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【進め!異世界!!戦車人間(タンクマン)!!】~元ドイツ陸軍戦車兵の転生先はひよっ子ビーストテイマーの使役獣?~  作者: 稲村某(@inamurabow)
第二章・イワノフ

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⑯キャロンの才能



 七人が揃った会食の際、隣合ったキャロンに自らの職種を教えられたエレナは、我知らぬ内に呟いていた。


 「……【精霊魔導士】ですか、確かに珍しいけれど……」


 キャロンからそう告げられたエレナは、彼女の技能職が【精霊魔導士】と知っても驚きはしなかった。エレナのように地方出身の者にとっては、習得に必要なのが素質と共に、学術体系に等しい魔導の理論を理解しなければならない通常の魔導士に比べれば、術士の素質そのものに多くを依存する精霊魔導士の方が、良く遭遇するのである。逆に多人数が出入りし自然と接する機会が乏しくなる中央都市のような場所では、その比率が極端に入れ替わって精霊魔導士に出会う事は稀であった。


 「そうね、魔導士の方が賢そうだし、精霊魔導士なんて辺鄙(へんぴ)な田舎の魔導士替わり、ってものだし……ね?」

 「い、いえ!! 決してそんな訳じゃないですよ!?」

 「判ってるわよ、そんなのは……でも、私のは一味違うのよね……」


 聞けばキャロンの家柄は、古くから精霊魔導士の素質を強く受け継ぐ家系らしく、彼女の母親や姉も呼吸するように自然と身に備わっていたと言う。しかし、キャロンの素質はその中でもずば抜けて秀でていた。生まれた直後からその素質は発揮され、歩けもしない赤ん坊の彼女が誤って風呂水に落ちた時など、水に沈む筈の身体を水と風の精霊達が受け止め、気付いた親族が駆け付けた時には水面に浮かんだエレナが、キャッキャと笑いながら宙に舞う小さな精霊達を手で掴もうとしていたそうだ。




 巨大蜂の巣を指差したキャロンの傍らに、人の背丈程も有る大きなトカゲの姿の火の精霊【サラマンダー】が現出し、クパッと口を開いて高温の炎を吐き出す。


 放たれた炎は巣の周りを飛び交っていた巨大蜂をも巻き込み、一瞬で立ち枯れた巨木を巣ごと燃え上がらせた。


 「おーっ!! すげぇ……まるで火炎放射器みてぇだなぁ」


 自分の出る幕は無しと気楽に見物していたイワノフが、メラメラと燃え盛る巨木を眺めながらライフルを担ぎ直したその時、巣の中から一際大きい蜂が炎を突き破って飛び出した。


 ブウウゥ……ンッ、と耳障りな音と共に激しく羽ばたき全身から火の粉を振り払いつつ、その蜂は無機質で感情の現れない複眼を一同に向けながら滞空し、クルリと背を向けたかと思うと素早く高度を上げて飛び去っていった。


 「あれは女王蜂ですね……ま、これで人里の近くに巣を作らなくなれば一安心なのかもしれませんが……」


 エレナが森目掛けて飛び去る蜂を見送りながら、隣のハンスに向かって語り掛ける。


 「そうだね。それじゃ討伐依頼は完了って事で報告しに行こうか」


 ハンスは彼女に応じながら、先に見える牧場の建物で待っているであろう依頼主に説明する為、先頭に立って歩き始める。


 「……それにしても、ハンスさんって一体何者なんですか? あれだけの巨大蜂が群がっても悲鳴一つ上げないなんて……」


 キャロンがエレナの隣に並びながら、彼に聞こえないように小声で呟く。相手になっていた巨大蜂は素早い動きと獰猛な性格、そして鋭い顎と毒針を持った危険な魔物にも関わらず、全く動じず薙ぎ払って屠ってしまったのだから、当然だろう。


 「うーん、何者と言われたら……見たままのハンスさんとしか言い様が無いんですが」


 エレナは返答に困りながら、そう釈明する。彼女もハンスとはそれなりの関係性を有してはいるが、だからと言って全てを把握している訳ではない。


 「ふーん、見たままねー。でもさー、それを言ったらイワノフちゃんと変わらないんじゃなーい?」


 歩きながらチェモリはそう言うと、自分からやや離れて歩くイワノフへと視線を向けてから、にへらぁと笑う。その視線に気付いたイワノフはプイとそっぽを向き、知らん振りを決め込んだ。


 顔を合わせてから何かにつけてはイワノフを追い回すチェモリに、当初は抵抗していたイワノフだが、遂に堪忍袋の緒が切れた彼は「こうなったらどっちが上か判らせてやる!」と大人げない闘志を秘めつつ、チェモリに対して()()を挑んだらしい。らしい、と言うのもその結果を二人は誰にも打ち明けなかったからだが、どうやらチェモリの圧勝で幕切れになったようだ。


 「じゃーさ、ちょっと見てみよーか?」

 「こらっ、チェモリ! そうやって覗き見するのは良くないわよ?」

 「……覗き見、ですか……?」


 チェモリは何か閃いたらしく、そう言うと頭の上に耳をぴょこんと突き出し、更にふわりと広がったスカートの下からフサフサした尻尾を現しつつ、


 「そー、ちょっと覗き見するだけ! ちょっとだけだからいいでしょー?」


 そう言ってハンスの前に回り込むと、小さな掌で彼の手を掴み、下から瞳を覗き込む。


 ハンスは身の危険を感じなかったので、そのままの姿勢で立ち止まり、チェモリの瞳を見返す。その金色で縁取られた琥珀色の瞳が妖しく光ったかと思うと、意識を集中した彼女はハンスの何かを探るように幾度か瞬きをしたのだが、


 「……ち、ちょっと何これ? ハンスさん……魔導の紐で雁字搦(がんじがら)め……いや、違う…… 出てこれないように封印されてるの!?」


 目を開けたまま譫言(うわごと)のような事を口走りながら、掴んだハンスの手を握り締めて(もが)くように身体を揺らす。そして、遂に堪えきれなくなったチェモリが振り払うように彼の手を離した後、


 「し、信じられない!! ハンスさん、本当に人間なの!? 中に……中に()()()()()隠れてるよ!?」


 早口でそう(まく)し立てると、彼の前から走ってイワノフの後ろに回り込み、肩で息をしながら耳を倒して怯えたように震え始めたのだ。


 「あん、二つだって? 片方は……何だっけ、テツのトラとか言う奴だよなぁ? ……なら、もう片方って……おいクラウツ、何の事なんだ!?」


 背中で縮こまるチェモリの慌て様に、イワノフは疑問を抱きつつハンスに尋ねる。しかし、ハンスの方はそれどころではなかった。


 《 不正なアクセスを感知 》


 《 外部通信 拒絶状態維持 》

 《 意識隔離中 》

 《 ハンス元伍長 一時凍結中 》

 《 システムエラー 継続中 》


 《 内部情報 一時保存開始 》


 (……何だ、これは……眼が見えなくなったのに、字が見えるなんて有り得んぞ?)


 ハンスは暗くなった視野の右上面に表示された蛍光色の文字に、気色の悪さを感じていた。但し、それが何の意味を成しているのかは全く判っていない。


 そして、チェモリが口走った【鋼の虎】以外の()()()()()が、無意識下からゆっくりと顔を覗かせると、ハンスを認識して満足したのか、再び身を無意識下に沈めていく。


 だが、ハンスは消え行く相手の名前を聞いた気がしたのだが、視界が元に戻ると同時に記憶の奥底へと消えていった。




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