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【進め!異世界!!戦車人間(タンクマン)!!】~元ドイツ陸軍戦車兵の転生先はひよっ子ビーストテイマーの使役獣?~  作者: 稲村某(@inamurabow)
第三章・ハンスと仲間達

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①【人喰い】への挑戦



 「あっ、あの!! チェモリも悪気があってした訳じゃなくて……」

 「……いや、別に気にしていないさ」


 突然の事にキャロンがチェモリを庇うが、ハンスは言葉通りに意に介していない。ただ、何が有ったのか良く理解出来なかっただけである。チェモリの方はあれほど明るかった態度も消沈し、キャロンの身体を盾にして彼の視線を遮りながら、


 「にっ、二度と勝手に見たりしないから……だから……ううぅ……」


 と、今にも泣き出しそうである。


 「その……彼女は何か見たのかい?」

 「さあ、それは私には判らないんですが……こう見えてチェモリは【鑑定】も出来るんですけれど、その力でハンスさんの力の源を見ようとしたみたいで」


 キャロン曰く、少女の見た目とは裏腹に、チェモリの【鑑定】眼は確かなものらしく、対象が物でも人でも隠された付与能力を割り出せるらしい。


 「勿論、他人の考えとかが判る訳では無いので、そこは安心してください。でもチェモリ? ハンスさんの許可を得てから行わないと……」

 「判ってるよ! ……でも、凄く怖かった……」


 まるで姉妹のように教え諭すキャロンに、大人しく頷くチェモリ。ハンスはそんな二人の姿を眺めながら、しかし一体どんな存在が彼女をここまで怯えさせたのか、疑問に思う。自分も見覚えの有る何かが確かに自分の中に存在している、そう感じたが、記憶に残っていないのだ。


 「まあ、今は報告の方が先なんだ。取り敢えず牧場主に会うとしよう」


 一同が牧場の母屋に到着し、アーヴィンがそう促して先に中へと入っていく。遅れてハンスとキャロン達も続いて建物の中へと消えていった。





 一件、また一件と依頼を消化していったハンス達だが、その過程はともかく七人に対する評価は件数が増えるに従い、見るまに上がっていった。


 相手の数、戦力に関わらず圧倒的な打開力を発揮するハンス。そして小兵ながら的確に目標を射貫くイワノフ。そんな二人を仲間にしたキャロン達は、今までの扱いが嘘のように中央都市内で有名になり、いつしか【不敵の七人】と呼ばれるようになっていた。


 ただ、そうした変化にどうしても違和感を持つ者も居たのだ。その内の一人がエドである。


 彼は異才と言えるキャロンを守る為に戦ってきた。しかし、彼の能力は至って普通であり、突出した何かを持っている訳でもない。鬼人種(オーグ)のアーヴィンや狐人種(フォックス・ロッテ)のチェモリ達のような種族的優位性も無いエドは、知らぬ間に自分の内に葛藤を抱いていた。


 (……彼等にとって俺は足手まといになってないか……)


 誰にも告げられぬ思いが彼の足を鈍らせ、心を蝕んでいく。しかし、その迷いに答えを見つける間も無く、時間は過ぎていった。





 付与術士(エンチャンター)でもあるチェモリが、イワノフにくっつきながら魔導を行使する(くっついているのは特に意味は無い)。


 「あーっ! うざったいぃ!!」

 「またまたぁ!! すーぐ照れちゃうんだからぁ~♪」


 グイグイと身体を押し付けるチェモリを、イワノフは肘で押し退()けながら立ち膝の姿勢でライフルを構え、目標に照準を合わせる。何やかんや言いながらも、イワノフが引き金を引くタイミングでちょっかいを控えるチェモリだが、


 バンッ、と低くくぐもる発砲音と共に射出された銃弾が直進。そのまま大気を切り裂きながら到達した弾の先端が、着弾と同時に鋭く尖った弾頭がグリリと相手の皮膚を穿ちながら頭蓋骨を削った瞬間、


