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【進め!異世界!!戦車人間(タンクマン)!!】~元ドイツ陸軍戦車兵の転生先はひよっ子ビーストテイマーの使役獣?~  作者: 稲村某(@inamurabow)
第三章・ハンスと仲間達

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⑤帰ってみればひと騒ぎ



 動く者の居なくなった石室で独り、ハンスが立っている。


 次の石室へと独走し、後続を待たずに闘った彼の傍らには肩まで届く柄の大金槌が、槌の部分を下にして置かれている。周りに(おびただ)しい数の矮小竜の死骸が転がる中で(うつむ)き、微動だにしない。まるで、誰かに見つけられるまで動きたくない、と言い張っているかの如く……。




 「……ハンスさん?」


 やがて、彼がやって来た側の通路からエレナが顔を覗かせると、中の様子を窺いながらハンスに向かって声を掛けた。すると、ハンスは突然動き出し、傍らに置かれていた大金槌を握ると一切の予備動作も無く疾駆し、エレナ目掛けて距離を詰めていく。


 一切の感情を顔に出さぬまま、ハンスは大金槌を振り上げてエレナに近付いて、その手に握り締めた凶器を今まさに振り下ろそうとした瞬間、


 「……もう、敵は居ませんよ?」


 自分に向かって大金槌を振り下ろそうとしていたハンスに向かって、エレナが言い聞かせると、彼女の頭の真上で大金槌がピタリと静止した。


 「……ほら、もう大丈夫! だから……それを降ろしましょう!」


 動きを止めたハンスにエレナが話し掛けると、(ようや)く全身から放たれていた濃密な殺気が消えると共に、大金槌がエレナを避けるように静かに動き、そっと床の上へと置かれた。


 「……じ、自分は一体……どうして……」

 「もう、敵は居ないですよ。だから、いっしょに帰りましょ?」


 我に返ったハンスが呆けたように呟くと、エレナは安心させるように彼の腕を手で掴み、そっと引っ張るとハンスは抵抗せず、そのまま石室から出て行った。





 「……もう、さっきのは見てて冷や冷やしたわ! エレナさんが、あのままガツーンッ!って叩かれちゃうかもと思ったらさぁ……」


 大人しくなり、手を引かれながら戻って来たハンスとエレナに向かって、通路の先から一部始終を見ていたキャロンが腰に手を当てながら捲し立てる。


 「そーよそーよ! 仲間内で同士討ちになったらどーするつもりだったの!? ねえ! 判ってるのハンスさん!!」


 チェモリも顔を真っ赤にしながら抗議すると、ハンスも流石に自らの非を認めたものの、


 「ああ、済まない……だが、途中から記憶が無くて、自分が何をしてたのか全く覚えてないんだ……」


 彼がそう打ち明けると、二人は顔を見合せながら黙ってしまう。しかし、そんな微妙な雰囲気もイワノフには全く関係無いようで、


 「おい! クラウツ!! てめぇ自分だけちゃっちゃか先に行くのはいーがよ! 終わったらキチンと、はい終わりましたって言うのが筋だろうが!!」


 と、まるで意に介さず大声で怒鳴り散らすと、ハンスの胸元に向かって握り締めた拳を打ち付けた。


 「……痛えっ!! くそ、バカ野郎……ちったぁ反省しやがれ!!」


 そう吐き捨てると彼から離れ、帽子を目深に被って黙り込んでしまった。




 結局、ハンス達は地下迷宮を大して進まないまま引き返す事になったのだが……



 「……おや? さっきから随分と賑やかだな……」


 他人事のように呟くハンスの視線の先には、例の白い小人のようなゴーレム達が荷車に取り付き、押し合いへし合いしながら矮小竜の死骸を運び出す姿があった。だが、彼らの熱心な仕事振りに目を向けている内に、誰もがその状況に小さな違和感を感じ始めていた。


 「いや、いやいやちょっと待って……さっきからあの子達、矮小竜ばかり何回も運んでるけれど……どうなってるの!?」


 キャロンの言葉の通り、結構なスピードで荷車は走り去っていくのだが、再び戻って来た彼等が荷車の上に載せようとしている物は、ハンスが倒した矮小竜である。そして、何度も自分達を追い越すその回数が多い事により、キャロン達はハンスが何を為したのかを把握し、


 「……こりゃ、たまげたな……ハンスさんよ、あんたどれだけやっつけたんだ?」


 呆れたようにアーヴィンが尋ねると、


 「いや、どれだけと聞かれても……居るだけだったんだけどなぁ」


 まるで他人事のようにハンスは答えた。




 元来た通路を戻り、迷宮の入り口へと辿り着いた一行を、迷宮警備担当の兵や魔物の亡骸を回収している処理員達が待ち構えていた。


 「おおっ! あんたらが矮小竜を狩り尽くして来たんだよな!?」

 「一体何をすりゃあ、これだけ倒せるんだい! しかも殆ど一撃じゃねぇか!!」


 広場の一角にうず高く積み上げられた矮小竜の死骸を指差しながら、兵達が興奮気味に叫ぶが、ハンス以外は複雑な表情で、曖昧に返事をするしかない。どうやってと聞かれても明確に答えられはしないのだ。


 しかし、そんな中でエドが突如、毅然とした面持ちで声を上げたのである。


 「……()()が討ち倒した魔物である事は確かだ! ゴーレム達が運び出した際に確認してある筈なのだから、異論はないだろう?」

 「あ、ああ……それはそうだが……」


 真っ白なゴーレム達は予め担当の討伐隊が決められていて、迷宮に足を踏み入れた者が倒した魔物を引き揚げる際、処理員達が立ち会って分別の指示を与えている。そうしてカウントされた死骸はタグを付けて回収され、処理を行われてオリハルコン等に精製されていく。


 その処理方法は秘中の秘とされてはいるが、討伐した者には然るべき報酬が与えられる。しかし、これだけの矮小竜が運ばれた事は過去に一度として無く、中には何らかの不正が行われたのではないか、と疑惑を持つ者も居るようである。


 だが、実際に討伐された魔物が存在するのは明白であり、ハンス達一行はたった半日で相当な額の稼ぎを得て、迷宮を後にした。





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