表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔剣戦記~異界の軍師乱世を行く~  作者: 藍藤 唯
エル・アリアノーズ戦記 2
25/81

ep.23 鉢巻の英雄 (下)

 竜基のヤツ、まだ帰って来ない。

 死んだ訳ないよね? いくらアイツがバカでも死ぬはずないよね?

 ……バカじゃなかったか。それならきっと、死なないよね。大丈夫だよね……きっと。

                 シムラの手記より。



「ワイバーン……! ワイバーンの群れです!!」


 その数、三十を超えた竜の軍勢が桟道の上空から竜基達を取り囲んでいた。




「こ、こんな細い道で……」


 すかさず大斧を兵士達から受け取ったライカが前へ出る……が、やはり高所が気になるのか、竜基の前から動くことは出来そうにない。

 歩幅は、良いとこ三メートル。竜基は目算で思考する。この状況下で、ワイバーンの力はやはり西アッシアクラスだと考えていいだろう。


「……鉱山夫が逃げた理由は、コイツらか……ッ!」


 巣食っていた。この桟道の真上。崖の頂上に、ワイバーンの巣窟があったのだ。視界に巣らしきものを入れた竜基は、思わず舌打ちする。まさか空からの襲撃とは。

 怪鳥でさえ飛行高度が低いこともあり、舐めていたのだろう。

 とりあえず。動いてみるしかない。取り囲むワイバーンの数は、三十以上五十以下。兵数が少ないのも幸いして、桟道を駆ければどうにか……。


「ダメ、だよな」


 何を考えているのやら。そんな険しい道で駆けっこして、空から襲い来るワイバーンに勝てるはずもない。

 ここは。


「ライカ。遠距離攻撃は?」

「ダメだ……あたしの居る場所にも、皆の居る場所にも打てる拡散攻撃ばかりだ。これじゃ……どうにも……」


 すぐそばで大斧を構えるライカも、頬と手に汗をかいていた。

 厳しいか。と、そこまで考えた時だった。


「空中殺法!!」


 突如影が視界の外から飛び出し、近くまで来ていた一匹のワイバーンをただの一撃で沈めると、その体を蹴ってこちらへと飛んできた。


「軍師!! ここは魔剣使いに任せてアンタは兵士たちを連れて安全なところへ行くんだ!」

「ガイアス! ……ってうぉおおおい挑発してどうすんだワイバーンたち飛びかかってきたじゃないか!」

「むっ!」


 三匹が横隊を組んで突貫してきた。横幅十五メートルにはなりそうな鶴翼戦術をしかし、ガイアスは。


「はっはぁ! 横一文字は薙がれやすいんだぜ! 覚えておきなァ!」


 打ち放った鎌鼬は、凶刃の幅をぐんぐんと広げ、ワイバーンに到達するころには全てを分断するまでになっていた。


「ぐぎゃぇ!?」


 肩に魔剣を担ぐ。鼻を一つ鳴らして、ガイアスはワイバーンの集団を睨みつけた。


「俺の名はガイアス・ベルザーク! アリサ様の家臣にして、英雄を目指す男だ! ……こんなところで倒れる訳にはいかんのでな。近づいてきたら容赦なく、たたっきる!」


 一瞬で四匹もの仲間が撃沈させられ、気圧された部分もあるのだろう。一瞬の怯みのうちに、ガイアスは竜基へと視線を送った。


「行け、軍師。わりぃがこのケンカ、アンタの力は必要ねぇ。兵士統率して、とっとと行きな」

「つってもお前、この数じゃ――「言ったろ、軍師」……何だよ」


 言葉を途中で遮られ、竜基は切羽詰った状況でガイアスに言葉の真意を問う。

 ニヤリと笑ったガイアスは、魔剣を竜基に向けて、豪快に笑った。


「俺は英雄になる男だ、とな!」


 振り向きざま襲い掛かってきたワイバーンを一閃。返す刀で撃墜する。

 血飛沫の舞う魔剣。風の力でその返り血を振り払うと、今度こそガイアスは怒鳴った。


「ライカはしっかり護衛しろ! 兵士諸君! この雄姿を見よ! 俺こそが英雄! その目に焼き付けて山脈まで逃げよ! 軍師、お前が死んだら話にならんのだ、北アッシアの未来を背負う者としての責任を……投げ出そうとするんじゃねェ!」