 ……ビュゴォッ!! という音と共に周囲の大気を一気に加熱させて高温化し、膨張した空気が爆発したように辺りに有る物全てを押し除ける。


 「ああぁっ!? お前、まーた変なモン弾にくっつけただろぉ!!」

 「ふっふぅ~ん♪ 【膨張】と【燃焼】をくっつけただけだもぉ~ん!」


 背丈の似通ったイワノフとチェモリだが、正確無比な彼の射撃技術と、チェモリの【付与術士(エンチャンター)】としての技能(スキル)が合わさった結果、針穴を穿つような精度で恐ろしい程の成果を生み出す。


 「イワノフくんの()()はねー、魔力が全く無いから変な歪みや偏りが出にくいんだもーん! だからチェモリのお気に入り~♪」

 「あー! 鬱陶しい!! 判ったからくっつくなぁ!!」



 そんなほのぼのする(?)組み合わせもあれば……




 最前線で燃え盛っていた炎が鎮まると時を同じくし、ボフッと大気を押し退ける威圧的な音を伴いながら、混乱を極める着弾地点に向かって二つの影が押し寄せる。


 「ぅおらあぁッ!!」


 短い雄叫びを集団に向けて放ちながらアーヴィンが飛び掛かる。その両手に嵌められた厳ついスパイク付きの護手(ガントレット)をぎりりと握り締めると、有らん限りの力を籠めて叩き付ける。


 人の指と同じ長さのスパイクを犠牲者目掛けて突き出し、頭蓋骨を容易く貫通させながら振り抜く。たったそれだけで相手の頭部は西瓜のように破裂し、脳漿と頭蓋をバラバラと四散させながら絶命させた。


 そのまま二撃目を振り降ろそうと構えたその時、彼の真横から大金槌を握ったハンスが矢のように飛び出すと、グルッと身体の正面を軸にしながら回転し、鎚先に遠心力を与えながら新たな犠牲者に叩き付ける。


 相手はそれなりの厚みの胸部鎧(ブレストプレート)を着ていたのだが、まるで柔らかく熟し切った果実のように易々と貫き、半身を大きく抉るように通り抜けていった。


 だが、どれ程の膂力(りょりょく)を備えていようと遠心力で回り切った大金槌を止めようもない。大きな隙が生じたその時、ハンスの胸元に鋭く突き出された片手剣の切っ先が到達したが、ガリッと耳障りな音を立てながら先端が欠け、逆に攻守が入れ替わった筈の相手に大きな隙が生じる。


 そこに割り込む形でアーヴィンが再び拳を振り下ろし、剣を振るった相手は真上から頭部を叩き潰され、首無し死体と化して崩れ落ちた。


 「ハーンスッ!! 前に出過ぎだぜ!!」

 「これは失礼……お手間を取らせましたね」


 アーヴィンが咎めると、ハンスは素直に詫びながら一歩退き、しかし再び前に出ると今度は大金槌をグルグルと振り回しながらゆっくりと前に出て、相手に避ける間を与えぬ速さで回転しながら次々と叩き始める。


 「……うげぇ、見てるこっちが目が回るぜ……」


 アーヴィンが呆れながら眺める内に、辺りに居た敵はほぼ壊滅していた。




 「……久し振りに足を踏み入れてはみたけれど、こう戦い通しだと、気がおかしくなりそうだわ……」


 エレナと共に後方に待機していたキャロンはそう言うと、自分達が通過してきた迷宮の端々に、点々と残る掃討した魔物の死骸をちらりと見てから、呆れたように呟いた。



 中央都市の真ん中に口を開いた【人喰い(マンイーター)】と呼ばれる迷宮。そこには多くの魔物達がひしめき合い、不用意に足を踏み入れた者を喰い殺す為にそう渾名されていた。


 この迷宮に巣食う魔物から精製される希少な金属、【オリハルコン】を得る為に訪れる者が後を絶たないのだが……七人はまだ本格的な攻略を目論んで挑んだ訳ではなかった。

 

 


 

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