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【進め!異世界!!戦車人間(タンクマン)!!】~元ドイツ陸軍戦車兵の転生先はひよっ子ビーストテイマーの使役獣?~  作者: 稲村某(@inamurabow)
第三章・ハンスと仲間達

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⑲翼を持つ者



 ハンスとイワノフという、二人の異邦人の【ビースト・テイマー】であるエレナだが、ハンスがワイバーンに噛み付かれた瞬間は流石に眼を瞑ってしまった。誰でもワイバーンが巨大な顎を開けながら飛び掛かる姿を見れば、当然の反応である。しかし、戦闘が始まり二人と共感状態になったエレナは、不思議な安息感に包まれていた。


 ハンスの感覚は、硬く強靭な壁に囲まれた砦の中から全てを眺めているような、そんな感じである。ワイバーンが一斉に牙を剥き次々と噛み付いているにも関わらず、彼の肉体は傷一つ付かない。但し、ワイバーンのよだれで身体がベトベトになり実に気持ち悪いのだが。


 そして、イワノフの感覚は俯瞰で全てを眺めているようだ。その感覚の元で、キャロンはサラマンダーと交感しながら熱波でワイバーンを牽制し、チェモリがワイバーンのブレスを障壁で遮断しながらエレナの知らない魔導を次々と駆使し、普段は見せない活躍を繰り広げているのも手に取るように判る。


 (……それにしても、ハンスさんは本当に人間離れしていますね……)


 エレナが若干引き気味になる程、ハンスの頑強さはずば抜けていた。ガジガジと犬が木切れを噛むように彼の身体に牙を立て、爪を食い込ませながら引き裂こうと力を籠め続けるのだが、彼の身体はびくともしない。苛立ち始めたワイバーンが乱暴にハンスを振り回そうと力を入れるが、それまで無抵抗だったハンスがここに来て突如、反撃に転じたのだ。


 「何て事だ……服が台無しになっただろう!」


 むがっ、と声を荒げながらハンスが左手で噛み付いていたワイバーンの顔面を平手打ちすると、バシュッと耳の穴から脳の破片が血と共に飛び出した。


 「全く、しつけのなってないケダモノだな……調教してやるぞっ!」


 続けて右手に噛み付いていたワイバーンの鼻の穴に指を突き入れ、そのまま乱暴に引っ張った。ただそれだけで鼻腔の内側がベリッと剥ぎ取られ、激痛に思わず顎を開いたワイバーンの頭頂部を真上から右肘で打つと、ごぎりと鈍い音が頸椎から鳴り響き動かなくなる。


 仲間の二頭があっさり屠られ、残りのワイバーンはハンスから素早く離れながら喉をぶくりと膨らませ、頭を振り下ろして顎を開き、ブレスを彼目掛けて吐き出した。


 「おおっと、火炎は不味いっ!!」


 戦車の能力を身に宿すハンスといえど、火で包まれてしまえばエンジンが燃えて力尽きてしまう。火炎瓶で数多の戦車が戦闘不能に陥ってしまったのだが、それは彼の元になったティーガー重戦車も例外ではない。だが、鈍重な印象の戦車とてハンスの身体を媒介として具現化しているからか、動き出せばあっという間に時速40キロを越せる駆動力を発揮する。土の地面を掘り返す程の脚力を駆使し彼はブレスの範囲外に逃れ、


 「確かに火は苦手だが、当たらなければ問題無し!」


 そう言いながら今度はズボンのチャックを開けて同軸機銃だけ露出させ、ワイバーンに向けながら文字通りの腰溜め姿勢で射出する。


 バララララララッ、と軽快な音と共に一掃射が赤い尾を引きながらワイバーンに命中すると、大半は硬い鱗で弾かれて致命傷を与えられず逸れていく。だが、羽根の皮膜や鱗の無い薄い皮膚の箇所は被弾しズタズタに引き裂かれる。


 「ギイィッ!?」

 「何だ、トカゲのくせに痛みは感じるのか? だったら躾のしがいが有るな!」


 ワイバーンは今まで経験した事の無い痛みに叫びを上げ、初めてハンスに対する恐怖を感じたが既に遅しである。その隙をついて肉薄したハンスが下腹部と胸に蹴りを入れ、その痛みに思わず身を屈め頭が下がった時、見計らったように突き上げた拳が真下から顎を打ち抜くと、ワイバーンは地面に崩れ落ちていった。


 「さて……残るは半分と群れのリーダーだけか」


 飛び出してきたワイバーンを難無く打ち倒したハンスだが、エド達は流石に苦戦しているようだ。剣の技量は確かに高いエドだが、長い首と尾の先に付いた毒針で離れた場所から攻撃を繰り出してくるワイバーンは、侮れない難敵である。アーヴィンと攻守を入れ替わりながら一頭づつ相手にすれば容易いのだが、


 「エドっ! ブレスが来るぞ!!」

 「くそっ、あと少しなのに!」


 残りの五頭は群れのリーダーが鳴き声で指揮しているのか、連続して吐けないブレスを後方に離れたワイバーンが追い討ちを妨げるかのように放射し、エドの行く手を遮る。その隙に下がったワイバーンが後続と入れ替わり、防御力の高いアーヴィンの体勢を崩さんと急降下からの痛烈な鉤爪の殴打を繰り出す。


 ガチッ、と左右の戦護手を固めて翼竜特有の攻撃を受け流すアーヴィンだが、肝心の戦護手で視界を遮られれば次の攻撃に対応し切れない。その防御を掻い潜って真上から伸ばされた毒針がアーヴィンの頭を狙うが、


 「……させるかっ!!」


 エドが寸前で背後から剣を振り、毒針を弾き返す。


 「……やはり、あのリーダーを倒さんと群れの連携が崩せんか……」

 「どうしたら上空のワイバーンを……イワノフさんはどうなんだ!?」


 エドが振り向いて彼の方を見ると、イワノフは二頭のワイバーンを近付けさせないようモシン・ナガンを駆使し牽制し続けるが、流石に飛翔するワイバーンを地上から狙撃するのは至難の技である。


 「くっそ! ちょこまかと飛びやがって!!」


 モシン・ナガンの射程距離を把握したのか、ひらひらと左右に身を振りながら不規則に飛ぶワイバーンに手を焼き、普段より頭に血の昇ったイワノフは捉え切れない。残りの弾丸を心配せず撃ち続けられる事が逆に仇となり、上空の敵からこちらに意識を向ける余裕は無さそうである。


 そんな膠着状態で攻め手を欠く双方だったが、突如事態は急変する。一群から身を離して傍観していた群れのリーダーが不意に急降下し、ハンスの目の前に降り立ったのだ。


 猛烈な風圧でハンスの視界が遮られ、両手を上げながら砂埃から眼を守っていた彼が手を下げたその時。


 【 ……お前、明らかに人間ではないな? 】

 「……何……だと!?」


 まさか人の言葉を話す事は無いと思っていたワイバーンが、彼の頭に響くような重みの有る声で語り掛けてくる。その声はエレナの思考にも伝播し、その事実から彼女は一つの結論を見出だしたのだ。



 (……あのワイバーン、只の魔獣じゃない……もしかして、過去に誰かがテイムしていた【テイム・ビースト】かも……)



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