 未来を背負う者としての責任。その言葉に一瞬考えたように俯いて、ハッと顔を上げる。


「ガイアス!!」

「オラァ! ……何だ!」

「俺との約束を忘れるな! テメエが居なけりゃ、アリサの夢からは百歩二百歩遠くなるんだぞ!」


 だから。


「死ぬなよ!!」

「ハッハッハ、任せろ!」


 兵士が全員ガイアスより前に来たことを確認して、竜基は駆け出す。


「リューキ、行こう」

「護衛、頼んだ」

「……おぅ」


 背後で聞こえる高笑いに、入り混じるうめき声と、慟哭。

 竜基は兵士を連れ、頭を振って駆け続けた。





「……行ったか」


 竜基達の姿が見えなくなったのを確認して、小さく、ため息を吐く。ちらりと自分の状態を確認した。

 疲労。こんなもん根性があればどうとでもなる。

 脇腹に怪我。こんなもん熱意があればどうとでもなる。

 右目が見えない。こんなもん勇気があればどうとでもなる。


「……全く、問題はない!!」


 魔剣を構える。正眼。……剣先が若干ぶれるが、気にしてなど居られない。

 残るワイバーンは十三匹と……。


「あれはちょっと、聞いてなかったな」


 おそらく、群れの長だろう。一際大きく、そして筋骨隆々とした、もはやドラゴンと言ってもいいほどのサイズを持ったワイバーン。

 深呼吸。大丈夫だ、やれる。


「ぐけぇえええ!」


 一匹、直滑降速度での襲撃。度重なる仲間の犠牲で学んだのだろう。死角にも等しい右から、高速で翔け降りてくるその戦法は間違っていない。


「だが! 甘ぁい!」


 魔剣の刺突。剣先に収束した魔力が風へと変換され、全てを切り刻む砲弾がワイバーンへと突き進む。

 顔面から尾の先までを無残に刻まれたワイバーンは、そのまま崖の下へと散るように落下していった。


「ッ!」


 緊急回避。

 慌てて飛び下がったところに、ワイバーンが三匹同時に奇襲を仕掛けてきた。桟道が壊れそうな勢いに、ガイアスと言えど舌打ちを禁じ得ない。

 三匹の奇襲。滑空する数匹は、随分とかみ合ったコンビネーションでの攻勢を、次々と組んで突貫してきた。


「こんの……!」


 本能的に睨みつけた相手は三匹のワイバーンではなかった。


「テメエか……!」


 長らしき竜。この竜が全てを操っている気がしてならない。ガイアスは竜を睨みつけながらも、三匹との戦闘に全力を注ぐ他無かった。

 崖が崩れては厄介だ。

 ならば、空中戦と偽って……。


 三匹の内一匹に狙いを定める。そして、応戦する振りをして、その背に飛び乗った。

 相当にイラついたのだろうそのワイバーンは、回転して振り落とそうとするが、そこでガイアスは背に魔剣を突き刺した。


「ぐげ!?」

「っしゃぁ!」


 ちょうどその時、九十度の回転角度。ガイアスの背後には先ほどの崖。正面には、もう一匹のワイバーン。


「オラ吹っ飛べ!」


 突き刺した魔剣に魔力を込める。その瞬間、ワイバーンは前方に向かって吹き飛んだ。

 驚き、回避しようとするワイバーンだが、時すでに遅し。仲間の死体を受けて怯んだところに、鎌鼬が一閃。

 纏めて二匹の撃沈をするとともに、反動でガイアスは崖の桟道へと戻ることまでできていた。


「……ふぅ。せっかく風の魔剣なんだ。空を飛べるようにならないとな!」


 新たな目標が出来た、と小さく笑う。


「っとそんな場合じゃねーか!」


 魔力を灯した魔剣を、再び飛んできたワイバーンに向ける。三匹一組での攻撃は義務付けられているのか、先ほどとは違う三匹の構成。なるほど、厄介なのには間違いない。


「いいぜ、かかってこいよ。ボコボコにしてやるぜ」













 岩場まで到達した竜基達。ライカに見張りを任せ、竜基は兵士達を次々と山脈側に送り出していこうとして……躊躇っていた。


「リューキ何やってんだ! ガイアスが時間稼いでくれてる間に!」

「そう……だな……」


 待機させられている兵士達も、気が気ではない。

 早く逃げなくては、ワイバーンが濁流のように押し寄せてくるかもしれない。食い散らかされるかもしれない。どのみち、ここに居れば殺される。

 そう考えるからこそ、この岩場という未だ危険地帯の内部に、自分たちを待機させた軍師の思考回路が分からなかった。


「……この案件は」


