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国防海軍空母ふそう  作者: 高田 昇
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第6話 潜水艦

 第5海防隊群が太平洋に向けて訓練航海を開始した日と同じく、中国の軍港から一隻の潜水艦が出航したのをアメリカの偵察衛星が捉えていた。


 日米の両機関は、中国軍の潜水艦の同行を探り、国防軍はP-1哨戒機を発進させ監視を行う。日本領海内の国籍不明潜水艦による侵犯事件は度々発生しており、日本側の対応能力が試される。


 潜水艦は日米の監視網を受けながら南西諸島を通過し、太平洋へと向かった。国防軍統合参謀本部は、訓練航海に伴って同じく訓練のため出航した『ふそう』に関する情報収集ではないかと結論を出す。


 この情報は、直ちに第5海防隊群司令の下に送られた。久松少将は各艦長に対して、「警戒を怠らないよう」と発した。中国潜水艦の動向は日米海軍によって随時把握されており、『ふそう』に情報が送信され続けた。


 近年、目覚ましい経済発展を遂げた中国は、その経済力を背景に軍備の近代化を続けている。象徴といえるのが中国海軍の空母購入だろう。ソ連崩壊によって、ウクライナの港に長く係留されていた空母『ヴァリャーグ』を再生させ、『遼寧』として中国の空母運用の基礎として運用を開始した。数年前には、国産空母『山東』を進水させており、戦力化を進めている。


 海軍力の増強が著しいとは言え、急激な軍備の拡大に見合った将兵の錬度や運用体制が間に合わないのが現状で、日米両海軍に追いつくのはまだ先であると言われている。が、中国との領土問題を抱える東南アジア諸国にとっては話が違っていた。海軍力に乏しい開発途上国が占めており、中国の国際法を無視した海洋進出によって常に自国の安全保障を脅かされていた。


 さて、太平洋に出た中国潜水艦は着実に第5海防隊群を捉え続けていた。宇宙空間に漂う偵察衛星が日本艦隊を追跡し、その情報から、これまで中国当局が収集した国防海軍の太平洋上での訓練海域が推測され第5海防隊群の海域に招かれざる客が忍び込んでいた。


 093型原子力潜水艦は中国海軍二番目の攻撃型原子力潜水艦で、西側では『商級』と呼ばれている。ロシアからの技術支援を受けて開発され、前代の091型原子力潜水艦『漢級』よりも海中での静粛性が向上しており、太平洋における日米の制海権はロシアに次ぎ中国の進出に晒されていた。


 第5海防隊群の同行を探る、093型原子力潜水艦二番艦『長征8号』の艦長は、潜水艦の経歴が長く、演習において他の潜水艦長を凌駕する実績を上げている。


 潜水艦の艦内は最小限の機械音を除き、乗組員の静粛が保たれていた。その中で艦長は言う。


 「本艦を日本艦隊に接近させる」


 発令所内にいた乗組員の視線が一斉に集まった。彼らは自分達が日本海軍の新鋭空母の情報収集が任務であると理解している。


 日本艦隊への不必要な接近は、対潜能力に優れる日本海軍に探知されかねない。この事を意見したのは傍にいた若い副艦長であった。


 「我々の任務は日本の新鋭空母の情報収集です。悪戯に艦を接近させては日本艦隊に探知されます」


 「日本海軍の空母の性能など調べるまでもない」


 と、艦長は言い放った。なるほど、日本初の空母と世界から注目を集める『ふそう』ではあるが、実体は十数機のV/STOVL機を運用する軽空母だ。空母運用ノウハウはアメリカなどに比べれば0に等しい。


 しかし、中国海軍が脅威とする日本海軍の対潜能力を『空母機動部隊』と称する第5海防隊群がどれだけ有してるかを見定め様としていた。

 

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