表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銀の槍は砕けない ~一章終盤で死亡する序盤無双キャラに転生したハードコアゲーマーは超効率プレイで生き延びる~  作者: 新人@コミカライズ連載中
第二章:真のトゥルーエンドを目指して

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

68/121

第6話:死霧の島

「あんたら……ほんとに行くんかい?」


 三人が乗ると少し手狭に感じる小舟の上。


 船頭のおっさんが都合四度目となる最後通告をしてきた。


 その目は俺たちの方ではなく、船の進行方向を向けられている。


 視線の先にあるのは暗い霧に覆われた小山ほどの大きさの島。


 そこにはかつてある王国があり、領土は狭いながらも資源と勤勉な民に恵まれ、国を愛する偉大な王によって統治されていた。


 しかし、最愛の母を不幸な事故によって亡くした王はその救いを邪な力へと求めた。


 母の命を取り戻すために禁術へと手を出した彼は島の中央に座す王城にて邪神の力を解放し、祝福された王国は一夜にして呪われた廃国と化した。


 島内にはかつての住人であるアンデッドたちが闊歩し、周辺海域にもその被害を及ぼしている。


 地元の漁師たちは畏怖の念を込めて、その島を『死霧の島』と呼ぶ。


 ――というのが今から俺たちが向かおうとしている場所に纏わる物語。


 ゲーム的には『呪いの絶島』と呼ばれるクエストラインの対象地域。


 敵のレベルは25前後と四章相当で大して難しくはない。


 今回はストーリー外で発生するある出来事を阻止するために訪れた。


「はい、もちろんです。私たちはそのために来たんですから。実は私達はこの度国軍に結成された特務部隊の一員でして、この近隣地域で発生している魔物災害の調査のため――」