 ポツリと、竜基が呟いた。


「この案件は、俺がこの世界に来て初めて発見したものだ。知識にはない、エル・アリアノーズ軍の資金調達にも存在しない……西の山脈の鉱山採掘」


 独り言、だった。兵士達は言っている意味が分からないし、ライカに到っては小声過ぎて竜基の声すら聞こえない。

 だが、次の一声で、竜基は声量を格段に上げた。


「だから! ガイアスがここで死ぬはずがない! 運命は変えられる!」

「……リューキ?」

「兵士諸君……いや、お前ら。聴いてくれよ。魔剣使いでもなんでもない、一般人の俺の話をよ」


 兵士達を、見渡す。一同、何事かと言う胡乱げな瞳で竜基を見返していた。

 怯えている者も居た。焦燥に駆られている者も居た。恐怖と怒りをまぜこぜに竜基を睨んでいる者さえ居た。

 皆、ワイバーンが怖いのだ。

 ……それを、否定する気は竜基にはなかった。


「ワイバーンは恐ろしい。魔剣使いが奮闘しなくては、勝てないレベル。……俺達が束になっても、勝てるか分からない上に、少なくとも九割は命を落とすだろう」


 沈黙が広がる。分かっているのなら何故こんな場所に、と言っているように思えて、竜基は、今度は全員を睨みつけた。


「俺達一般人の兵士に出来ることは何だ!!!」

「リュー……キ?」

「お前らは! ガイアスの元で精一杯訓練に励んできた兵士だろう! 俺もいつも執務室から見ていたさ! 根性根性うるさくて仕事に支障さえ来したさ! だがそれでもお前たちはあの地獄のような訓練に付き従った、“根性”ある兵士じゃないのかよ!」


 叫び。兵士達に向かって放たれるそれは、説教などと言う大したものでもなんでもなかった。軍師に有るまじき感情論。そして、軍師として学んだ根性論。


「血反吐はいて、根性身に着けて来たんじゃないのか! それが何だ、実戦では逃げたい逃げたいの一心か! テメエらの大将があんなに一人奮闘しているというのに、テメエらに出来ることはそれだけか!! どうなんだ!!」


 兵士全員が黙り込んでいた。

 だがそれは、目上の立場の者に対して何も言う勇気がないだけで、反抗心は常に宿っている瞳を持っての沈黙。

 ……竜基は、全員の瞳を見渡して、小さく笑った。


「流石、ガイアスの兵士だな」

「ん?」


 どこら辺に頷いてるのかと首を傾げるライカをおいて、リューキは一人頷いた。


「だったらどうしろって言うんだ。諸君らの気持ちはまさしくそれだと俺は考える。合っているなら首を縦に振れ」


 全員の首が一様に動いたことを見て、竜基はさらに笑みを深い物にした。ライカ含め、他の人間にはこの男が何を考えているかなどさっぱりだ。


「俺が『こうすればいい』と言ったら、お前らはちゃんと恐怖に打ち勝って動ける男たちだってことだよ。さっきまでの、必死に逃げたいと思っていた感情はどこへやった」

「リューキ……」


 未だにガイアスを助けようとする姿勢に、ライカは小さく笑った。ガイアスの命令で竜基を守ろうとしたとはいえ、いつも一緒に訓練をしてきた、そしてこれからも魔剣使いの先輩として教えを乞おうと思っていた存在を、ライカも失くしたくはなかった。


「だ、だったら……!」

「ん? 兵士長か」


 一人の兵士が、声を震わせながら口を開いた。


「だったら、軍師には俺達がワイバーンに勝てる術があるというんですか!」

「んなもんあったら逃げてない」

「じゃ、じゃあ!」

「……誰も勝つことなんざ考えてないさ。いくらガイアスと言えど、あんな連中全員に勝った後で体力が続くはずもないだろう? 迎えに行くんだ」


 一息、おいて。竜基は笑った。


「アイツを英雄にするのはまだ早い。英雄に相応しくない、情けない凱旋にしてやろうじゃないか。担架で運ぶくらいにな」


 先ほどまでとは打って変わって、優しい笑み。

 担架で凱旋する情けない、自らの隊長を想像して、兵士達の口元にも笑みが零れる。

 それを見て、竜基は声高に宣言した。


「これより、ガイアス・ベルザークの救助作戦に入る! ライカは先行して、ガイアスが苦戦しているようなら助けよ! 兵士長はライカに同行! ガイアスの状況をこちらに伝達しに戻って来い! 五名は担架の制作、十名はその護衛! 俺と数名を待機に置き、残る二十五名は副兵士長の指揮の元西の山脈麓に陣を敷いて――」


