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銀の槍は砕けない ~一章終盤で死亡する序盤無双キャラに転生したハードコアゲーマーは超効率プレイで生き延びる~  作者: 新人@コミカライズ連載中
第二章:真のトゥルーエンドを目指して

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第8話:気を取り直して

「あの剣、どうして無かったんでしょう……」


 陰鬱な島から脱出し、戻ってきた宿場でネアンがぽつりと漏らす。


「もしかして、私たちが気づかない間にウィルくんが持って帰っちゃったんじゃないですか!?」

「いや、それはないな。窓から出て行く時に剣を持ってなかったのは確認してる。隠して持てるような大きさじゃないし、そもそも柩の蓋は閉められてただろ」


 財宝目当てのコソ泥が、一度開けた重たい蓋をわざわざ閉めるはずがない。


「でも、だったら一体どうして……」

「もしかしたら俺らの行動が世界に影響を与えた結果、誰か別の奴が島を訪れて先に拝借したか……?」

「じゃ、じゃあ今はその人が危ないんじゃないですか!?」

「もし、そうだとしたらな。でも、その確率はかなり低い。俺らがこれまでにやって来た事の中に、誰かがあの島に行くか行かないか選択に影響を与えることがあったか?」


 これまでにやって来たのは、ほとんどが地域の魔物問題解決だ。


 それがこの短期間で、『誰かが死霧の島に行って呪いの剣を盗み出す』という結果をもたらすのは考えづらい。


 些細な出来事がドミノ倒しのように波及していった可能性が無いとまでは言えないが、確率としては極小だろう。


「それじゃあ他に考えられるのは……」

「俺ら以外の転生者による仕業だな。そいつが何らかの目的で俺らより一足先に盗み出したって可能性の方がよっぽど考えられる」

「私たち以外の……」


 ネアンが大きく息を呑む。


 これまでは仮説上にしか無かったその存在が、突如はっきりとした輪郭を持ち始めてきた。


「で、でもでも! もしそうだとしたらウィルくんが剣を手に入れる前に持ち出したってことは良い人なんじゃないですか!?」

「どうだろうな。悪用するために持ち出した可能性も十分ありうる」


 所有者の魂を蝕む魔剣……悪用方法はいくらでも思いつく。


 持ち出したやつが善人であるに越したことはないが、そうでない可能性も考えておくべきだろう。


 なんせ極一部の出来事とはいえ、正体不明の誰かに先を行かれてしまったのは事実だ。


「なんか、随分と冷静ですね。あんなに危ない剣が野に放たれてるかもしれないのに……」

「手がかりが何もないし、必要以上に狼狽えたところで仕方ないだろ。今はあいつの手に剣が渡らなかったことで良しとして、俺らは次の目的に向かって進むべきだ」

「確かに、それはそうですね……」

「分かったならさっさと切り替えろ。お前に一任しておいた()()()の作業は進んでんのか?」

「す、進めてますよぉ……貴方が寝てる夜の間にコツコツとちゃんと……。前の世界と違って道具が足りないんですから遅くなるのは仕方ないじゃないですか……」

「なら、いいけど……ちゃんと締め切りまでに完成させろよ。あれが今回の攻略で重要な役目を果たすんだからな」


 俺が寝ている間に作業しているのだと思えばそれ以上は強くは言えなかった。


 けれど、()()の出来が作戦の中核を担っているのは間違いない。


 くれぐれも落とすことがないように注視しておきたい。



 *****



 一夜明けて翌日。


 島での出来事は考えすぎても仕方がないと、俺たちは気を取り直して自分たちのやるべきことへと目を向けた。


 そうして、寄り道することなく早々に次の目的地へとたどり着く。


「わぁ~、昨日の島とは打って変わって賑わってますねぇ。でも、ここってどこでしたっけ?」

「お前、本当にキャラのこと以外は何も知らないんだな……。バーリの街だよ。闘技場クエストがある」


 感嘆の声を上げるネアンの視線の先には一際大きな円形の建造物。


 良く言えば歴史を感じ、悪く言えば至る所に傷みのある古めかしいそれは街の名所でもある武術競技場。


 以前に訪れたフィストの街の大闘技場と比べると小ぢんまりとしているが、内側からは負けず劣らずの大歓声が響いてきている。


「おおっ! つまり今日はここで大活躍してシルバ=ピアースの名を世に知らしめるわけですね!」

「いや、違う。俺は参加しない」


 闘技場でやることはただ一つ。


 人をぶん殴って富と名声を手に入れることだが、今日のそれは俺の役目ではない。


「え? 俺は、って……じゃあ、誰が……?」

「今日この時間にここで待ち合わせって伝えてたから、そろそろ来るはずだと思うんだけどな……」


 出入りの多い闘技場の入り口付近を見渡していると、遠くからすごい勢いで声が近づいてきた。


「おにいちゃ~ん!!」


 自慢の敏捷性で走ってきたミツキがその勢いのままに俺の胸に飛び込んできた。


 常人ならそのまま全身骨折しそうな衝撃を真正面から受け止めてやる。


「おっとっと……」

「ふぁ……久しぶりのお兄ちゃんだぁ……7日と5時間23分19秒ぶりのお兄ちゃんだぁ……」


 顔をとろんと蕩けさせながら胸に顔を埋められる。


「よしよし、ちゃんと来られたな。偉いぞ、ミツキ」

「うん、迷わずに来られたよ! 最初はアカツキちゃんも心配だからついていくって言ってたけど、一人で大丈夫って!」

「そうかそうか、流石は俺の妹だな。よしよし、偉い子には飴をやろう」


 ポケットから飴を取り出して小さな口に入れてやる。


 一人でちゃんと来られるかが心配だったが、予定時刻とは一秒の狂いもない。


 時間通りすぎて逆に怖いくらいだ。


「こんにちは、ミツキちゃん。私のことは知ってるよね……って、何かすごく睨まれてるんですけど!? ぐるるるって唸ってるんですけど!? な、なんで!?」

「おお、偉いぞミツキ。言いつけ通り、知らない人に声をかけられたらちゃんと警戒してるな。よしよし、もう一つ飴をあげよう」

「し、知らない人扱い!? しかも、待ち合わせしてたのがミツキちゃんってことは……も、もしかして……」


 周囲を見渡しながら何かを察するネアン。


 先程から競技場の周りを歩いているのは、まだ幼い少年少女を連れた親子ばかり。


 このバーリの街では毎月、異なるルールの月例大会が行われている。


 今月行われるのは15歳以下限定の格闘大会。


 周囲にいるのは皆、その参加者というわけだ。


 ……俺たちも含めて。


「ああ、月例大会にはミツキに出場してもらう」


 次は和気藹々とした子犬同士のじゃれ合い大会に、純血の猟犬を放り込む。



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