 隣でネアンが船頭のおっさんに昨日と変わらない調子で嘘の情報を垂れ流している。


 おっさんはその話を聞き流しながらも俺たちの意志が固いと理解したのか、再び船を漕ぎ出した。


 三十分もしない内に島の海岸へとたどり着く。


 船から浅瀬へと降りて、ここまで運んでくれた賃料を手渡す。


 船頭は『気をつけてな』とだけ言い残すと、船は霧の外へと帰って行った。


 膝まで浸かるくらいの浅瀬、足にまとわりつくような波を踏み越えて島へと上陸する。


「あぁ……靴がびしょびしょぉ……。まだ新しいやつだったのにぃ……」

「んなことに文句を言うくらいなら付いて来なけりゃ良かっただろ。お前の仕事があるわけでもないのに」


 こいつの仕事は民衆へのプロパガンダが全て。


 大昔に滅びたこの島でそんなことをしても、寄って来るのは文字通り聞く耳を持っていないアンデッドの集団くらいだ。


「だって、せっかく旅に出たなら色々なところを見てみたいじゃないですか! ほらほら、見てください! あそこに屍人が!」


 ゾンビを見つけてまるで観光地にでも来たようにはしゃいでいる。


 なんとなく気が重たいのはこいつのせいか、それともこの霧のせいか。


 ゲームでは島を覆っているこの黒い霧には、基礎ステータス減少と聖属性による回復効果を半減するデバフが設定されていた。


 ここでも身体に僅かな倦怠感を覚える。


 死にはしないだろうが、あまり長居はしたくない。


 さっさと用事を終えて脱出しよう。


「身体に何か違和感があったりしたらすぐに教えろよ」

「はい! でも、どちらかといえば普段よりもかなり調子が良いような……」

「このド暗黒属性女が」


 心配して損した。


 気を取り直して、海岸から島の中心部にある王城へと向かう。


 立ち込める霧で視界は明瞭とは言い難いが、頭の中には完璧な地図が寸分違わずに入っている。


 道なき道を迷うことなく、突き進んで最短ルートで目的地へと進んでいく。


 時折、霧の向こう側からアンデッド系の魔物が飛び出してくるが所詮は四章レベルの雑魚。


 槍を一振りしただけで物言わぬ屍と化す……それは元からか。


 そうして城下の森を歩いていると――


「あーっ! すごいもの発見しましたよ!」


 突然ネアンがそう叫んで走り出した。


「ほら、見てください! レア素材ですよ! レア素材!」


 草むらに手を突っ込んだかと思えば、まるでネズミを捕まえた飼い猫のように見せつけてくる。


 手にしているのは綺麗にカットされたダイヤモンドを彷彿とさせる花。


 最上級の回復アイテムである『エリクシル』の精製に必要な金剛花と呼ばれるレア素材だ。


「こんな暗い場所でよく見つけたでしょう! 私、偉くないですか!?」


 大いに褒めろと言わんばかりに大きな胸を更に張っているが――


「ったく、このトーシロが……」

「と、とーしろ!?」


 レア素材を見つけて誹謗されるとは思ってもいなかったのか、身を捩って驚愕される。


「そいつで作れるエリクシルの性能は?」

「性能って……えーっと、HPと全状態異常の回復ですよね?」

「それだけか?」

「それだけって……他にありましたっけ? まさかラストエリクシル症候群を患ってて使えない感じですか!?」

「違う違う。はぁ……これだからアマチュアは……」

「あ、アマチュア!?」


 そんなものがあるのかと言いたげに驚くネアンへと続けて解説していく。


「いいか? エリクシルの体力と状態異常の全回復効果は確かに強い。確かに強いが……エリクシルは使用時間(キヤストタイム)が他の回復アイテムの二倍以上もかかるんだよ。他の消費アイテムの使用時間が基本0.25~0.5秒なのに対してエリクシルは1秒だ」

「へぇ……そうなんだぁ……。でも、効果は十倍くらい強いですよ? なんせ全回復なんですから」

「効果と単一アイテムの使用にかかる時間が等価ならな。0.1秒の猶予は時に体力の九割よりも重いんだよ。特に高難度になればなるほどな。そもそも体力が大幅に減って、複数の状態異常にかかってる時点で勝負は着いてる。そうならないように立ち回るのが肝要なんだよ。しかも、エリクシルなんて精製するのに金剛花以外のレア素材が何個も必要な時点でコスパも最悪だ。それぞれの状況に対応出来るアイテムを個別に用意する方が効率は遥かにいい。つまり、レア素材とは名ばかりで精々が売っぱらって小銭にするくらいの代物だな」

「うぐぐ……この効率厨のゲーム脳めぇ……。せっかく見つけたんだから少しくらい褒めてくれたっていいじゃないですかぁ……」


 文句を言いながら自分の携行鞄に金剛花を収納しているネアン。


 ちなみにわざわざ採集しなかっただけで、俺はこいつよりも数秒早く見つけていた。


 その後も効率プレイの何たるかを素人さんにレクチャーしながら王城へと乗り込み、目的の物がある玉座の間を目指してひた進む。


「……ん?」


 しかし王城に侵入してから一分ほど経ったところで、ふと小さな違和感を覚えた。


「どうしました?」

「いや、この場所にこんな大きなヒビ割れがあったかと思って……」


 記憶の中にある画面越しの光景と眼の前の光景を比べる。


 やはり壁面に走った大きなヒビ割れだけでなく、その他にも小さな差異がいくつかある。


「別にこのくらいの違いは有ってもおかしくないんじゃないですか? ゲームよりも遥かに高解像度ですし、なにより私たちがここにいる以上は何が変わってもおかしくないって言ったのは貴方じゃないですか。私は“素人”なんで分からないですけど」


 当てこすりを受け流しながらヒビ割れへと近づく。


 鋭く巨大な裂孔。


 劣化して自然に割れたのとは明らかに違う。


 断面を指で軽く触ると、風化した石材がぱらぱらと崩れ落ちた。


 何日、何ヶ月前の昔に出来たものではなく、もっと前からあるものだと分かる。


 少なくとも()()()に拠るものじゃない。


「まあ考えすぎか……先に進もう」


 少し神経質になりすぎているのかもしれないと壁面から手を離す。


 ゲームで画面越しに見てた風景より解像度も遥かに高い。


 このくらいの差異はあって当然と考えた方が自然なのかもしれない。


 違和感を頭の片隅に押しのけて、再び王城の奥へと向かう。


 通路を進み、階段を登り、雑魚敵を倒し、仕掛けを解く。


 攻略の知識が問題なく使えることを確認しながら進み、あっという間に目的地へと到着した。


「こうして見るとおっきいですねぇ……」


 目的地である玉座の間へと繋がる扉を見上げながらネアンが言う。


 荒廃した王城において、その扉だけがほぼ当時のままの姿で現存している。


「ぼさっとしてんな。入る前にボス戦だぞ」

「はっ! そうでした!」


 武器を抜いて、扉の左右に立つ二つの影へと視線を向ける。


 数百年ぶりに動くかのような緩慢な動きの朽ちた鎧に身を包んだ二体の屍人。


 呪われし親衛隊――このダンジョンのボスが俺たちの前に立ちはだかってきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