 人数を区分けしつつ、足を止めて。副兵士長の肩に手を置いた。


「――いつもいつも根性でヤキ入れられる隊長の為に、アイツだけめちゃめちゃ辛い食事を作ってやれ。俺が許す」

「はい!」


 楽しげに笑った副兵士長に頷くと、竜基は元の位置に戻って全員を見た。

 先ほどとは打って変わって、使命感に満ちたりた表情をしている兵士達に、号令を下す。


「よっしゃ! ガイアスを信じて、やれることをやる。一般人舐めるなってことで、……じゃ、お前らがいつもやってることでもやろうか」


 すぅ、と息を吸い込む。

 全員が、何の事かと一瞬呆けて、瞬時に切り替えた。


「根性! 根性! 根性! 復唱!」

『根性! 根性! 根性!』

「声が小さい! 根性! 根性! 根性! 復唱!」

『根性! 根性! 根性!』

「よぉし! 始動!」


 散り散りに散開していく兵士達を見てから、竜基はライカに向き直る。


「頼んだ。ガイアスがもし苦戦してるようなら、援護を。アイツだけなら拡散攻撃使っても大丈夫だろう?」

「……分かんねー、けどやるしかねーな! アイツは生きてる!」


 ライカも笑顔で大斧を背負うと、兵士長を引き連れて駆けだしていった。


「……大丈夫だ。絶対に何とかなる」


 小さく吐いたその言葉は、竜基自身に訴える物だった。

 ……竜基は、味方を失う恐怖を、まだ知らないのだから。








「……なるほど……俺の根性を試す……いい訓練だ……」


 ワイバーンは、増えていた。

 おそらく、これが巣喰うワイバーン全てなのだろう。

 長以外を殲滅し終えた途端、長が強大な咆哮を発したのだ。

 するとどうだろうか。増えて増えて、またも三十匹以上の振出しに戻ったのだ。

 それも、先ほどまで以上の実力を持つ、察するに精鋭部隊。哨戒のワイバーンが全滅したともあって、気が気でなくなったのだろう。


「っぜぃ!」


 一閃。三撃打ってやっと落ちる、屈強なワイバーン達。

 それでもガイアスは数を減らしてきた。

 まだ残る敵は十五匹以上だが、それでも半分ほどは消した計算になる。

 それだけ魔剣使いの実力がおかしいのか、ガイアスの胆力が凄まじいのか。


「まだ……だ!」


 足元がふらついた。もう、空中作戦はするべきではないかとも思いつつ、それでも瞳から戦闘意欲はなくならない。竜基達がしっかり安全なところへ戻った保障もない。それに。


「英雄に……なるんだ……こんなとこで……負けられねぇよなァ……!」


 脇腹からの出血量は、既に目も当てられない状態になってしまっているが。そんなもの、知ったことではなかった。

 右目が見えないのは、先ほどワイバーンの鉤爪が突き刺さったからだとちょうど今気付いた。これではもう、使い物にならない。


「隻眼の英雄……俺カッコいい……フハハ!」


 未だに笑う気力を残しているこの化け物に、ワイバーン達も若干気圧されたようだった。それが、まずかったのだろうか。

 恐怖に当てられた数匹が、同時攻撃をガイアスに繰り出した。


「くっそぉオオオ!」


 魔剣を振る。振る。鎌鼬の威力も、魔力切れで多少情けないことになり始めていた。

 だがガイアスは折れない。めげない。この程度の傷を続け様につけられれば、必ずいつかワイバーンは堕ちる。それまでの根性勝負だと決めて疑わなかった。


「……ッ!」


 何故だろう。膝を着いていた。

 おかしい。まだ戦える。根性はまだこの身に溢れている。諦めない熱意。立ち向かう勇気。英雄になるという確固たる意志。


「……まだだ……まだだああああ!」


 その状態で、剣を振るう。ワイバーンの一匹に直撃。根性の籠った一撃だったのだ。不敵に笑うガイアスの視界から、下へ下へと消えていく。

 だが、まだあと二匹が強襲をしかけている最中だということを、失念していた。


「!?」


 マズイ。


 そう思うよりも先に、ワイバーンの爪が自身の胸元に炸裂して――



“炎陣舞踊”


