 では、仮に俺の語りが功を奏し、信じてもらえたとする。

「じゃあ、なんでおまえが知ってんだよ!?」ってことになるだろう。


 やはり、清の存在なくしてこの現象を説明するなんて不可能じゃないだろうか?



「あいつも無理難題を押し付けてくるよな」


 そう、独り言のようにつぶやく。


 ちなみに俺たちは、自分たちの教室にいる。

 清が瞬間移動で送り届けてくれたのだ。


「さっきから、何を悩んでるの?」


 俺がうんうん唸っていると、横から幹也が尋ねてきた。


「さっき清がした話。どうやって先生たちに伝えようかと思ってさ」


「普通に言えばいいんじゃないの?」


 こいつちょっと天然が入ってるんだよな。


「いいか?仮に清のことだけ伏せて、先生たちに言うとする。じゃあ俺たちはどこからそれを知ったのかの説明がつかないだろ」


「あ、それは確かにそうだね」


 やっと問題を理解したのか、幹也も俺の横でうんうん唸り始めた。

 さっき朝食を摂ったところだから、昼食まであと四時間くらいある。


 まぁ、じっくり考えよう。

 2人寄れば文殊の知恵までとはいかないが、1人で考えているよりはマシだと思う。



 要点を整理する。


 ゲームのような現象が起こっていることを皆に伝えたい。

 でも、情報元の清の存在は隠さないといけない。

 要するに情報元について、納得のできる嘘を考えるか、うまくはぐらかさないといけないわけだ。


 さて、どうしたものか。

 俺は幹也と相談しようと顔を上げる。



「zzz……zzz……zzz……」


 寝てるんかい!


 まあ連日、気の抜けない状態が続いているから疲れるのも無理はない。

 寝かしといてやるか。



 いっそ紙にでも書いて、落としておくとか?

 いや、戯言だと言って一蹴されるかもしれないし、八岩先生あたりが俺の字だと気付いてしまうかもしれない。


 何かいいアイデアはないものか……?





 ☆☆☆


 結局、これといったアイデアは出せず、昼食の時間になった。


 ご飯の時間になると、俺たちは最初に避難した三階の教室に集まる。

 すると、臼井先生が全員分の非常食を配ってくれる。



 節約して2日。それが非常食の残量。

 ここに来たのは昨日の昼。つまり、ちょうど明日の昼、丸一日後にきれるということだ。


 救助が来ないことなんて、皆もなんとなく分かっているはずだ。

 だが、戦う覚悟ができるかどうかは別。


 俺も戦うつもりではあるが、実際ゾンビと相対した時にどうなるかは分からない。



 とりあえず、俺は寝ている幹也の代わりに食事を取りに行った。


 ご飯はどこで食べてもいいので、皆グループごとに教室を開けて食べている。

 もちろん、俺たちは自分たちのホームルーム教室だ。


 窓の外に目をやると、かなりの数の制服を着たゾンビが目的もなく彷徨っている。

 いや、強いて言うなら人間を食べるという目的があるのだが……。



 先生たちがゾンビと戦うことを提案した時、正直とても驚いた。


 ゾンビと戦う。


 これが意味すること……。

 体育館からの脱出で多くの生徒が犠牲になった。

 つまり今、学校を徘徊しているほとんどのゾンビが元々生徒だった人だ。



 先生は生徒を完全に殺すことを提案したのだ。


 そうしないといけないのは確実だが、先生として中々とれる選択肢ではない。



 ご飯を取りに行き、教室に戻ってきた俺は、まだまだ目をさます気配のない幹也を揺り起こす。



『食糧はもってあと1日だ。昨日の件よく考えておくように……幹也にも伝えといてくれ。』


 昼食を受け取る時、八岩先生から言われたことだ。

 俺たちはゾンビと戦うつもりだ。

 というか、清は一人で戦ったんだから俺たちも戦うしかないだろう。


 昼食を食べている時に、幹也にも尋ねたが同意見のようだ。

 まぁ、他の生徒がどう考えているかは知らないが。

 女子生徒もいたので、全員が戦うことは厳しいだろう。



 やはり、問題はステータスのことをどうやって伝えるかだ。


「あと1日でうまく伝える方法を考えないとな」


 俺はため息まじりに漏らす。


「そういえば、先生に言う必要ってあるの?」


「どういうことだ?」


 こんな貴重な情報を黙っておくなんて、何を考えてるんだ?


「だって、結局ゾンビ倒す時に分かることでしょ?」


 ん……?そうか!

 ステータスのことを知らない現状でも、先生たちにはゾンビを倒す気がある。

 それなら、ゾンビを倒した時にステータスのことは自ずと知られるだろう。


「なるほど、何も先生に伝える必要はないのか」


 どうせ知られることだから伝えなくてもいい、か……。


 確かにそうかもしれないな。

 何も無理に伝える必要はない。


 そうと決まれば、あとは1日待つだけだ。


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