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第2話 魔薬の試練と村の秘密

朝日が山間の村を染めるころ、アルミナは薬草を摘みに森へと向かっていた。

前夜、初めての魔法病治療に成功した喜びは、まだ胸に残っている。しかし、彼女は知っていた――これからの道は簡単ではないことを。


「今日はどの草を調合しようか……」

と呟きながら歩いていると、ルードが遠くから駆けてきた。


「アルミナさん!大変です!」

「え……何が?」

ルードは息を切らし、手に持った袋を差し出す。中には、奇妙な黒い斑点のついた薬草が混ざっていた。


「これは……魔薬に使える、珍しい草だけど……」

アルミナの目が輝く。母から聞いた異血の伝承に出てくる、強力な治癒力を持つ草に似ていたのだ。

「でも、この草……副作用も強い。扱いを間違えれば、命に関わる」


村の老人ランデルが近づいてきた。

「ほう、珍しい草だな……だが、扱いは慎重にせねばならんぞ」

アルミナは深呼吸して、袋から草を取り出した。異血の感覚が微かに脈打つ――まるで草が自らの意思で反応しているかのようだ。


その時、村の奥から声が聞こえた。

「アルミナ様!お願いです、この草で父を助けてください!」


駆けつけると、村人の老人が重い病に伏している。症状は魔法病とは異なるが、自然の毒による衰弱だ。

「わかりました……でも、慎重に行きます」


アルミナは草を慎重に煎じ、魔薬を調合する。異血の力で、通常なら効果が出るまで数日かかる薬も、ほんの数時間で効き始めた。村人の顔に少しずつ血色が戻る。

「……助かった……本当に……ありがとう……」

涙を浮かべる家族に、アルミナは微笑む。


薬の効果を確かめながら、ふとアルミナは気づく。

「この草、普通の人間にはほとんど効かない……私の異血の力で初めて効いたのね」


その夜、村の広場で小さな集会が開かれた。

「アルミナ様……あなたは追放令嬢だと聞いていましたが、ここではもう、私たちの希望です」

村人たちの尊敬と信頼に、アルミナの胸は熱くなる。だが、同時に心の奥底で警告が響く――王国に戻れば、追放の理由も嫉妬も、消えはしない。


その時、ルードがそっと近づき、声をかける。

「アルミナさん……君は、ただの草薬師じゃない。村だけじゃなく、世界を変えられる人だと思う」

「……でも、どうして私なんかにそんなことを?」

ルードは笑って答える。

「君には、力があるんだ。それだけで十分だ」


アルミナは空を見上げる。月が森の上に浮かび、光を落としている。

「……そうね。私は、ここで学ぶだけじゃなく、もっと大きなことに挑まなきゃ……」


翌日、アルミナは再び森へ向かう。新しい薬草、新しい魔薬、そして、自分の未知なる力を探すために――。

彼女の草薬師としての道、そして王国に挑む旅は、こうして静かに、しかし確実に始まっていた。

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