「火炎! 大蛇あああああああああああああああああああああああ!」


 吹き荒ぶ炎の渦。大蛇と化した焔は鞭打つように次々ワイバーンに直撃する。

 こんな芸当ができるのは、ガイアスの知る限りただ一人。




「よぅ。ギリギリじゃねーかやっぱ」




 地獄の業火に身を包んだ、焔の少女がそこに居た。


















 慌てて到達した時には、既にガイアスは満身創痍どころの騒ぎではなかった。脇腹からの大量出血、魔力枯渇、剣も返り血で輝きが鈍り、片目は潰され、両足には度重なる跳躍のダメージ。次いでに口から血を吐き、腕も力尽きる寸前で震えていた。


「……ボロボロになりすぎだっての。とゆーかリューキが命令してくんなかったら今頃死んでるなガイアス」

「……ライ……カ……?」

「んだよ。あたしだって悔しーんだ。おめー一人置いて逃げるなんざ、魔剣使いの名が廃る」


 鼻息も荒く、ライカは大斧を構えてガイアスの前に立った。


「……おめーに言われてたよな。対人戦も強くなれって。あたし頑張ったんだぜ?」


 焔の中、ライカは指を二本立てた手を胸元に持ってくる。術を唱える為、眼を閉じて。


“炎陣舞踊・火炎大蛇”


 大斧を振る。

 突如矛先から現れたのは、獄焔の竜だった。


「こいつを……操るのに苦労してんだ、よ!」


 横薙ぎ一閃。

 襲い来る大蛇に為す術もなく、ワイバーン達は立て続けに飲みこまれては撃墜されていく。


「……こいつぁ」

「へっへー。すげーだろー」


 屈託なく笑うライカの表情は、無邪気そのもので。

 ガイアスも、魔剣を杖に立ち上がった。


「負けてらんねーなぁ……師匠として!」

「ちょ、おま無理すんなって――「無理など存在しなぁい!!」……そーだったな」


 最後は呆れ気味に棒読みだった。

 だが。

 だが。


「悪くねーな。共闘ってのも」

「根性ある英雄には、隣に相棒が必要だな!」

「へ、いいぜ。やってやらぁ」


 背中合わせに並び立つこの二人の魔剣使いの前に。


 不可能など存在しない。


「っしゃあ!」


 放つ鎌鼬に。


「よっと!」


 焔の大蛇が追従する。


「焔大蛇・風刃一閃!」


 ライカの大蛇が鎌鼬を咥え、牙と化した鎌鼬がワイバーンたちを切り刻み、しまいには。


「すかしてんじゃねーぞトカゲぇ!」


 リーダーらしき竜にまで到達した。


「ぐぎゃああああああああああああああ!」


 咆哮と共に襲い来る。パワーと言いスピードと言い、先ほどまでのワイバーンとは大違いだ。


「「だが!」」

「俺達には!」

「通用しねぇ!」


 吹き荒れる炎の渦が、竜を包みこみ。

 三十を超える風の刃が、渦の中で暴れ回る。


「フレイムミキサー、ってな!」


 エイコウが別れ際に教えてくれた、コンビネーション必殺技。

 二人とも目を輝かせて聞いていたともあって、完璧である。


「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」


 散々に切り刻まれ焼け焦げた竜が撃墜されるまで、数分もかからなかった。




















 担架で陣に運び込まれたガイアスを、竜基は笑顔で迎えた。

 よくやってくれた、と。

 ライカに到っては一日竜基を好きにできるという約束をこじつけ、ずっと背中にひっついている。

 疲れ果て、寝込むものの。もう一度ワイバーンの残党の確認を調査隊にさせ、大丈夫ならばとうとう採掘がはじまるというもの。経済が潤うのだから、否定材料などまるでない。

 無事で良かった。

 ほっとする全員で、明日には凱旋だ。

 ……もちろん、ガイアスは担架である。


 恰好が付かないと文句を垂れていたものの、生き残れて良かったと誇る兵士達を見て何も言えないようだった。彼らの頑張りもあって、こうして休めているのだから。


 夕餉を食べて、ゆっくり休もう。

 竜基の言葉で今日は全員がのんびりと、和気藹々と食事に勤しんでいた。


















「かっれええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